宮城谷昌光のレビュー一覧
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ネタバレ三国が並び立ってからまだたったの数十年しかたっていないのに、三国ともが国家として衰退してく。
建国の頃は忠臣、賢臣が次々と現れたはずなのに、今はどの国も人材不足であることは否めない。
蜀についてはもはやほとんど記載がないので、推して知るしかないけど、呉はひどい。
もともと人材不足の国であったけれど、孫権の父や兄の時代からの忠臣が孫権を支え、孫権もまた臣の言うことをよく聴く人であったはずなのに、年老いた孫権は聞きたいことしか聞かなくなってしまった。
共に呉を造った有能な部下が世を去り、それでもまだ何人か残っていた忠臣を、あろうことか孫権は次々と誅していく。
並び立った二人の跡継ぎをめぐり、国 -
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ネタバレ曹操の後を継いだ曹丕の出来が悪かったけれど、在位期間が短かったのが幸いして魏に大きなダメージは少なかった。
曹丕の後を継いだ曹叡は、軍事にも行政にも有能であり(というか、大局を見る目を持っているのだと思う)、諫言を聞き入れる素直さも持ち合わせていた。
ただ、巨大な建造物を作るのが好きって言うのが悪い癖というか、これだけは臣に諫められてもやめられなかった。
30代、人生はまだこれからだったのに。
後を継いだのは8歳の子ども。
曹操の血を引いた子どもは出来なかったので、出自不明の養子である。
いきなりその子どもが皇帝であると言われても、忠誠を誓うのはなかなか厳しい。
血統も実績もないのだから。
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ネタバレ一押しの曹操亡き後の三国志なんぞ…と思っていましたが、やっぱり面白い。楽しい。
圧倒的に非凡な人材というのはもうどこにもいないので、あっちもこっちもいろいろと停滞していますが、そこに人間が表れると言いましょうか、ドラマですなあ。
曹丕について思うところは次回に、と八巻の感想で書きましたが、特にこれといって功績も残さずさっくりと病死してしまいました。
大失態はしませんでしたが、全てにおいて能力不足を露呈した曹丕。
いや、能力が足りないだけならしょうがない。
でも、努力をしない。
しかも情に薄くて礼を失し、徳も持ち合わせていない。
諫言はことごとく退けるので、曹操が恃みにしていた重臣たちもあっ -
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ネタバレ遂に曹操が死んでしまったが、その前に関羽。
一枚岩かと思われた劉備と関羽と張飛だけれども、諸葛亮が加わることによって亀裂が生じた。
諸葛亮が加わる前は、「国のために正義を尽くすぞ!」という一念で繋がっていた三人。
その正義は必ずしも後漢王朝のための正義ではなく、自分たちにとって都合の良い正義だったとしても、本人たちの心はまっすぐであった。
けれども、今の国のかたちが正義ではないのなら、正義の国を創ろうじゃないか。
そのためには人材が必要だ。
と、諸葛亮を加えたことで、目的のために手段を問わないことも出て来た。
詭弁をもって謀るようになったのだ。
それが、関羽には耐えられなかった。
諸葛亮を -
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ネタバレ着々と領土を広げる劉備。
そして、周瑜亡きあとも安定した強さを見せる孫権。
60歳を迎える曹操には、やはり彼らが脅威だったのだとは思う。
でもどちらにも義はないと思うんだよなあ。
他人が納めていた土地を奪い取って、勝手に領主になっているだけなんだから。
特に劉備に関して言えば、反曹操勢力の強い徐州はともかく、自分が困っている時に助けてくれた人たちからかすめ取っているわけじゃん。
なんであんなに『三国志演義』で聖人扱いされているのかわからん。
”住所の定まらないことを『荘子』は、鶉居(じゅんきょ)といい、それが聖人のありかたであるというのであるが、ここまでの劉備がまさにそれであった。ただし聖 -
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ネタバレいよいよ赤壁の戦いです。
その前に、いよいよ劉備と諸葛亮が出会います。
しかし、諸葛亮は劉備がどのように生きてきたのかを知っています。
