【感想・ネタバレ】草原の風(上)のレビュー

あらすじ

父の死により、叔父に引き取られ、使用人とともに田で働く劉秀。高祖・劉邦の子孫でありながら、鮮明な未来を描くことができぬ日々を過ごしていたが……。三国時代よりさかのぼること二百年。古代中国の精華・後漢王朝を打ち立てた光武帝・劉秀の若き日々を、中国歴史小説の巨匠が鮮やかに描きだす。

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全3巻を読み終えての感想は、竜頭蛇尾の物語だったな、と。新聞連載の作品にはあり得る事だが。そう言えば、著者の諸葛亮もこれに似ていたような。

蛇尾は言い過ぎとしても、この上巻の躍動感と比べると、物語が進むに連れて史料に制約され窮屈さに陥ってしまったと思う。

上巻は新王朝の打倒を目指し挙兵する迄を描く。読むのはここまでにして、続きは研究書を探してみてもいいかも…

喜久屋書店阿倍野店にて購入。

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2025年03月30日

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後漢の光武帝となった劉秀のお話。上巻では学生時代がメイン。宮城谷氏の本はかなり難関なものと平易なものがあり、「草原〜」は平易なほう。読みやすくていいなあ。劉姓の人物がいっぱい出てきますが、キャラがしっかり書き分けられているので読みやすい。

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2022年09月28日

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後漢の創始者、光武帝こと劉秀を描いた歴史小説。

劉秀は、不思議の人だ。
郷里ではひたすら農業に従事する(但し、めちゃくちゃ農業の才能があった)、大人しく真面目な青年であったと記録される。都に留学し、歴史書である「尚書」を修めはする。
それだけの来歴を見ると、この人物が、挙兵してから大きな苦境は一度きりで、あれよあれよと勢力を拡大し皇帝位に登り詰めたのは不思議の一言である。
特に解せないのが、尋常でない戦上手ぶりである。

その不思議の人、劉秀とはいったい何者か。これに真正面から著者が取り組んだ作品と言える。

作品で描かれる劉秀の一番の長所は、何と言っても人の心に通じていることであろうか。
劉秀は豪族でありながら、農業を通じて天地と人間(特に庶民)に親しみ、都に留学しては学問だけではなく、自ら商売を興してしっかり社会勉強もしてきた。
天性の寛容の精神の上に、歴史と実体験とに基づく人間の心性に対する理解が、彼の人間的魅力を形成したのか。彼の下には有能の士が集い、立場が際どい場面でも敵対する相手の心の隙に飛び込んで何となく許されちゃう。この非凡な人格が劉秀を皇帝位まで押し上げたさまが実にみずみずしく丁寧に描かれる。
その人格は権勢を得ても変わらず、実の兄を殺害した更始帝をも赦し、王朝を確立させた後、創業の功臣を誅殺しないで済むよう配慮した「まれにみる大徳の天子」と著者は総括する。
彼の人間味にすっかり魅せられ、苦労の末に洛陽に入城した後、妻の隠麗華と再会するシーンでは感動を禁じ得なかった。

しかし、彼の戦上手の解明には著者も手を焼いたようだ。
「文叔は、じつによく人を知っている・・・(中略)。文叔の戦略も、基本はそこにある。兵法書を何千巻も読んだところで、すこしも用兵は巧くならない。」(下巻158p)
と、彼が人の心に通じていることが戦略巧者であることに繋がっていると著者は描くものの、
銅馬との戦いにおいて糧道を断つべく敵軍の食糧徴発部隊をこまめに撃退するシーンでは
「劉秀はこまかな戦いも巧い。ふしぎな人である。」(下巻201p)
と著者自身も不思議に感じていることを隠さない。

