宮城谷昌光のレビュー一覧
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7巻終了。次巻が出るまで期間が空くので、最初の方は複数回読んだ。
宮城谷氏の作品のうち、創作キャラメインではなく史実の小説で、どちらかといえばこちらの方が好きだ。
1,2巻は三国志というよりは後漢末期を舞台にした宮城谷作品ととらえると他の作品同様非常に楽しむことができる。
名の知れた登場人物でさえも、あまり名前を知らなかったこれまでの登場人物と同じ調子で描かれ、文体に溶け込んでいるのが新鮮だった。英雄も悪役も凡人も、それぞれの人物の人間性を探り、行動を理解しようとしているのが印象的だった。
私は曹操が好きだが、宮城谷氏の捉える劉備が何故か途中から魅力的に思われてきた。劉備に魅力を感じたのは初め -
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人は自分では到底敵わない行ないを為す者に対して尊敬の念を抱くもので、辛い修行を行なった僧に対して敬虔な気持ちを抱くのもそれである。その伝で行くと晏嬰という人物は聖人である。現代日本人は、どうも富貴を善しとし、成功者への志向が強く、自己喧伝に巧みであろうとする。これは先の大戦後にアメリカ的な物の考えが刷り込まれた故もあろうが、元来人間には欲があって、矢張りそれを抑える事が中々出来ないので、それを行なえる人物が尊敬される事は自明であるし、吾身の行く末を考えず諫言し得る点についても、例えば会社で上司に、その誤りを正すべく発言出来得るかと考えた時に、どうしても長い者に巻かれろ的な行動に出てしまっている
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社稷を主とす-この時代には新しい思想を実行したことが興味深かった。君主が神ではなくなり、民の新しいよりどころが必要となったのが、晏嬰の生きた時代だったのだろうか。そして最も魅力を感じたのは崔杼。宮城谷氏の作品を読むと、悪人とされている人物でも実は歴史の敗者で、本来は魅力ある人物だったのではないか、と思われる人物に多々めぐりあう。崔杼もそのひとり。晏弱と晏嬰親子を輝かせたのは、崔杼ではないか、と思われる。晏弱の死後かれの手腕がフルに発揮できていたなら、と残念であるし、晩年の事件の苦悩と晏嬰が見抜いた崔杼の運命がとても切ない。そしてその事件こそがクライマックス。
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Posted by ブクログ
宮城谷昌光氏初の日本を取り上げた小説ということで興味を持ち読みました。
主人公は徳川家の家臣の野田菅沼家の三世代の当主というマイナーすぎる人々ですが、非常に面白かったです。
今後も、この作品以外では登場することもない位のマイナーな家臣です。
その野田菅沼家を家臣団の中で有名にした、武田信玄との「野田城籠城戦」が、この作品のメインテーマですが、
その籠城戦の指揮を執った菅沼定盈という人物がどのように生まれたのかを、祖父の定則の代から綴られています。
家康物ですが、家康はほとんど登場しません。
その代わりに、祖父の清康が第一巻で登場します。これは面白いです。
清康について書かれた小説は、今まで見た