宮城谷昌光のレビュー一覧

  • 風は山河より(三)

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    桶狭間で横死した 今川義元。その印象がどうしても強いので、駿河の今川氏と言うと弱い大名、貴族趣味に溺れた守旧的な守護大名、というイメージがあるのかもしれない。

    しかし この時期の今川氏は違う。同盟の計略をもって北条氏を駿河から追い出し、東が安定したとみるや 西の三河ににすばやく楔を打つ。それは怪僧太田雪斎がいたからだと筆者は言う。尾張の織田信秀が戦国大名としてまだ自立していなかったこの当時、雪斎の頭の中には駿河から尾張まで東海四ヶ国と、更には京都に至る地図が描かれていたのだろう。

    一方で今川義元よりも京に近い織田信秀。守護代ですらないのに伊勢神宮の改築に金を出す彼の眼は、明らかに都を向いていた。伊勢から大和路か、美濃から近江路か、今日でいえば近鉄かJR東海道線かの選択はまだできていなかったかもしれないが、美濃に梟雄斉藤道三が現れなければ、織田家の天下統一の道はもっと早く開けていたかもしれない。

    しかし本書の本題は、その両雄に挟まれる三河松平家である。上洛の道を開こうとする今川家の前線基地になるか、同じく西進を目指す織田家に後方の安堵を提供するか、今日の眼で見れば、松平広忠は前者を選び家中を苦難に陥れ、子の代になって家康は信長と後者の道を選び、徳川家は東へと伸びていく。武将としての勇敢さを持ちながらも戦国大名としての戦略眼に欠けていた広忠ではあるが、大久保、本多、酒井といった後の老中首班クラスの先祖たちは支え続ける。それも三河の山河の所以である、と筆者は言うが、功成り名を遂げた子孫たちの脚色が入っているのではないか、と私は少し疑ってみたい。

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    2014年01月26日
  • 華栄の丘

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    春秋時代の宋の名宰相・華元の生涯。

    淡々と描かれているが、どんどんストーリーに引き込まれていって面白い。
    歴史を知らなくても楽しめた。

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    2014年01月25日
  • 三国志 第三巻

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    正史ベースの「三国志」。
    だいたい劉備、もしくは曹操視点の黄巾の乱だが名将皇甫嵩が評価されていたのは稀有。

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    2014年01月02日
  • 草原の風(下)

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    光武帝・劉秀のお話。

    あまり知らない年代ながら、新聞連載中に読んでおもしろかったので文庫になってから購入。
    予想通りおもしろかったので一気に3巻読めた。
    最後の方は駆け足で終わってしまった感があって、もう1冊分くらいあっても良かったかなーと思う。

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    2013年12月07日
  • 三国志 第四巻

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    派手な演出はないが、歴史に埋もれた脇役の立ち居振る舞いが丹念に書き込まれている。随所で三国志の再発見をさせてもらった。淡々と歴史を綴っているだけなのにこれが実に面白い。「曹操の心には真心がある。それがなければ人を打てぬ。」人好きの曹操のエピソードがふんだんに盛り込まれている。「刎頸の交わりでも終わる時がくる。曹操は重耳と陳余の顛末を知っている。怨みを誚めるのであれば己の徳の薄さであろう。」幾多の蹉跌を飽経しながらも着実にそれを乗り越え、自らの糧としていく姿に限りない憧憬をおぼえる。人として目指すべきは曹操。改めてそんなことを思い知らされる。

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    2013年11月30日
  • 風は山河より(二)

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    尾張は利の国、三河は情の国と筆者は言う。三河松平家の武士たちは屈強さを持っているが、松平広忠は織田信秀に勝てない。父清康の死から生じた情の縺れをほどけないまま、西三河の地は信秀に蹂躙されていく。
    家康の父広忠はそういう情けない存在で、その情けなさと家康を対比させるのが従来の歴史家だったが、宮城谷はそれは山河の所以だと言う。物語はまだ、家康が産まれたところ。そんな情けない広忠にも忠臣達がいて、彼らあってこそ松平家は次へ続いていく。織田と今川に挟まれて苦悶する三河をどう描くか、引き続き楽しみ。