あとがきに、「劉秀のように平凡さをみせていた者が、百万の敵兵にもたじろがず、寡兵をもって大軍を破ったばかりか、敵対した者たちをつぎつぎに宥して、王となり皇帝となったことに、おどろかぬ人はいなかったであろう・・・(中略)。私もそのことにおどろいたひとりであり、このおどろきを小説に書いたにすぎない・・・」と書く。
これだけ古代中国の偉人を描いてきた宮城谷氏にとってすら驚異の人物であった劉秀。超人ぽくない超人。

今までの宮城谷作品とはちょっと違った読後感が得られる、存在感のある作品だった。

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2020年09月19日

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ネタバレ

上巻は劉秀の人柄を書こうとされてて面白かったが、中、下と進むにつれていつものように主人公が超人的に聖人君子にように描かれていてちょっとがっかりした。上巻が面白かっただけに残念。小説中の描写からも、劉秀は聖人君子ではなく他の天下人のように周りの意見をよく聴くことの出来る人だったのではないかと思う。小説中にも進言をいれる箇所が何箇所もあり、それが劉秀の美徳と思うのだが、そのすぐあとに進言をした臣下ではなく劉秀を褒める描写が多くあり違和感を感じた。ただ以前よりストーリーがテンポよくその点は良かった。

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2015年07月22日

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10年~50年頃の後漢時代の中国。三国志の約200年前。劉邦の子孫で劉秀という人物が、後漢王朝の光武帝となるまでを描いた作品。劉氏一族の一人とは言っても田舎出身の田畑を耕していた平凡な男であったが、叔父や親戚やまたその周りの人達から人格や秘められた偉才をかわれ、その期待を裏切らずに王朝を築いていく。仁徳、威徳は人を集め助けていくものなのだと納得させられる。従僕の伋が思い出を語る部分は涙必至。

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2014年06月09日

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後漢を開く、劉秀のお話。
今の所、宮沢賢治のような感じを受ける。
ここからどうなっていくのか楽しみ。

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2023年02月14日

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やはり宮城谷さんの本はおもしろい。

後漢王朝の祖・光武帝(劉秀)の物語。
困窮のため、子供の頃、一人だけ叔父の家に預けられたコンプレックスもありながら、土や光、天候に親しみ、農業の天才とまで言われて、清澄さを失わない劉秀はとても魅力的な主人公。
多くの人に愛され、のちには期待されるようになるけど、本人はそんな周りの評価に戸惑い、いろいろな人との出会いを自分の糧にしていくまでが、上巻。
次巻からはいよいよ現皇帝を倒す反乱を起こすが、なるべく劉秀はこのままで進んでほしい。
中下巻も楽しみ♪

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2017年12月01日

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後漢王朝の創始、光武帝・劉秀の生涯。
上巻は常安での留学などの若き日々の劉秀が描かれています。
慕われ尊敬される劉秀の器の大きさ、徳の深さに引き込まれました。
高祖・劉邦の末裔でありながら、田圃で汗する日々。現場主義という言葉は少ししっくりこないけれど、汗をかき、工夫を怠らず、和を尊ぶ姿勢を当たり前のように貫ける人柄が魅力です。
中下巻が楽しみ。

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2016年04月28日

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後漢の創始者である劉秀のお話。
宮城谷さんにしてはめずらしく、最初から本人が出てきます。
(大概、主人公の前世代が活躍して、歴史的背景を深く説明します。)
上巻は、世の中の乱れがすこしづつ進んでいるため、主人公の動きも地味であるため、

「こんな人が本当に皇帝になるのかな?」

と不安になりますが、小説自体は、面白くあっという間に読んだので続けて、中巻にも手をつけます。

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2014年03月02日

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「春風がやさしく草を撫でるように吹いている」
という書き出して始まる本巻は、悩める青年と言える劉文叔が故郷から帝都に出て、勉学に励む様子が主に描かれる。
さまざまな人との出逢いに彩られるその日々、読んでいて、まさに春風のように爽やかな印象を受けた。
宮城谷昌光らしい清廉な筆致である。
本作は文叔の時代からみた故事の引用が多く、それも楽しかった。

