乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
汝窯(じょよう)と呼ばれる幻の器。
何年も前だったか、
テレビで観たことがあるんだけど
確かにそれは美しかった^_^
非常に高い技術で、再現不可能。
そんな幻の器に完全に
心奪われてしまった次郎。
器をこの手で蘇らせたい···!
のめりこめばのめりこむほどに
次郎は現実からかけ離れていく。
大切なものを失ってもなお
孤独な世界を突き進んでいく。
最後、訪れた中国で
大地に額をなすりつける次郎。
彼がやっとたどりついた境地に、
読んで胸がいっぱいになりました。
人生をなげうってまで
のめりこめるものがあるなんてね。
ちょっと羨ましい···
ドラマチックなストーリーでした! -
Posted by ブクログ
ネタバレ「×月×日」から始まる、一篇3ページ程度のストーリー。
最初これは日記の体をしたエッセイなのかと思った。
さすが作家というのは、普段の生活からストーリーを引き出すのが巧いものだ。
何気ない日常の隣でどんな会話がなされているのか、人ごみの中にどんな異彩を放つ存在があるのか、その耳は、目は、逃さないのだな。
日ごろの観察眼のたまものということか。
けれど、こんなにこんなにドラマって落ちているもの?
明らかに変だよ、その人っていうのが次から次へと彼女の前に現れる。
ほのぼのとした情景、一切なし。
これは、日記の体をした、日常系ショートショートですね。
きちんとオチが付くものばかりではない。
け -
Posted by ブクログ
時は昭和28年。
殺人で逮捕されるシーンから始まる。
戦後、命からがら満州から
引き揚げてきたというものの
日本で待ち受けていたのは
悲惨で貧しい暮らし。
元は9人の賑やかな家族だったのに
ついには次郎と妹の君子の二人きりに。
大切な妹を守るために
罪を犯した次郎。
陰鬱な服役生活の中
陶芸と出逢うことで
新たな人生が動き出す。
これは。
後に一流の陶芸作家になって
のぼりつめたと思ったら
暗い過去を暴かれて
転落していく···
っていうストーリーかしらね!
と思っていたら。
私のカンなんぞ見事にハズれ
中国の青磁と出逢ってからは
まったく違う方向に☆
その青磁は、
満州から -
Posted by ブクログ
乃南アサさん著『鎖(上)』の概要と感想です。音道貴子シリーズ文庫本3作目は上下巻という長編。
概要です。
音道貴子は、かつてないほどの怒りを感じていた。占い師を名乗っていた夫婦と信者らしき夫婦の四人が殺害された事件を機に組んだ相方は、一作目の滝沢と比べようもない程に音道貴子を困らせ、挙げ句に鎖の道へ追いやった。果たして音道貴子は無事に鎖を解かれる道を歩めるのだろうか。
感想です。
音道貴子シリーズは警察社会の格差に留まらず、年齢、性別、身なりや生い立ちなど、あらゆる観点で日常的に人々が抱いてしまう差別的な意識を事件という媒体で強調している作品だと改めて感じました。
という冷静なレビューで -
Posted by ブクログ
ネタバレ乃南アサだからなあ。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもいけるんだよなあ。
どっちに落とすつもりなのだろう。
三浪して五流大学にやっと入ったものの、そこに居場所はなく、かといって家族はとうの昔に崩壊していて、することもしたいこともない伊豆見翔人は、行き当たりばったりにひったくりやコンビニ強盗をしながら西へ西へと流れていった。
ヒッチハイクしたトラックで運転手を脅しもっと遠くまで乗せてもらおうとしたが、つい居眠りをしてしまい、見知らぬ山道に落とされてしまう。
そこで、怪我をした老婆と出会い、金か物を奪おうと助けたことから翔人の運命が変わる。
父親からは物理的に、母親からは言葉の暴力を浴びせら -
Posted by ブクログ
音道貴子と滝沢保のコンビが捜査活動を行い、最終的に検挙に至る物語だが、男社会の刑事組織の中で葛藤する貴子の感情的な様子が巧みに描写されており、非常に楽しめた.原照夫が「発火ベルト」で焼け死に、堀川一樹、吉井知永子、水谷拓が喉を食いちぎられて死ぬという事件が起こり、それぞれの事件の関連性を捜査する過程で、オオカミ犬が登場する.知能の優れたこの犬を訓練していた人物を洗い出したが、大火傷に瀕死の状態.貴子らの努力で高木から動機を聞き出し、次の殺害者を守るべく貴子がオオカミ犬を追跡.手に汗握る迫力ある場面が面白かった.娘の復讐を企てた高木の執念は結果的に殺人を引き起こすことになったが、親として理解でき