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Posted by ブクログ
春秋戦国以前の中国の話である。
太公望は実に有名だが、釣りの代表にもなるように、私の中ではすでに「おじいちゃんからスタート」していた。
しかし、当たり前のことだが、太公望にも若い頃があり、幼い頃があった。
その太公望の人生が小説として描かれている。
三国志はマニアなので、昔の中国地名は、よくわかる方だが、困ったことに地名が全く当時と異なっている。
日本で言うところの越後・越前・出雲など、廃藩置県以前の名前を覚えているのが 三国志時代だとすると、さらにその前の時代の呼び名が出てくる。
感覚的には日本の平安時代の頃に呼ばれている呼び名を思い出すような感じなのだろうか?とは想像している。
しかし、その難しい時代にもかかわらず、作者は、実に見事に文中に、その背景をまとめてくれている。
著者の腕が悪いと、単なる説明くさい「映画の中に突然CMが入るような感覚」に落とされるが、そのようなことは一切なかった。
国民的有名作家、司馬遼太郎氏には申し訳ないが、彼の作品は脇道が多すぎて、本編が分かりにくくなっている。 私のような単純思考の者には、あまり関係のない余談が多すぎるとよく分からなくなる。
ミニゲームに熱中するうちに、本編のゲームで何をやるかを忘れてしまう姿にも似ている。
しかし、そんな私であっても、違和感なく、飽きることもなく、読み進めることができる。
予備知識がない人でも十分に楽しめて、なおかつ、 詳しい人でも楽しめるという小説を書けるのは、ただの努力や才能では及ばない何かがあると思わせる。
※以下内容はややネタバレであるので、もし1ミリも知りたくないという人は、以下は読まないで、おいていただきたい。
ただ、個人的には、これを知ったとしても、本編を読む興味深さを損なうものではないと感じているので、書いておく。
この書を読むのにまず壁となるのが「地名」である
ある程度、現代に置き換えて説明しておく。
主人公「望」の目指す「孤竹(コチク)」とは天津アマグリや天津飯で有名な天津の辺りであり、北京の右下辺りである。
なので、今の感覚で言うと結構都会になってしまう。
商売の語源となった商(ショウ)の国は、 三国志時代で言うと中原の辺りであり、ギョウ、キョトの辺りではないかと推測される。三国志の曹操が治めていた超都会である。
つまり、主人公は、都会の中心から北の方の外れまで、逃れてきたことになる。
日本に置き換えると京都で暮らしていたが、戦で負けて蝦夷のあたりまで逃げよとお父ちゃんに言われたと考えられる。
そういう想像としては多分にできるのだが、実際に「どこからどこか?」と、気になる理系的私のようなタイプとしては、実際のどの辺りからどこまでというのが、まず壁になる。
できれば、最初の地図に『天平の甍』のように矢印で作者に書いておいて欲しかった。
『天平の甍』で作ってしまった トラウマについては、そちらに書いておいた。その破壊力は同じ読者として、注意しておくと良いかと思ったので、気になる方はそちらを読んでいただきたい。
さて、人物名に関しては「一文字」が多く、 名前だけでは、男か女か全くわからなくなることがあるので、先に名前は覚えておいた方が良い。
表紙のすぐ近くにある「人物紹介」では結構なネタバレが書かれている。「おいおい、そこまではちょっとバラさないでくれよ!」というのが一巻ですでに書かれてしまっている。
そこまでバラしてしまうのなら、むしろ主人公のたどった道を地図で記して欲しいものである。
そういったマイナス要素を 業務をいびる 姑のような感じであげつらったものの、小説としては完全に完成されている。
子供視点での危機回避。謎めいた女たちの存在。 仙人を思わせる老人からの剣術の指南。助けた子供の成長。幼いながらも見出された才能から成長していく姿。
やばすぎる!
この溢れる現代にも十分通用するストーリーの壮大さ!
「もしかしてこのまま漫画化したり、アニメ化すれば、ものすごい売れるんじゃない?」というぐらい、ファンタジーと時代背景と歴史的検証と全てがこもっている作品であった。
もしかすると、もう漫画はあるかもしれないが、調べていないので分からない。
死ぬまでに読んでおきたい一書であった。
Posted by ブクログ
三国志や春秋戦国時代をさらに遡り、時代は殷。暴君紂王が悪虐の限りを尽くし、天も人も新たな風を求めた世において、後世にも不滅の光芒をはなつ人物があらわれる。王朝の殺戮から逃れた羌族の少年、太公望がそのひとである。
中国史においては、三国時代や春秋戦国時代が有名で多くの書物やゲームでも題材にされているように思います。実際、私もこれらの時代はいろんな媒体を通じて楽しませてもらっているところですが、私にとってのはじめての中国史は藤崎竜氏の漫画「封神演技」でした。基本はバトルものですが、緻密な構成にギャグ要素もあり、週刊誌に掲載されていたこともあって、子供だった当時は毎週ワクワクしながら読んでいた覚えがあります。主人公の太公望は、策士として時には汚い手も使いますが、とても魅力たっぷり。私にとって太公望とは、この漫画のイメージが強くあるのですが、宮城谷昌光が描く太公望も、これまた素敵な人物。族長として、軍師として、様々な立場で人を導いていく太公望。彼が投げかける言葉はときに物語を飛び越えて、読者の心をうつことがあります。宮城谷昌光の特徴なのかもしれませんが、本書では太公望に限らず、多くの信念を持った人物が登場し、彼ら彼女らの言葉にとても心を揺さぶられました。信念を持って、苦難に立ち向かいながらも正しいことを行うことの大切さを勉強させられました。
個人的に感じている宮城谷昌光のもう一つの特徴は、終盤が尻窄み傾向にあること。本書でもその印象があり、それまでの盛り上げが素晴らしかっただけあり、牧野の戦いも含めた終盤は、もっと膨らませて欲しかったなぁというのが率直な思い。
とはいえ、非常に楽しめた全3巻。引き続き宮城谷昌光の中国史を読んでいこう。
Posted by ブクログ
たとえば、その頃の日本は縄文時代と呼ばれている。
邪馬台国の卑弥呼が魏志倭人伝に登場するのはそれから1000年以上後のことになる。
そういう時代である。主人公の望も、後世からは神話的性格が色濃くみえ、その人となりをつかむには、真っ暗闇の平原を手探りでさがしまわるような困難があったはずである。もともと歴史小説にはファンタジーを描くような側面があるが、この主題に取りくむことは、それこそ想像力に翼でもはやさなければやり遂げることはできなかったであろう。
そして、生身の望をぼくはみた。宮城谷昌光の暗闇の中を踏破する勇気によって生々しさが与えられた太公望であると、そうおもっている。
じつは、この作品はぼくがはじめて読んだ宮城谷作品であり、はじめて読んだ、「児童」という字のとれた本格的な小説であった。宮城谷作品のなかでも文体がすこしだけ高いところにあるような雰囲気もあるが、それでも「宮城谷でオススメある?」と訊かれたら、真っ先にすすめたいものはやはり『太公望』しかない。
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