乃南アサのレビュー一覧
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私にとって30年ぶりくらいの乃南アサ作品。『凍える牙』を読んで、「やっぱり直木賞受賞作っておもしろいなぁ」と思った記憶がある。
そして今回、短編ではあるが、やはり「うまいな」と思った。ベテランならではの、テンポのよい文章のなかの過不足ない表現はさすが。
この本は、ちょっとしたホラー感もある。
読んでいくうちに、「あぁ、この人はホントはこんな人だったのか……」という予感がするのだけど、その答え合わせをするのが怖くて、毎話、一瞬ひと息入れてしまった。
結局いちばん怖いのは、見知らぬ人じゃなくて、よく知っているはずの人の見知らぬ姿。
でも、それは当たり前なのかもしれない。家族とはいえ、他人なのだ -
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久しぶりに乃南さんの作品を読みました。
会社帰りに立ち寄った書店で新刊を。
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少年たちの
声を聴く
それが
私の仕事
自転車窃盗、暴行、
JKビジネス……。
事件を調べるため
かのんは今日も走る!
乃南ミステリー
新シリーズ開幕!
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福岡県で家庭調査官をしている、庵原かのん。
「ケーキを切れない非行少年たち」を思い出しました。
家庭や貧困、
誰かの理解や支援があれば、
違う未来があったかもしれない。
ルーツや核心的な部分に迫ろうとすることは、
ミステリ -
Posted by ブクログ
ネタバレ『セメタリー』
どういう意味なのかな?と思って調べたら
お墓とか墓場という意味があるらしいのだけれど
この作品については後者が当てはまるのだろう。
結婚は人生の墓場、なんて昔の人はよく言ったもんだ…
『ワンピース』
…うぇぇ?そこで終わり?
というくらい唐突に終わる。
冴子の気持ちはわからなくはないけれど、
『そっとしておいた方がいい』という建前で
(そういう意図はなくとも)放置してた以上、
寂しさに漬け込んでくる人間がいたとしても、
どうしようもないんだよなぁ…
『ビースト』
あつかましいな、とは思う。
ただ…こういうの実は多いんじゃなかろうか。
離婚してなくても、保育園の送り迎えとか
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Posted by ブクログ
心にも経歴にも傷を負った女性二人が前向きに生きていく道を探していく一冊です。
主人公はとある罪で実刑7年、刑務所から出たら浦島太郎のような心地になっている女性。家族からも見放され、近所との付き合いに神経をすり減らし、何かにおびえながら過ごす日々の中で救いになっているのは刑務所で服役していた時に知り合った友人の女性との時間。上手くいったり、いかなかったりしながら、それでも前を向いていくために彼女たちは手を伸ばす。
刑期が明けて出てきた、前科のついてしまった女性たちの友情を感じる一冊です。
生きていくことは大変なことだ、と最近ことさらに感じますが、脛に傷を持つ人たちであればなおさらなの -
Posted by ブクログ
ネタバレベルトに発火物をつけられて焼死した男の事件から連続殺人事件に発展していく。最初のなんとも言えない展開からかなり荒唐無稽な事件が発生が読ませてしまうところに作者の力量を感じた女性刑事が男社会の警察、家族からの孤独感とキーとなるウルフドッグとの境遇が重なるところが印象的。終盤の展開はあり得ない展開ではあるが映画のクライマックスのようで目を離せなかった。実写再現してくれたらいいと思ったがよほど予算をかけないと陳腐なものになってしまうだろう。小説ならではの表現かも。とにかくウルフドッグの描写が気高く美しい小説だった。古いが今読んでも十分読める本。
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Posted by ブクログ
『花散る頃の殺人』に継ぐ音道貴子シリーズの短編集。
約20年ぶりに再読。6話が納められている。
表題作の「未練」は、貴子の私生活が綴られ、オカマの安曇から紹介された男との交際など。
「立川古物商殺人事件」は、機動捜査隊として現場に赴く貴子と事件の顛末だが、事件は未解決のまま?ここで相棒となる島本の視点で綴られるのが、最後の「殺人者」
「山背吹く」は、長編『鎖』で監禁されて受けたダメージ(と思うが)を癒やすため休暇を取り、友人の旅館で過ごす貴子が、ある事件をきっかけに再生を期す話。
「聖夜まで」は、保育園児が砂場で殺害された事件を担当した貴子がその容疑者の素性に慄然とし、読者も暗澹たる面持ちに。