乃南アサのレビュー一覧
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タイトルは疑心暗鬼の『暗鬼』…この言葉は、妄想からひきおこされる恐怖心。 実際にはないことを、あると思ってこわがる気持、とのことだ。これだけでも何だか引き込まれていた。
主人公の女性が親子四代、総勢8名の大家族に嫁ぐところから、物語は始まる。この家の嫁として早く溶け込みたいと張り切る主人公。
皆が自分に優しい、いや優しすぎる?一見温かく理想的な家庭。しかしの裏に潜む奇妙な違和感がある…効率的だからと、義母や義妹と一緒に風呂に入らされる。絶対的権力を持つ『大ばばちゃん』と呼ばれる98歳のひいお婆さんが君臨している。
この家は何だかおかしい?それとも私が間違ってるのか…主人公は疑心暗鬼に囚われてゆく。
今の世の中では男の偏見だと言われるかもしれないが、『嫁ぐ』という字は『家に女』と書き、女性は結婚後に夫の苗字を名乗り、その家の一員になることが当たり前と思われてきた。
しかし本来は、結婚したこと=相手の家に入ること、ではない事は、だいたい頭の中ではわかっているが、波風立てないように相手の家の風慣習に合わせようと努力するものだろう。
主人公も夫の家族に対する様々な違和感が芽生え、それが拭えないものの、だんだんと生活していくうちに、その家の慣習に、教義に、考え方に洗脳されていく過程が実に怖かった(ネタバレになるから、洗脳される過程は書けないが)
ラストは何とも言えぬ気持ち悪さと後味の悪さがある。
世の中にはここまで極端では無いものの、結婚相手の家になかなか馴染めずに、結婚自体を放棄して離婚する場合もあるだろう。そう考えてみると、事実婚だけで当人同士だけの問題で相手の家とは全く付き合わない方が気楽だし、うまくいく場合もあるよなあ。
『結婚』ってやっぱり難しい、ある意味ではそれは『賭け』のようなものかもしれない。
そんなことをふと思った…。
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Posted by ブクログ
私にとって30年ぶりくらいの乃南アサ作品。『凍える牙』を読んで、「やっぱり直木賞受賞作っておもしろいなぁ」と思った記憶がある。
そして今回、短編ではあるが、やはり「うまいな」と思った。ベテランならではの、テンポのよい文章のなかの過不足ない表現はさすが。
この本は、ちょっとしたホラー感もある。
読んでいくうちに、「あぁ、この人はホントはこんな人だったのか……」という予感がするのだけど、その答え合わせをするのが怖くて、毎話、一瞬ひと息入れてしまった。
結局いちばん怖いのは、見知らぬ人じゃなくて、よく知っているはずの人の見知らぬ姿。
でも、それは当たり前なのかもしれない。家族とはいえ、他人なのだから。
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Posted by ブクログ
久しぶりに乃南さんの作品を読みました。
会社帰りに立ち寄った書店で新刊を。
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少年たちの
声を聴く
それが
私の仕事
自転車窃盗、暴行、
JKビジネス……。
事件を調べるため
かのんは今日も走る!
乃南ミステリー
新シリーズ開幕!
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福岡県で家庭調査官をしている、庵原かのん。
「ケーキを切れない非行少年たち」を思い出しました。
家庭や貧困、
誰かの理解や支援があれば、
違う未来があったかもしれない。
ルーツや核心的な部分に迫ろうとすることは、
ミステリー要素もありますが、
こんなに若くて幼い少年少女たちが…という思いが。
そして、完全に解決するわけでもなく、
家裁調査官としてできる範囲があるため、
物語の結末には限界があり、
この先はどうなるんだろうという気持ちになるし、
やるせない気持ちにもなります。
でもそれがリアルです。物語なのに。
年齢的に私はかのん寄りで、
保護者のような目線で読み進めてましたが、
もし自分が若い時に読んでたら
どんな感想をもっていてかな、と思った一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『セメタリー』
どういう意味なのかな?と思って調べたら
お墓とか墓場という意味があるらしいのだけれど
この作品については後者が当てはまるのだろう。
結婚は人生の墓場、なんて昔の人はよく言ったもんだ…
『ワンピース』
…うぇぇ?そこで終わり?