「人格は貌にあらわれる。とくに四十歳をすぎると、よけいなものが剥がれてゆき、その人の本性が貌に露呈してくる。それでも人は他人を見あやまる。見るという行為は、誤差を避けられない。が、目を閉じて聞くのはどうであろう。」『春風のゆくえ』より。
「━━人は何かを信じていなければ、生きてゆけない。」『常安留学』より。
「強靭な志は堅固な信念を産む。いや、信念が志を育てることもある。つまり志と信念は切っても切れない絡りをもって、人生の道を選択させる。その選択に迷いはないだろう。」『常安留学』より。
「知ることがむずかしいのではありません。実行することがむずかしいのです。」『雲の影』より。
「人は何かを失えば、何かを得られる。多くのものを両手でかかえて生まれ育った者は、それを落とさぬようにするだけで、あらたなものを得ることはできない。」『華彩の路』より。
「━━天災は人災の反映にすぎない。」『華彩の路』より。
「人が消えてゆくのは、さびしいものである。」『地の声』より。
「大きく得ようとするあまり、大きく失うのは、人も政府もおなじです」『予言』より。
「良いものさえ作れば、かならず売れる、というのは妄想にすぎません。作るより、売るほうがむずかしいといえる。作ったものを、広く遠くまで人々に知ってもらうには、そうとうな工夫が要ります。」『予言』より。
「政治にしろ、事業にしろ、ことばがすべてであるといってよい。善政とは、良いことばの政治である。企業においては、ことばを大切にする者が成功する。」『予言』より。
「……先駆者はかならず斃れます。一歩遅れて起つ者が、革命を完成させるのです。」『予言』より。

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2021年02月11日

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ネタバレ

2020.7 登場人物が多くてなかなかむつかしい。また都合がいい場面転換が多いので、読後感が今ひとつ。

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2020年07月22日

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赤い龍よ、いつまで草原で臥せているつもりか

龍は水を飲みに地上におりてくるときがある。龍に従って雲もおりてくるので、雨がふるといわれる。その龍が天に昇るためには、風が起ち、雲が動かなければならない。

風雲が、臥せている龍には、必要だ。

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2016年09月01日

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ネタバレ

後漢の初代皇帝 光武帝の話だ。劉秀あざなは文叔という。劉秀の頃、漢の帝室は退廃し、漢の皇帝の外戚の族から台頭した王莽の世であった。2百十余年つづいた漢王朝はこの男によって余命を絶たれた。新という王朝名は、王莽が新野に領地をもっているためにつけられた。略奪王朝である新王朝は紀元後九年に誕生したのだ。王莽の伯母が漢の元帝の皇后であり、その伯母は弟の子である王莽を信用して引き立てたという。王莽は、劉氏を危険な族とみなし、些細なことを理由に劉氏一族の覆滅を図っていった。劉秀もその一族の中のひとりであったが、嫡流にいたわけでなく、いわば住み込みの身のような者であり、幼い頃は、他の裕福な族に養子にやられていたぐらいだった。

劉秀が世間に知られるようになるのは、養子先の主である劉良が劉秀を見込んで、長安に留学に出したときからである。世に知られ、世を知ることで、劉秀は成長していく。劉秀はとりわけ勉強(中国では儒教だが)が出来たわけではく、長安での留学中に見込まれて官の道に推薦されたわけではないが、人を魅了するもって生まれた才により、名が知れることが一番の財産になった。

本書を読んでも、劉秀の智のきらめきが冴え渡るような箇所も無く、軍略の才が見えるような箇所もそんなにない。なぜ、劉秀のような人物が皇帝になれたのか、少し分かりにくい。結局、劉秀の取り巻きに優れた人物が多くいて、その人物を遣うことが非常に上手だった、そして、機を見ることに長けていた、といったことになるのではと推量する。

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2016年05月11日

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