向田邦子のレビュー一覧
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今から半世紀程前の放送台本を小説化された本作。
向田邦子さんと言えば、やはり昭和を代表するホームドラマの脚本家というイメージが強くて、読んでいる最中でも登場人物が躍動しているような賑やかさを感じた。
昭和の作品だけあって、現代と明らかに異なるのが、男女の恋愛模様や結婚観。ジェンダーバイアスなんて言葉が聞かれる程、ジェンダー問題が叫ばれる昨今の感覚からは、あまりにかけ離れているので違和感を通り越して愉快に感じる。時の流れで人の感覚って、確実に変わり続けているんだなぁと妙に感心してしまった。
是枝裕和さんによるNetflix版『阿修羅のごとく』が公開されるのをキッカケに読んだが、イメージが固定 -
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★★★★ 何度も読みたい
最初の4編は短編小説、あとはエッセイ集となっている作品。エッセイの方では、著者の人生哲学のようなものが簡単に紹介されている。その中でもいくつかの話には、襟を正さなくてはという気持ちにさせられた。特に『若々しい女について』『独りを慎む』『サーカス』などが印象的だった。
「自由は、いいものです。ひとりで暮らすのは、すばらしいものです。でも、とても恐ろしい、目に見えない落し穴がポッカリと口を開けています。それは、行儀の悪さと自堕落です。」
「誰が見ていなくても、独りでいても、慎むべきものは慎まなくてはいけないのです。」
これらは『独りを慎む』のp125の一節だが、著者の -
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あなたには、『阿吽の呼吸』で理解し合える友だちがいるでしょうか?
神社や寺院の入口の両脇で一対で向き合う『狛犬』。獅子に似た想像上の動物とされるそんな存在を見るとキリッとさせられる瞬間があるように思います。一方で、よく見るとそんな二頭は顔つきが大きく異なっています。口を大きく開いた向かって右側の像と、口を閉じた向かって左側の像の違い。これらは”阿形” 、”吽形”と言い、この一対をもって”阿吽”、さらには”阿吽の呼吸”という言葉にも繋がるものでもあるようです。
“二人以上で一緒に物事を行う際に、互いに息が合っていることを表す”言葉である”阿吽の呼吸”。元となっているものの姿を思えば思うほどに -
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あなたは、ある女性のことをこんな風に紹介されたとしたらどう思うでしょうか?
『ポパイの恋人で手足が針金細工のようにひょろひょろ長いオリーブ・オイルという女の子がいるが、あれを二廻り小型にしたようであった』。
『オリーブ・オイル』?、『ポパイ』?カタカナで綴られた人の名前のような単語が二つ飛び出しました。このレビューを読んでくださっている方の年齢はマチマチです。『ポパイ』は『ポパイ』でしょう、という方から『ポパイ』って誰?と首をかしげる方もいらっしゃるかもしれません。
『ポパイ』とは米国の漫画家エルジー・クリスラー・シーガーが生み出した漫画のキャラクターであり、1960〜70年代にテレビ -
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あなたは、こんな男を夫としたいでしょうか?
『カッとなると、口より先に手が飛んで、相手は二メートル先にけし飛んでいる』。
家族の内側というものは、外からはなかなか伺いしれないものがあると思います。”おしどり夫婦”と周囲から思われていたのがいきなり離婚してしまった、このような夫婦も決して珍しくはないと思います。もちろんその逆パターンもあるでしょう。けんかばかりしていると思われた夫婦が実は人も羨む仲の良い夫婦だった、このようなこともあると思います。
また、夫婦の関係性と言うと、昨今DVが社会的に問題となっています。激しい暴力によって妻を支配する夫。そんな状況から逃げるためのシェルターの存在