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    2013年11月24日
  • 風は山河より(一)

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    東三河に蟠踞する菅沼一族の支流でありながら、徳川家康に忠誠を尽くした結果2万石ながら徳川幕府の譜代大名となり、日光東照宮の二十八神将にまで列せられた菅沼定盈。「新三河物語」で大久保家に光をあてた宮城谷昌光は、本書では定盈の祖父定則が松平清康の旗下に馳せ参じるところから物語を始める。

    その初対面のシーンで、著者は定則に清康のことを「美しい人」と語らせる。徳川家康を語るにあたり、父広忠の不才覚や苦境から語り始める作品が多いが、広忠の父清康の偉業がなければ家康が三河の継承者の候補になることもなかっただろう。天下を獲る者は徳量を備えていなければならない、とは長く古代中国史を語ってきた宮城谷のテーゼであるが、本書ではその徳の大きさを旗下に参じた三河衆の在り様から描く。半世紀超に渡る壮大な物語の始まりである。

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    2013年11月10日
  • 晏子(三)

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    意外にも、ほとんど崔杼の視点で話が進む。
    そうして読んでいくうちに、妙に崔杼に肩入れしている自分がいた。
    ただただ崔杼の計略の成功を祈るばかり。

    しかし、宮城谷作品において陰謀の黒幕が終わりを全うした例がないような…

    これは急ぎ四巻を買わねばなるまい…

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    2013年09月29日
  • 春秋の名君

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    2013年09月 01/47
    宮城谷氏のエッセイ。前半の名君振り返りページを読むと、またそれぞれの名君の物語が読みたくなります。後半は氏と本の付き合いや生活が垣間見えます。ステキだなぁ。

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    2013年09月17日
  • 楚漢名臣列伝

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    宮城谷さんの楚漢軍記物は「長城のかげ」「香乱記」、以来ではないでしょうか。
    今回は10人の名臣が出てきます。

    楚漢戦争が8年という短さのせいか、どのエピソードも同じ時間・場面が語られて、読み進めると少し飽きるときもありますが、どの話も面白かったです。
    特に簫何の劉邦に対する見方は斬新でした。
    三国志も良いですが、楚漢ものも面白いです。

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    2013年09月15日
  • 介子推

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    古本で購入。

    後に春秋五覇のひとり、晋の文公となる重耳に陪臣として仕えた介推。
    山霊より授けられた棒術をもって、暗殺者の魔手から重耳を陰ながら守護する。
    長年の流浪の末に晋の君主となった重耳は名君となるものの、たちまち欲望の論理の世界に巻き込まれてしまう。
    失望した介推は我が身をもって重耳を諌めるべく、山へと隠遁する。
    介推の功績を知った重耳は必死に呼び戻すが、介推が山から下りることはなかった―

    後世その清廉と忠節が慕われ、神となった介推を主人公とした小説が本書。宮城谷作品は本人の心延えを映してか、非常に爽やかな印象を与える。この『介子推』もまたそうだが、もしかしたら群を抜くかもしれない。
    と言うより、潔癖すぎる。

    清廉にして潔白な人物の魅力というのは確かにあるが、介推の潔癖は少し理解を超えたところにある。
    晋の支配機構に忠実な殺人機械として介推と死闘を繰り広げた、閹楚という宦官がいる。閹楚は常に重耳の命を狙いつづけたが、重耳が公として「晋の支配機構の頂点」に立つや態度を一変、彼を守護すべく立ち回る。そして重耳はその閹楚を信任する。
    介推はこうした歪んだ君臣関係に苦悩しついに出奔するが、選択肢はそれだけだったのだろうか。
    棒を捨てて山へ隠れることで、君主の内に潜む「悪虎」を本当に滅ぼせたのか。

    俗人の僕にはわからない、介推の純粋な人物像が眩しすぎて目を向けていられないというのが正直な感想。多少歪んでいたり汚れていたりする方が、人間的な魅力があるんじゃないかな。

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    2013年08月31日
  • 介子推

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    とにかく面白かった!!
    分量といい、映像化してもイイんじゃないかってぐらい面白かった!!!
    棒術の達人って設定をもっと活かして、
    活劇要素がもうほんの少しだけ欲しかったかも…。

