宮城谷昌光のレビュー一覧
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ネタバレいよいよ呉漢が劉秀に仕えて活躍し出す下巻。
いきなり軍事の最高位である大司馬に抜擢されるところは驚きと共にワクワク感があった。
これからどんなすごい活躍をしていくのだろう?
そんな期待だ。
その期待はある程度満たされる。のだけど、期待したとおり、とは行かなかったかな。
作中でも呉漢自身が自分のことを語っているけれど彼は決して軍事的天才ではなかったのだろう。
この辺がいわゆる歴史的事実のままならなさでもあるのだけど、それだけに作者が彼を取り上げた面白さを感じる。
作中、呉漢とその師的立場にある祗登とのやり取りがいつも印象深くて清風が吹くような気持ちにさせられて、この長大な物語の確かな魅力の一つだと思う。
そしてこういう物語を読むと、その後の歴史も知りたくなるのが歴史物語を読む楽しさの一つだなあといつも感じる。
それにしても中国史は物語の宝庫だ^^ -
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ネタバレ後漢の光武帝の武将の一人、呉漢を主人公にした物語。
こう言う自分が全く知らない人の事績を巡る歴史物語は次にどうなるのだろう? と言う面白さがあって好きだな。
この巻では呉漢が平民から次第に県の役人などに出世し、ついに劉秀のちの洪武帝に仕えるところまでを描いているのだけど、劉秀に仕えたのは意外と遅かったのだなと言う印象だ。
膨大な登場人物が出てくるのだけど、それぞれの役どころが明確なので、あれ? この人、誰だっけと言うことは少ない。さすがは手練れの作者だなと思った。
ただし、名前の読みは苦労するけど^^
さて、下巻は天下統一への戦いが描かれるのだろう。
作者は戦の駆け引きや描写も手練れなので、期待したい。 -
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下巻では、子産の父の子国が陰謀に巻き込まれて殺害され、それを収めて家を継ぐ。
位も世代交代とともに執政まで上がり、子展・子皮といった宰相に仕えて軍事・外交・政治で成果を上げ、晋と楚に挟まれて右顧左眄していた鄭の政治に中興をもたらす。
政治姿勢は、礼を重んじ、豊富な有職故実の知識を保ちつつ、前例に流されずに、状況に応じて適切な辞を繰り出す言葉の天才でもあり、孔子が尊敬する二人のうちの一人(もう一人は周公旦)であった。現代風に言えば、人を動かす言葉の達人、ナラティブの達人であったということか。また、子展の死後に、子皮から全権を任されて、農地・兵制改革に従事し、貴族でなく国・公室に一定の力が蓄えられるように制度を見直した改革者でもあった。
同時代人として、斉の晏子、呉の季札がいる。また、孔子が30歳の頃に亡くなったが知己は無かったという。
宮城谷さんが春秋左氏伝から読み解き、本書では一切の架空の人物は出していないという。その分、子産の歴史的意義を正確に伝えているとも言えるが、他の作品と比べて視点が少し引いた三人称的で、歴史小説としての面白さが少し割り引かれている印象を受けた(読み終わるのに時間がかかった)。
しかし、こうした思想を持った人の影響を受けて孔子が登場したということを理解できたのは良かったと思う。 -
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藺にいた呂不韋が秦国・白起将軍の侵攻により捕虜にされ、秦国宰相の魏冄の領地である穣邑に連行されてしまう。その道中で荀子と出会い、彼に師事することにより人としての器を大きくしていく。
穣邑から逃れた後も当代きっての人相士である唐挙との出会いや晩年の薛公・孟嘗君との出会いがさらに呂不韋を大きくしていきます。
(印象的だった文章)
・そこに在るものを安定と考えて、そこに乗ろうとする者がいる。ところが、そこに在るものは過去のものだと考え、未来の安定を求め、乗っているものが不安定であるとおもう者がいる。(中略)そういう未来像を描ける頭脳を生かすのが真の経営者であろう。 -
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キングダム60巻で表舞台から姿を消した呂不韋について、書かれた本が文庫本化されることを知り、興味を持ちました。
戦国時代末期に韓の陽翟にある商人の次男として生まれた呂不韋が秦の宰相となるまでにどんな生き様を見せてくれるのか二巻以降が楽しみになる内容でした。
特に、「完璧」の語源ともなった趙の藺相如と秦の昭襄王の和氏の璧(と15城)をめぐる駆け引きは、戦国時代の外交に如何に胆気が必要であったかを教えてくれました。
(印象に残った文章)
・与えられることになれた者は、その物の価値がわからず、真の保有を知りませんから、けっきょく豊かさに達しないのです。
・信用という目にはみえぬものを蓄え、それを財産にする、という認識がある。信用は人と人とが共存し共栄するという考えがなければ成り立たない。独裁者ではわからぬことである。
歴史小説として、キングダムの前の時代(趙国三大天や白起将軍)について興味がある人にお勧めできる1冊です。 -
