あらすじ
父の死により、叔父に引き取られ、使用人とともに田で働く劉秀。高祖・劉邦の子孫でありながら、鮮明な未来を描くことができぬ日々を過ごしていたが……。三国時代よりさかのぼること二百年。古代中国の精華・後漢王朝を打ち立てた光武帝・劉秀の若き日々を、中国歴史小説の巨匠が鮮やかに描きだす。
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Posted by ブクログ
上巻は劉秀の人柄を書こうとされてて面白かったが、中、下と進むにつれていつものように主人公が超人的に聖人君子にように描かれていてちょっとがっかりした。上巻が面白かっただけに残念。小説中の描写からも、劉秀は聖人君子ではなく他の天下人のように周りの意見をよく聴くことの出来る人だったのではないかと思う。小説中にも進言をいれる箇所が何箇所もあり、それが劉秀の美徳と思うのだが、そのすぐあとに進言をした臣下ではなく劉秀を褒める描写が多くあり違和感を感じた。ただ以前よりストーリーがテンポよくその点は良かった。
Posted by ブクログ
後漢の初代皇帝 光武帝の話だ。劉秀あざなは文叔という。劉秀の頃、漢の帝室は退廃し、漢の皇帝の外戚の族から台頭した王莽の世であった。2百十余年つづいた漢王朝はこの男によって余命を絶たれた。新という王朝名は、王莽が新野に領地をもっているためにつけられた。略奪王朝である新王朝は紀元後九年に誕生したのだ。王莽の伯母が漢の元帝の皇后であり、その伯母は弟の子である王莽を信用して引き立てたという。王莽は、劉氏を危険な族とみなし、些細なことを理由に劉氏一族の覆滅を図っていった。劉秀もその一族の中のひとりであったが、嫡流にいたわけでなく、いわば住み込みの身のような者であり、幼い頃は、他の裕福な族に養子にやられていたぐらいだった。
劉秀が世間に知られるようになるのは、養子先の主である劉良が劉秀を見込んで、長安に留学に出したときからである。世に知られ、世を知ることで、劉秀は成長していく。劉秀はとりわけ勉強(中国では儒教だが)が出来たわけではく、長安での留学中に見込まれて官の道に推薦されたわけではないが、人を魅了するもって生まれた才により、名が知れることが一番の財産になった。
本書を読んでも、劉秀の智のきらめきが冴え渡るような箇所も無く、軍略の才が見えるような箇所もそんなにない。なぜ、劉秀のような人物が皇帝になれたのか、少し分かりにくい。結局、劉秀の取り巻きに優れた人物が多くいて、その人物を遣うことが非常に上手だった、そして、機を見ることに長けていた、といったことになるのではと推量する。