乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
短篇集。
これもすべてが、シャープでスマートで面白かった。乃南さんの書く短編は、最後の落とし方が鋭くて、ユニークで。あっけなくて、面白い。
「彫刻する人」なんかは特に、そう感じた。
乃南さんの話に出てくる、女の人も男の人も女子も男子も、老女も老翁も、みんなすべてが「本物」みたい。気持ち、というか視点がそれに近い。
表題作の「家族趣味」は、怖かった。そして悲しかった。哀しかった。
「家族」――理想の家族像――をつくることが、趣味。そこには人の温もりがまったくない、ということに、まったく考えを及ばせなかったことで、なにもかも失ってしまう。これも展開が隙なく、意外で最初から最後まで楽 -
Posted by ブクログ
これが、「子供」の恐ろしさか!と心底ぶるぶるした記憶が。
その当時は、自分もまだ成人していなかったので、「大人」にとってどれだけ「子供」が脅威になるか、本当の意味では理解していなかたんじゃないかと思うのですが、それでも、そんな「大人未満」にもその怖さは伝わるほどの内容でした。
冷蔵庫が壊れて捨てられて、その後、新しい冷蔵庫がやってくるのを見て、「壊れると、新しいものに変わるんだ」との認識を、人間にも置き換えてしまうとか。三つ編みの少女の無垢なあざとさとか、怖いなあと思います。
子供って、純真なだけじゃないんだな。なんて、当たり前のことを思わせる一冊。 -
Posted by ブクログ
かなり面白かった。
父親が戦死、
満州から引き上げるときに、兄弟を次々と亡くし
母親は心身ともに弱り。
残された子供たち。
中学生だった南部次郎は、荒れ狂う日々を送り
それでも、妹を守るため、家族を守るために必死だったがため。
ところが、母が亡くなり、
親切にしてくれた大人がいたと、喜んだのもつかの間、
12歳の妹を、売れと言うのだ。
殺人を犯してしまう次郎。
10年の刑期が始まっても、短期で、どうしようもない「怒り」は、そのまま
すぐに拘束されてしまい、独房へ。
姉は、金の工面をするといい、連絡取れず
弟は行方不明。
残った妹は、デパート勤務をはじめる。
その妹にチャンスがめぐって