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    2013年08月14日
  • 重耳(中)

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    2013年08月 02/42
    重耳の祖父である称から、父である詭諸(きしょ)の時代に移り、波乱じみて来ました。登場人物それぞれの思いがからみ合って実におもしろい。

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    2013年08月12日
  • 重耳(上)

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    2013年08月 01/41
    春秋ブームに乗って家の在庫から読み始めました。続けて読んでるので少しずつ位置関係があたまに入ってきます。
    中盤辺りの翼に攻めこむあたりから勢いがついてきておもしろい。

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    2013年08月12日
  • 子産(下)

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    2013年07月 06/40
    「礼」をもった政治を行った春秋時代の鄭の宰相「子産」のお話。「湖底の城」を読んでいたら、もう少しあのあたりの時代が読みたくなってそのままの流れで読みました。家の本棚にまだ残っているので、しばらくは春秋戦国時代を攻めようと思います。

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    2013年07月30日
  • 呉越春秋 湖底の城 一

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    2013年07月 02/36
    春秋戦国時代の楚の「伍子胥」の話。まだ呉に移る前ですが、それまでのくだりで一冊の物語に十分になりそうです。先はまだ長そうですが、実に楽しみ。

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    2013年07月30日
  • 三国志 第五巻

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    第5巻では三国志前半のクライマックス、華北の覇者を決めた官渡の戦が描かれる。曹操は袁紹を破り、漢の皇帝をも掌中に治め、天下の第一人者に躍り出る。

    殷の紂王は徳を失い、新たに徳を備えた王者が求められた、と孟子は易姓革命を定義した。司馬遷は更に一歩進めて、秦王朝の失徳は当然として、戦に長けた項羽よりも人を惹き付ける魅力のある劉邦の方が王者に相応しいとした。陳寿もその構図を継承していて、名門のアドバンテージを抱えながら人を活かしきれない袁紹と、酷薄だが有能の士を登用しリーダーシップを発揮する曹操を、鮮やかに対比させている。

    曹操はかつて中原と呼ばれた地域を制覇し、次は南方、劉表の荊州へ目を向けるのだろう。三国志の面白いところはそこから話が単純には進まないところ。負け続けた劉備も次第に不思議な徳を放ち始め、関羽、張飛に加えて趙雲を得ながら南方へ向かう。真の天下人に相応しいのは誰か、陳寿の問いかけは続く。

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    2013年07月07日
  • 花の歳月

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    やっぱり宮城谷さんは、日本語がきれい。

    でも、もっと長い話が読みたかったなー
    自分の長編好きを再認識。

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    2013年06月30日
  • 太公望(上)

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    初めて読んだ宮城谷さんの作品。
    ストーリーに引き込まれるし、所々に出てくる人生訓が心に響きました。

    中・下とどのように続いていくのか楽しみ!

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    2013年06月27日
  • 三国志 第四巻

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    曹操はついに一国を得る。兗(えん)州といえば、今の河北省と河南省の間くらいか。

    正史は王朝の交替を語るにあたり、前王朝の非を説き、乱れを説き、民心の離反を説いて政権交代を正当化しようとする。その司馬遷の構図を陳寿も宮城谷さんも継承していて、これまで宦官の専横、黄巾の乱、董卓の圧政と話を進めてきたのだが、三国志の場合ここからが若干ややこしくなる。それは、後に漢の丞相になった曹操も、皇帝の末裔であることを強く意識した劉備も、勤皇を掲げていたからだろう。一方で袁紹と袁術は次第に徳のなさや脇の甘さが明らかになっていく。つまり、興隆する後の三国分立の主役たちと、名門袁氏の失徳・凋落を対比している訳だ。

    とまれ、兗(えん)州の反乱を鎮圧して地歩を固めた曹操も、何だかよくわからない度量の大きさで遂に徐州を得た劉備も、関東の主役の一人といえる存在になってきた。そして多くの近衛兵を失いながらも東を目指す献帝。正史三国志の立場で英雄たちの面白さを存分に語ってくれる宮城谷さんの時間に期待。

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    2013年05月26日