宮城谷昌光のレビュー一覧
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歴史小説家である著者が、夫妻で旅館・ホテルについて語った一冊である。四章までに八軒の旅館・ホテルを語り、五章では京都を、六章では焼き物を巡る旅を語り、七章では旅館への提言をし、八章と九章では夫人による時刻表を使っての旅館判別法を紹介している。
インタビュー形式で、ややまとまりにかけた内容とはなっているが、方々を旅したお二方の経験を読むことができる面白い本であった。そうした意味で言えば、エッセイと見た方がいい。
あくまで個人的見解による旅の楽しみ方なので、恣意的である点については念頭に置くべきである。ガイドブックではない。だが、だからこそ、容赦のない評定が見られるということもあるだろう。
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ようやく読み終わりました。
第5巻の最後も最後にしっとりとした感動があって、読後感がとても心地よかったです。
さて本作は全5巻の大作歴史小説ですが、文章は平易で、その時代の情勢なども作中で解説されるというスタンスになっているため、とても読みやすいです。
ストーリーもドラマチックで面白い。
そしてこの作品でもっとも優れているのは、そんな魅力的なストーリーを彩る登場人物たちでしょうか。
歴史小説で登場人物にこれほど感情移入した作品はなかったですね。
出てくる人がかなり多いですが、それぞれに印象に残るほどの個性が与えられていて、愛着が湧いてしまいます。
読後感が心地よいと言いましたが、魅力的なキャ -
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ネタバレ漢の高祖の物語の中巻。
張良や項羽との出会いがあり、徐々に存在感が増していく劉邦が描かれています。
まだ章邯が倒されず、司馬さんの「項羽と劉邦」(上中下)の上巻の最後の方に当たるのですが、下巻は一気に漢設立まで行っちゃうんでしょうか。
司馬作品が群像劇なのに対して、本作はあくまで劉邦伝的に構成されているので、「項羽と劉邦」では魅力的だった登場人物たちが端折られる可能性大ですね。
ま、宮城谷さんの楚漢戦争時代の群像は「楚漢名臣列伝」や「長城のかげ」を読めということでしょうね。
ただ劉邦に関して言えば、劉邦の無頼時代から筆を起こしていただければ、もっと劉邦の成長が実感できたように思うだけに残念で -
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ネタバレこの度、宮城谷昌光の「孟嘗君」を読み始めました。
まだこの第1巻を終えたばかりですが、登場人物がそれぞれ個性的な感性を持っていて、面白いです。
またまた持病の睡眠不足が悪化しそうな本に出会ってしまったという思いです。
舞台は春秋戦国時代の末期、そのうちの前半あたりでしょうか。
史上初めて中国統一を成し遂げた秦の始皇帝が出てくる、その少し前の時代だと思います。
中国の各地にいろいろな国が乱立していて、歴史の教科書では何が何だかわからない時代のひとつですね。
物語の節々に、戦国時代の各国の情勢や現代人には馴染みのない言葉について解説がされています。
話の流れがぶった切られるわけで、嫌いな人は -
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ネタバレ中国漢の高祖の物語の上巻。
司馬遼太郎の名作「項羽と劉邦」のキャラが焼き付いているのと、著者の別作品での扱いが悪かったので、本作の劉邦ができすぎた人で驚きました。
確かに、主人公はいつも立派に描かれていたり、別作品で脇役になると悪い面をクローズアップされたりする多面性も著者の人物像の描き方ですね。
さらに、本作の呂夫人も賢く行動力のある人で、既成の人物像をいい意味で裏切ってくれています。
また、これまでの著者の作品と異なり、主人公の親や祖父や師匠のように導く人がいないというのも特徴です。
本巻では決起するところまでで、劉邦がだんだん大人物になっていく途上が描かれていました。
次巻以降で登場す -
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劉備とは何者か、第七巻ではその問いかけが重要な意味を持つ。華北にいた頃は呂布や曹操に勝てず、逃げ回ってばかりいた流浪の将にも、荊州では妙な後光が差し始める。赤壁において彼は呉の属将だったのか、それとも同盟者だったのか。この定義はその後の荊州南部と蜀の支配を正当化できるかどうかを判定する上で重要なポイントだが、宮城谷さんは正直に筆を進めていく。その行為は武力侵攻だったかもしれない。しかし、単に武力に勝っていたから地を得たのではない。3日で得られたはずの成都に300日を費やす。そういう姿に、いつの間にか大人の徳が漂っている。劉備の輝きが増す分、大人の態度に徹せない孫権は分が悪い。
南方の王者た -
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宮城谷版、吉川版、蒼天航路の3シリーズ併読の
「とことん三国志」、先行する宮城谷版の第2巻。
大帝国の長期政権はいかにして腐敗していくか。
マクロの視点では体制は「変わらないこと」で
自壊していくとなる。
ローマ帝国における共和制及び皇帝制の永き閉塞が
その象徴であろう。400年続いた漢帝国も同様だ。
宮城谷はそこにミクロな視点を持ち込む。
漢帝国の体制は内部は変わろうとして
何度も何度も「革命」をするのだ。
皇太后の外戚が暴政を行なえば、宦官が改革を断行する。
その宦官が虐政をすれば、外戚が誅殺を行なう。
すべては「大義」のための革命だ。
しかし、いつの世も、権力の魔力が大義を取り込