”妻子にも従者にも酷薄な人で、学問を嫌ったせいで浅学であり、知者や賢人を敬ったことがない。とりたててくれた公孫瓚をみかぎり、厚遇してくれた早々に後ろ足で砂をかけた。(中略)群雄のなかで劉備ほど無能な人はいなかったのに、豪傑が淘汰されてきた現在、何もしない劉備に輿望がある。”
しかし、情もないけど欲もない人なのです。
諸葛亮は劉備のもとに行き、劉備を盛り立て、劉備の欠点を隠しながら呉と交渉をするのです。
劉備が諸葛亮を信頼し、それにつれて人となりも多少変わ -
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ネタバレいよいよ曹操の時代となっていきますが、曹操が周囲を従えてぐいぐい前に出ていくわけではありません。
彼は実によく周囲の意見をよく聞くのです。
そして人を見る目があります。
敵の将を捕虜としても、有能な人材であれば官職を与えて仕事を任せます。
曹操の瑕疵は2つ。
出身が宦官の家であること。
当時の有力者の中で曹操を忌避する人の理由は、これが一番多いように思います。
そうそう自身は宦官ではありませんし、仮にそうだったとしても、曹操が私腹を肥やすことはないでしょう。
ただ、感覚的に宦官は嫌、と思われていたのです。
もう一つは、そうです、父の仇を討つために、徐州で大虐殺を行ってしまったこと。
庶民は -
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ネタバレ14ページ目で孫堅が死に、途中でちょっと劉備が出るものの、ほぼ曹操の巻。
と思ったら、次巻に向けての最後の一文『建安年間は、曹操の時代であると言ってよい。』ですって。
まだ序章だったか。
”曹操は不正を憎み、汚吏(おり)には厳罰を与えてきたが、民を苦しめる秕政(ひせい)をおこなったことはいちどもない。”
また、捕虜に取った黄巾軍に対しても、「生産をすることなく流れ者になって略奪を続けていても未来はない。自分の部下にならないか?」などと声をかけ、なってもならなくてもかまわないぞと釈放する。
そうやって少しずつ少しずつ味方を増やしていったのに。
三国志演義で曹操が悪役なのは、父の敵を取るため -
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ネタバレようやく、知っている三国志の時代に入ってきました。
皇帝を私物化した董卓はもちろん大悪党だと思いますが、董卓が出てくる以前から、皇帝も皇后も皇太子も権力争いのための旗印にすぎず、倫理観の欠如している人たちにとっては、国を動かしてうまい汁を吸うための人質にすぎなかったのが、霊帝の何代か前からの実態なのでした。
もう、霊帝の無能さと言ったら、朱理に「上に立つ者が無能なのは、それだけで罪だ!」と怒鳴って欲しいくらい。
*どっかのネットまんがで『BASARA』がミステリ・サスペンスに分類されていたけど、『ミステリと言う勿れ』に引っ張られた?
その割に『7SEEDS』は冒険ものでした。
曹操は、見る -
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ネタバレこの巻は延々と後漢王朝の腐敗が書かれています。
外戚が横暴をきわめたかと思えば、次は宦官です。
なぜ本来は何の権限も持たない宦官が、権力を持ち財産を増やしてゆくことができたのかと言うと、梁冀が、気に入らない皇帝を次々と亡き者にしていったから。
皇太后の兄であるのをいいことに、好き勝手に権力をもてあそび、人の命を奪ってきた梁冀から皇帝の命を守ったのが宦官たち。
桓帝・霊帝は宦官たちこそを信頼し、心ある臣下の言うことに耳を貸さない。
宦官も、最初は純粋に皇帝の命を守っていたのだろうけれど、大量の褒賞が彼らを狂わせたともいえる。
皇帝からしたら、ほんの感謝の気持なのだろうが、受け取った方は、「 -
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「言葉を形に表す」
現在、当たり前のように用いている「文字」はなぜ作られたのか……。
表題作の「沈黙の王」では、うまく言葉を発することができない商(殷)王武丁が「文字」を作るまでの物語を、主人公の生き方に光を当てて描く。
歴史小説家が研究者ではない訳は、「事実」や「考察」「推測」をもとに、さらに想像を飛ばし、作家の求める「真実」を「創造」していくことにある。
この作者は、まるでそこにいたかのように「言い切った」短い描写を丹念に積み重ねて、読者を物語の中へ引き込んでいく。
読者は読んでいるうちに「きっとこうだったかもしれない」とすら感じなくなる。
わたしは、歴史小説家が語ることを許される表