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下巻は重耳の流浪の物語。詭諸の死後に驪姫や奚斉が重臣たちに呆気なく滅ぼされるも、後継に推すのを重耳か夷吾かで国論が揉める。重耳は乱となるのを避けて狄に留まる。晋公の地位には、秦公が躊躇いながらも支持した夷吾がつ 就く。しかし、夷吾は秦に恩を仇で返し、国内でも悪性を敷き、重耳に刺客を送る。
重耳は、刺客に追われる形で、諸国を放浪し、衛で冷たい仕打ちにあうなどしたが、最後は、春秋五覇の筆頭である斉の桓公の厚遇を得て、斉の要職に留まり、桓公から息子を託されて、帰国の意思を徐々に失っていく。
それを部下達の機転で、桓公の死に乗じて斉を脱出。衛、曹、宋、鄭などを回った後に、将来のライバルとなる楚の成王に厚遇され、最後は秦公の手引きで、暴君道一直線の夷吾の息子を廃して漸く晋公の地位に就く。
晋公になってからは、周王室のお家騒動の収集、宋などの南方諸国を楚の脅威から救うべく動いて、これを撃破し、中原の覇者となり、桓公に続く、覇者・晋の文公として名を残す。
重耳は、流浪19年を経て、晋の君主になった時は既に60代。大器晩成の典型であり、大人物ではあるものの、常に控えめに、自分を抑えて、周りに推される形でトップに上り詰めた人物。春秋五覇というヒーローではあるものの、その性格、人生を通じてヒーロー感が無く、人の和や信義を重視して地味に事を成したリーダーである。そうした地道感に普通の市井の人は共感を持つのではないだろうか。
また、この君主あってのこの部下という人物が、重耳の陪臣であり、棒の達人で人知れず重耳の危機を何度も救ってきた介子推。彼は、自分の功績をひけらかすことを嫌い、静かに隠遁の道を選ぶ。君主に自分の功績を認めさせるということは、君主に間違いを認めさせることにもなるから、そういう不忠はしないのであると。今も昔も、功績を誇張する人が多い中で、これも清々しい生き方である。 -
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中巻では、称が周の宮廷工作を整え翼を滅ぼして晋を盤石にし、子の詭諸に引き継ぐが驪戎攻めで捉えた驪姫にゾッコンとなり、驪姫が翼の公子である優施に半ば操られながら自らの子である奚斉をたいしたにしようと画策して、申生、重耳、夷吾の三兄弟との内ゲバが始まる。
申生は、孝を体現したような性格で亡命を勧められても断固拒否し、父の意図であればということで最終的には自決する。重耳は良臣を固めつつも、母の実家である白狄に亡命、夷吾は、秦の衛星国である粱に亡命し再起を図る。
孝の申生、徳の重耳、才の夷吾と三人三様の生き様が際立って面白い。また、周の宮廷政治や、周の卿士である鄭や虢の役割、唇亡歯寒を地で行って詭諸に滅ぼされた虞なども描かれていて興味深い。 -
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中国春秋時代の晋の文公である重耳の物語。描写の濃やかさと人物の熱さで、宮城谷先生の歴史小説には毎回楽しませてもらっている上に、歴史の勉強にもなる。
上巻では、晋が周によって封じられてより、翼の本家と曲沃の分家の二つに分立し、重耳の祖父である称が粘り強く宮廷工作を進めて本家の翼城を落として統一すると共に、これに乗じて曲沃を取ろうとする虢の国との戦いまでを描いている。重耳は初陣を果たして、翼攻めで軍功を挙げた駆け出しの状況。
まだ先は分からないが、祖父ほどの器ではない詭諸の治世が暗雲のように漂い、いずれも大人物である異母兄の申生と同母弟の夷吾とのライバル関係も想起させるようなそれぞれの切磋琢磨が描かれている。 -
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文庫本全9巻まとめてのレビュー
春秋時代の中国南方(楚・呉・越)を舞台に展開された物語。
話の大きな軸は二人。
一人は伍子胥であり、もう一人は范蠡。
この時代のこの二人に主な焦点をあてた作品が今までなかったので、
読んでいてとても楽しい。
伍子胥についての大まかな知識は、海音寺潮五郎氏の「孫氏」で読んだことがあるが、
そこにはない伍子胥の生涯や魅力がこの本にある。
呉の公子光や孫武が、伍子胥にとっていかに大切な人であったか。
父親と兄の復讐をなすために、いかに多くの人々と巡り合い、力を貸してもらったか。
伍子胥に人としての魅力があったからこそ運命的な巡り合いがあるし、人として寛容であったからこそ、協力してくれる人もいる。
同じように、越王句践が范蠡にとっていかに大切な人であったか。
范蠡も実家と家族を失うも、やはり『人徳』というものに支えられ、多くの人々と知り合い、幸せにし、そして己の道を進んでいく。
”復讐”から始まる話は古代中国にたくさんある。
古いところでいえば太公望がそうである。
太公望にしろ、伍子胥にしろ、范蠡にしろ、
まずは復讐を成し遂げようとする本人たちが人間としての魅力を備えていないと、協力者も得られないし、何も達成できない。
その意味では「太公望」と似た話の展開ともいえる。
呉越の最終決戦がついに始まるとき…
それは呉の巨人・伍子胥と、越の天才・范蠡の知の対決でもあった。
とにかく一読の価値はある傑作だと思う。