というくらい唐突に終わる。
冴子の気持ちはわからなくはないけれど、
『そっとしておいた方がいい』という建前で
(そういう意図はなくとも)放置してた以上、
寂しさに漬け込んでくる人間がいたとしても、
どうしようもないんだよなぁ…
『ビースト』
あつかましいな、とは思う。
ただ…こういうの実は多いんじゃなかろうか。
離婚してなくても、保育園の送り迎えとか
食事のこととか、金銭面とか。
自分だけは違う、なんてことはないんだよな。
気を付けないと。
『エスケープ』
所謂胎児記憶の話?
ママさんの自業自得な面もあるとはいえ、
娘さん結構怖い。
『アフェア』
主人公の管理人さんにまつわる何かの話と思いきや、
彼は完全なる傍観者で真の主人公は佐野さんだった。
子どもも巣立っちゃって、しかも遠方で
自分一人でこれからどうやって生きていこうって思ったとき、
こういう終わり方を選ぶ人のことを本当に責められるだろうか。
ビーストの話みたいに寄りかかられるのも嫌かもだけど、
それよりないよりいないものみたいになる方が寂しいかもなぁ…
鳥の巣症候群にならないように、
今のうちになんか趣味見つけておいた方がいいのかな。
あ、それが読書なのか。 -
Posted by ブクログ
心にも経歴にも傷を負った女性二人が前向きに生きていく道を探していく一冊です。
主人公はとある罪で実刑7年、刑務所から出たら浦島太郎のような心地になっている女性。家族からも見放され、近所との付き合いに神経をすり減らし、何かにおびえながら過ごす日々の中で救いになっているのは刑務所で服役していた時に知り合った友人の女性との時間。上手くいったり、いかなかったりしながら、それでも前を向いていくために彼女たちは手を伸ばす。
刑期が明けて出てきた、前科のついてしまった女性たちの友情を感じる一冊です。
生きていくことは大変なことだ、と最近ことさらに感じますが、脛に傷を持つ人たちであればなおさらなのだろうなと思います。トラウマのようになっていることもあるでしょうし、どうしてあのとき、と後悔してしまうこともあるのでしょう。刑務所に入れられた人たちが全員が全員そのような感覚になるわけではないでしょうが、少なくとも主人公の彼女は苦しそうで。友人の彼女も、たくさんのことを飲み込んで明るくふるまっている。健気でいじらしく感じました。
一度は捕まるほどの罪を犯したのだとしても、それでも、誰でも、自分が決めた時には前を向いて、明るい方へ向かって進んだっていいはずだ、と思います。
少しだけ勇気をもらえるような一冊でもありました。
解決しない謎が残る部分もありますが、実際の日常の中では解決されない謎なんてたくさんあります。それならそれで、いいのかもしれない。解決しても、しなくても、それでも日々は続いていくのだと感じさせてくれるお話でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレベルトに発火物をつけられて焼死した男の事件から連続殺人事件に発展していく。最初のなんとも言えない展開からかなり荒唐無稽な事件が発生が読ませてしまうところに作者の力量を感じた女性刑事が男社会の警察、家族からの孤独感とキーとなるウルフドッグとの境遇が重なるところが印象的。終盤の展開はあり得ない展開ではあるが映画のクライマックスのようで目を離せなかった。実写再現してくれたらいいと思ったがよほど予算をかけないと陳腐なものになってしまうだろう。小説ならではの表現かも。とにかくウルフドッグの描写が気高く美しい小説だった。古いが今読んでも十分読める本。
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Posted by ブクログ
『花散る頃の殺人』に継ぐ音道貴子シリーズの短編集。
約20年ぶりに再読。6話が納められている。
表題作の「未練」は、貴子の私生活が綴られ、オカマの安曇から紹介された男との交際など。
「立川古物商殺人事件」は、機動捜査隊として現場に赴く貴子と事件の顛末だが、事件は未解決のまま?ここで相棒となる島本の視点で綴られるのが、最後の「殺人者」
「山背吹く」は、長編『鎖』で監禁されて受けたダメージ(と思うが)を癒やすため休暇を取り、友人の旅館で過ごす貴子が、ある事件をきっかけに再生を期す話。
「聖夜まで」は、保育園児が砂場で殺害された事件を担当した貴子がその容疑者の素性に慄然とし、読者も暗澹たる面持ちに。
「よいお正月」は、実家で過ごす貴子と母親とのやり取りや買い物時に出くわした出来事。初出はわからないが、雑誌の新年号用にでも書かれた小作品か。
それぞれ短編として切れ味があるが、やはり長編の醍醐味には叶わない。次は長編を。