宮城谷昌光のレビュー一覧
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曹丕って在位期間七年だったんだ……
進軍が遅い、諫言を聞き入れないなど思いがけずパッとしないけど後継者選びを誤らないあたり。
父親の明朗さと比べてこう暗すぎないか。
諸葛亮に対して辛い。
馬謖を見誤る、馬謖を処断する決断が早すぎる、魏延、用兵が袁紹並み……
趙雲への情緒はなんだ。
曹叡の有能さ、諫言を聞き入れる器の広さ。
曹丕や孫権とは大違いだね!
曹操人材バンクの恩恵がまだまだある、賢臣の多さと有能な君主のタッグは強い。
と思いつつ悪癖が出てきたので喜べない。
魏延を冷遇する諸葛亮、張コウを疎んじる司馬懿、似た者同士じゃん。
赤壁での孫権の成功体験が根深い。
土盛り合戦は正直なにやっ -
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山霊がつかわした青年、長身清眉の介推は、棒術の名手となって人喰い虎を倒した。
やがて、晋の公子重耳に仕え、人知れず、恐るべき暗殺者から守り抜くが、重耳の覇業が完成したとき、忽然と姿を消した。名君の心の悪虎を倒すために・・・・・。
後に、中国全土の人々から敬愛され神となった介子推を描く、傑作長編
重耳の19年間にわたる放浪生活をともにした人物です。
「重耳」を読んでからこちらを読むのがお勧めです。これは俄然、2作セットですね。
故郷の緜上から、重耳に仕えるために狐氏の邑を訪れた介子推。
重耳の長い放浪生活を裏から支え続け、重耳が晴れて晋の君主となった後に、自分の思いとは違うものがそこにあると -
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<上下巻を通してのレビュー>
中原の小国鄭は、超大国晋と楚との間で、絶えず翻弄されていた。
鄭宮室の絶世の美少女夏姫は、兄の妖艶な恋人であったが、孤立を恐れた鄭公によって、陳の公族に嫁がされた。
「力」が全てを制した争乱の世、妖しい美女夏姫を渇望した男たちは次々と・・・・・
夏姫という春秋時代を通じて西施と並び称される美女を通して、その時代の様々な国の様子や君臣のあり方などが描かれています。夏姫には嫌いを通り越して怒りの感情さえ抱いてしまう・・・・・子の子南は辛かったでしょうね。それ以上に夏姫も過酷な運命に翻弄されて辛かったのでしょうが、どこをどう探っても好きになれる要素がないのです。( -
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争いを好まず、あえて負けを選ぶことで真の勝ちを得る――。
乱世にあって自らの信念を曲げることなく、詐術とは無縁のままに生き抜いた小国・宋の名宰相・華元。名君・文公を助け、ついには大国晋と楚の和睦を実現させた男の奇跡の生涯を、さわやかに描く中国古代王朝譚。
名君だけがいても、そばで支える人が優れていなければ国はうまく運営できないし、優れた臣下がいて名君がいなくては国は成り立たないものです。
分かりきったことですが、宋の文公と華元との関係が理想的であり、どちらも驕ることがなかったから国の存亡の危機になっても滅びることはせず、人臣をうまくまとめあげられたのだと思います。
大棘の戦いで華元が鄭の捕 -
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<上下巻を通してのレビュー>
信義なき世をいかに生きるか――春秋時代、小国鄭は晋と楚の二大国間で向背をくりかえし、民は疲弊し国は誇りを失いつつあった。戦乱の鄭であざやかな武徳をしめす名将子国と、その嫡子で孔子に敬仰された最高の知識人子産。
二代にわたる勇気と徳の生涯を謳いあげる歴史叙事詩。
読んでいるうちに、子産の考えや行動がじんわりと心に浸みてくる一冊です。
当時最高の知識人であった子産は、礼を重んじ不毛な権力争いには加わらず、一歩ひくことで最善の結果を出したような人物に思えます。
子産を信頼し続けた鄭の簡公や、子産を宰相に推薦して信じ続けた子皮などの様々な人々の援護や理解があってこそ -
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ネタバレいよいよ下巻の戦いは、項羽軍と劉邦軍の戦いに集約されてくる。
中巻で、章邯の圧倒的な大軍に少数で挑んだ項羽の、まさかの勝利が電撃的に伝えられる。奇跡的と思える勝利だが、項羽自身はこの勝利に自信があったのだろう。
項羽軍の印象は、彼自身もその武将達も一騎当千の強者ぞろいという感じだ。相手が大軍であろうと、必ず一点を突き崩して、全体を壊滅に持ち込むというそういう印象だ。
彼の軍の機動力は、常に「勝つか負けるか、生きるか死ぬか」の精神に裏付けられている。負けることへの恐怖心が、闘争心を掻き立てているかのようだ。そしてまた彼らの勝利は、敗者の惨殺を意味する。まさに戦闘マシーンと化している。
一 -
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長い、長い旅を終えた気分だ。太公望は、周の軍師としてつにに商に挑む。牧野の戦いと呼ばれる天下分け目の大合戦だ。商の受王(紂王)は重要な人物でありながら、この物語の中ではほとんど顔を見せない。
才能に恵まれ、果断な行動力もあった受王ではあるが、「受王は~~であった」「受王が~~した」といった伝聞の形でしか姿を見せない。
稀代の悪王という説もあるが、ここでは残虐な面はあるにせよ悪王とは言えないし、愚昧では決してないという評価か。また、妲己についても悪女としては描かれていない。どちらかといえば、英邁な女性といった感じか。やや世間知らずな一面はあるにせよ。
周の文王、武王、周公但といった有名な人物も登 -
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ネタバレ劉邦を読んでいる。癖で、初めての作家がいったいどんな人なのかにも興味が強いため、手に取った。読後に、存外に最近の本である事を知り、内容が今という時間軸に近いことを喜べたのはボーナス。
劉邦には、内容に圧倒され続けている。古代。しかも、他国(隣国とはいえ)。広大過ぎる舞台、覚え切れるはずもないほど登場する人物群。極めて少ないはずの情報から、水が滴るように瑞々しく、リアル感のある物語を巧みに描き出してくれる宮城谷氏。読者としてはありがたくて仕方ない。
子供の頃から、どういうふうに生きてきたか、大学生時代のお話も多いが、いかに小説家を目指すようになったのか。そして奥様との出会いから現在の夫婦関係 -
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ネタバレ中巻に入り、秦軍との初陣を勝利で飾った劉邦の軍は、着実に大きくなっていく。大きくなっていくとは、その陣容を確実に充実させていくということと、経験を力にしていくというようなことだ。
出会いを大事にし、昨日の敵を味方とし、たとえ敵将であろうと敬うべきは敬う。劉邦の周りに人物が集まり、集まる人物はみなその才能を発揮する。そうして確実に劉邦軍の陣容は強さを増していく。
親友と信じた旧友の裏切りを経験する。信じていたが故の怒りの心はすさまじい。その怒りを力に変えていく。また、負け戦も経験するが、大敗という経験が次のリベンジへの糧となる。
何といっても中巻では、幾つかの出会いに強烈なインパクトがある