宮城谷昌光のレビュー一覧
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中国春秋時代の晋の文公である重耳の物語。描写の濃やかさと人物の熱さで、宮城谷先生の歴史小説には毎回楽しませてもらっている上に、歴史の勉強にもなる。
上巻では、晋が周によって封じられてより、翼の本家と曲沃の分家の二つに分立し、重耳の祖父である称が粘り強く宮廷工作を進めて本家の翼城を落として統一すると共に、これに乗じて曲沃を取ろうとする虢の国との戦いまでを描いている。重耳は初陣を果たして、翼攻めで軍功を挙げた駆け出しの状況。
まだ先は分からないが、祖父ほどの器ではない詭諸の治世が暗雲のように漂い、いずれも大人物である異母兄の申生と同母弟の夷吾とのライバル関係も想起させるようなそれぞれの切磋琢磨 -
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文庫本全9巻まとめてのレビュー
春秋時代の中国南方(楚・呉・越)を舞台に展開された物語。
話の大きな軸は二人。
一人は伍子胥であり、もう一人は范蠡。
この時代のこの二人に主な焦点をあてた作品が今までなかったので、
読んでいてとても楽しい。
伍子胥についての大まかな知識は、海音寺潮五郎氏の「孫氏」で読んだことがあるが、
そこにはない伍子胥の生涯や魅力がこの本にある。
呉の公子光や孫武が、伍子胥にとっていかに大切な人であったか。
父親と兄の復讐をなすために、いかに多くの人々と巡り合い、力を貸してもらったか。
伍子胥に人としての魅力があったからこそ運命的な巡り合いがあるし、人として寛容であったから -
購入済み
安定の宮城谷ワールド
さすが安定の宮城谷さんの作品。紙の本でも持っているが、利便性を考え電子書籍を購入。孟しょう君は他の作品にも出てくるので好きなのだが、本作品では彼が活躍するまでの話が長い!そのため星4つの評価。その代わり養父の活躍をたっぷり楽しめる。これからも読み返していく良い作品であるのは間違いないでしょう。
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ネタバレ第九巻で顕著だった人物(国)へ対する好悪の激しい筆致には低劣さを覚え嫌気がさしていた。今巻もいつ“それ”が現れるかひやひやしながら読んでいたが、全編宮城谷昌光らしいおだやかな、あくまでも『正史』に沿った淡々とした描写で安心した。
ただ一言で感想を述べれば、面白かった!
私としては特に蜀滅亡の件での鄧艾、鍾会、姜維三者の生き様(思惑)が面白く、楽しささえも感じた。
「王朝にかぎらず組織を立て直す近道は、益をふやすよりも害をのぞくことである」『蛇足』より。
「最悪の事態とは、君主が選択をあやまることではなく、決定をためらいつづけることである」『劉禅』より。