向田邦子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
遺作だからか、短編から突然エッセイに切り替わり、これは随筆に見せた物語なのか本当に著者の感じた記録なのか、予備知識がなかったため戸惑った。エッセイもそれぞれ妙に趣が異なる。初出誌を見ると納得、そもそも掲載された媒体の趣が違う。
それでも作者独特の鋭いものの見方や気取らない率直な物言いは一本芯のように貫かれていて、一冊丸ごとどこを読んでも向田邦子。
時代を感じさせない新鮮さと真実があるから、戦中の学童疎開や国民服にゲートルといった話題が出てきてやっと書かれた年代を思い出す。
エッセイにはところどころ、読みながら自分の襟を正したくなるような訓戒が含まれている。本棚や車に忍ばせておきたい一冊。