宮城谷昌光のレビュー一覧
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東三河に蟠踞する菅沼一族の支流でありながら、徳川家康に忠誠を尽くした結果2万石ながら徳川幕府の譜代大名となり、日光東照宮の二十八神将にまで列せられた菅沼定盈。「新三河物語」で大久保家に光をあてた宮城谷昌光は、本書では定盈の祖父定則が松平清康の旗下に馳せ参じるところから物語を始める。
その初対面のシーンで、著者は定則に清康のことを「美しい人」と語らせる。徳川家康を語るにあたり、父広忠の不才覚や苦境から語り始める作品が多いが、広忠の父清康の偉業がなければ家康が三河の継承者の候補になることもなかっただろう。天下を獲る者は徳量を備えていなければならない、とは長く古代中国史を語ってきた宮城谷のテーゼで -
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古本で購入。
後に春秋五覇のひとり、晋の文公となる重耳に陪臣として仕えた介推。
山霊より授けられた棒術をもって、暗殺者の魔手から重耳を陰ながら守護する。
長年の流浪の末に晋の君主となった重耳は名君となるものの、たちまち欲望の論理の世界に巻き込まれてしまう。
失望した介推は我が身をもって重耳を諌めるべく、山へと隠遁する。
介推の功績を知った重耳は必死に呼び戻すが、介推が山から下りることはなかった―
後世その清廉と忠節が慕われ、神となった介推を主人公とした小説が本書。宮城谷作品は本人の心延えを映してか、非常に爽やかな印象を与える。この『介子推』もまたそうだが、もしかしたら群を抜くかもしれない。 -
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第5巻では三国志前半のクライマックス、華北の覇者を決めた官渡の戦が描かれる。曹操は袁紹を破り、漢の皇帝をも掌中に治め、天下の第一人者に躍り出る。
殷の紂王は徳を失い、新たに徳を備えた王者が求められた、と孟子は易姓革命を定義した。司馬遷は更に一歩進めて、秦王朝の失徳は当然として、戦に長けた項羽よりも人を惹き付ける魅力のある劉邦の方が王者に相応しいとした。陳寿もその構図を継承していて、名門のアドバンテージを抱えながら人を活かしきれない袁紹と、酷薄だが有能の士を登用しリーダーシップを発揮する曹操を、鮮やかに対比させている。
曹操はかつて中原と呼ばれた地域を制覇し、次は南方、劉表の荊州へ目を向ける -
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曹操はついに一国を得る。兗(えん)州といえば、今の河北省と河南省の間くらいか。
正史は王朝の交替を語るにあたり、前王朝の非を説き、乱れを説き、民心の離反を説いて政権交代を正当化しようとする。その司馬遷の構図を陳寿も宮城谷さんも継承していて、これまで宦官の専横、黄巾の乱、董卓の圧政と話を進めてきたのだが、三国志の場合ここからが若干ややこしくなる。それは、後に漢の丞相になった曹操も、皇帝の末裔であることを強く意識した劉備も、勤皇を掲げていたからだろう。一方で袁紹と袁術は次第に徳のなさや脇の甘さが明らかになっていく。つまり、興隆する後の三国分立の主役たちと、名門袁氏の失徳・凋落を対比している訳だ。 -
購入済み
中国の伝説は高尚な人な人が多い
なぁ、と感じます。
介子推は強くて高潔でまさに仙人みたいなひとでした。
その潔い生き方には心が洗われます。
でも、他の宮城谷作品にくらべると、
物語の流れで盛り上がりに対して、
介子推がどんどん盛り下がっていくので(笑)
爽快感が物足りないです。
勢いのある最後ではありませんが、
そこには、
欲にまみれた人間社会から、
少し遠ざかることができるような、
清涼感があります。
次は重耳が読みたくなりました。
実は先に重耳を読んだ方が面白いです。
介子推はスピンオフみたいな感じなので。
ぜひ、電子化をお願いします!!! -
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かれこれ10年ぶりくらいに読む歴史長編~。
氏の沢山の著作のなかで、どれから読むかとても迷いました。
楽毅といえば三国志の孔明のアイドルであったということしか知らなかったので
まずはこれから。
滅びゆく小国、中山国の宰相の嫡子であった楽毅の人生は
冒頭から不安に充ちていますが、まれにみる天分の才とひらかれた思考、
孟嘗君やさまざまの人物との出会いなどから翼を得て、気を穿いていく―
生き延びることすら難しいような戦国時代のなかでおのれの生きざまを貫いていく登場人物たちがすごく魅力的です。それも孟嘗君といい楽毅といい、信念は貫きながらも仕える国は変わったりしていくので柔剛を併せもち、亡国や愚王に