乃南アサのレビュー一覧

  • 美麗島紀行
    台湾の風土や人々を語るにはどうしてもその歴史に触れざるを得ない。

    30年近く前の司馬遼太郎の「街道をゆく」もそうだし、本書も。
  • 女刑事音道貴子 嗤う闇
    音道さんの環境が変わった、仲間も変わった。でも、行動を共にする若いキャリアとの関係はこれまでと似て非なりか?名声を手にした男達の行く末と信頼する男の悲しき奇遇。そしてかつての相棒が見せる優しく辛辣な父の姿。クスリと笑い、眉間に皺が寄せて悼み、ホッとする一冊でした。
  • 女刑事音道貴子 未練
    鎖の上下巻が決着した後に落ち着いた頃の短編集でしょうか。女性の活躍と少子化の改善がこれからの社会を支える最優先の拠り所である現世を象徴するかのような潜在的な意図を勝手ながら感じました。犯罪の犠牲になる子供を殺めたのも子供という事件にはある女性の苦難が大いに関係している。それが主人公の身近な存在という...続きを読む
  • 幸福な朝食
    気がついたときにはもう
    崩れていて、壊れていた。
    もう最初から壊れていたのかも。
    こんなはずじゃなかっただろうに、志穂子が報われない。

    これがデビュー作だなんて、、
    乃南さんさすが。
  • それは秘密の(新潮文庫)
    男と女の恋愛模様を描いた短編集。

    人間の不器用なところであったり、
    素直なところ、
    汚いところが上手に描かれている。

    共感できたり、できなかったり。
    おもろい。
  • 女刑事音道貴子 花散る頃の殺人
    凍える牙で興味を持った、音道刑事の続篇が読みたくてに取った。「おっちゃん」と呼ぶ新たな相棒との活躍を集めた短編集。凍える牙に反して日常の穏やかな時間が感じられた。おっちゃんが標的になる事件をからかう元相棒である滝沢との会話が時の経過を教えてくれるようで、新たな展開が気になった。
  • いつか陽のあたる場所で
    芭子と綾香のやり取りがなんともいい。
    また、二人の前科の自虐的なやり取り
    たまにスリリングな雰囲気になる場面も絶妙で
    ただ最後には何気にほっこり終わるところも良かった。谷根千の描写はリアルです。懐かしい。
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)
    フィクションではあるし、誇張もあるかと思いますが、あの時代に各地で起こっていただろう出来事なのだと思います。たくさんの「すぅちゃん」や「お母さま」がいたと思います。
    戦争について語る方が少なくなり、学校でも教えてくれなくなっていく時に、小説として読んで知り感じることはとても大事だと思います。14歳の...続きを読む
  • すずの爪あと―乃南アサ短編傑作選―
    感動物もあるが、大半はオチが黒い物。それが面白い。僕のトンちゃんは初めから異様な世界観が展開されていて面白い。
  • ドラマチック チルドレン
    富山市の郊外で、非行、不登校、引きこもりなどの問題を抱えた子どもたちを育てる「ピースフルハウス・はぐれ雲」を経営する川又直(かわまた・なおし)、佳子夫妻と、「はぐれ雲」にやってくる子どもたちの心の交流を描いたノン・フィクション作品です。

    この作品の中心に位置しているのは、中井恵という少女です。彼女...続きを読む
  • すれ違う背中を
    ふと友達の話だったかな。

    と、思ってしまいそうになるほどに身近に感じるこの2人。あれ?昨日電話で話たんだっけ?とか、あーあそこに住んでるはこちゃんね。

    と、つい近所の人の話のような気分にさせられるほどに、何とも言えずやたら身近なんだ。この2人。
    どうしてなんだろう。

    小説として楽しむんじゃなく...続きを読む
  • 夜離れ
    男性に執着し結婚が幸せと信じて振り回される不幸な女性たちの話。
    一見リアルには起こらなそうな話ばかりだけど、一方で心境や振り回される感じはリアルそのもの。
    小説を読んだ後に心が洗われる感覚は全くなく、むしろ見たくないし見せたくもない汚い部分をまざまざと見せつけられる感じ。
    人に幸せを委ねるから振り回...続きを読む
  • いつか陽のあたる場所で
    面白い。

    ハコ29歳と、綾香41歳。刑務所からでてからの2人の暮らし。

    後ろ暗い過去がある2人が刑務所で知り合いその後を懸命に生きていく2人。

    暖かいような冷たいような近所や世間にもまれつつ、なんとか普通の生活に戻ろうとする中で、刑務所の生活を思い出したり、やっぱりわたしは幸せになんてなれない...続きを読む
  • 暗鬼
    後味の悪さが抜群。ぞわっとする怖さを楽しむ本。
    途中までは法子の身を心配して読むけど、いつの間にか紀子まで「宗教」の一員になっていっている。
    解説の「家族とは、ひとつの宗教である」とはその通り。カレシ家族の言動で理解できないことが多々あったけど、それは宗教が違うから、ということか。入信したくないなあ...続きを読む
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)
    戦後の女性たちを描いた小説。
    実際にあったとされる、進駐軍に向けた特殊慰安施設で働かざるをえなかった女性たち。
    他に働く当てもなく、食べていく、生きていくためには仕方なかった。
    そんな慰安施設での通訳の仕事を紹介してもらった鈴子の母は、英語が話せたことが幸いした。
    ただ、そんな母を鈴子は受け入れられ...続きを読む
  • 女刑事音道貴子 鎖(下)
    緊張感が続く下巻だった。
    音道刑事の心情の揺れ動きがヒシヒシと伝わってきた。
    犯人グループの中のかなこがキーパーソンであり、この作品に厚みを持たせている。
    人の心の弱さ、強さ、そして人との繋がりの持つ力を感じられた。

    これまでの活動で性別の壁を越え、仲間との信頼関係を築いてきたのは彼女の努力と賢明...続きを読む
  • 晩鐘〈中〉 新装版
    被害者遺族だった真裕子が少しずつ幸せへと向かう中、
    加害者の家族はどんどん不幸の方へと向かっていく。
    結果、主婦殺しの高校教師は、
    その息子の姿を持って己の罪深さを、心底悔いるのだが、
    それは何ともつらい結末でした。

    加害者家族も、被害者家族も、
    どちらの家族もある意味、事件の被害者であり、
    それ...続きを読む
  • 晩鐘〈上〉 新装版
    被害者遺族だった真裕子が少しずつ幸せへと向かう中、
    加害者の家族はどんどん不幸の方へと向かっていく。
    結果、主婦殺しの高校教師は、
    その息子の姿を持って己の罪深さを、心底悔いるのだが、
    それは何ともつらい結末でした。

    加害者家族も、被害者家族も、
    どちらの家族もある意味、事件の被害者であり、
    それ...続きを読む
  • いつか陽のあたる場所で
    乃南アサの2作品目。
    しっかりとした世界観で描かれていて、読みやすい。しゃぼん玉とこの作品を読んでそう思った。
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)
    14歳の夏に終戦を迎えた。
    父親を事故で亡くし、長兄は戦死。
    姉は嫁ぎ先の空襲で亡くなり、出征した次兄は帰らない。
    空襲から逃げる中で妹は行方知れずになった。
    母親と二人だけになった二宮鈴子。

    戦時中に教えられてきた価値観が180度変わる渦の中で、
    日本の防波堤となった数千人の女性たち。
    「新日本...続きを読む