あらすじ
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した! 遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか? 野獣との対決の時が次第に近づいていた――。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。
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「凍える牙」について
この乃南アサさんの「凍える牙」は、その他の強力な候補を破り、第115回直木賞を受賞した作品ですね。
30代で離婚歴のある音道貴子。離婚の原因は夫の浮気。そして、今回彼女と一緒に組むことになったのは、かつて女房に逃げられた経験のある中年刑事の滝沢。
男社会の中で認められずに孤軍奮闘する女刑事と、女刑事の存在を認めたくない叩き上げの頑固者の刑事の構図ですね。
この2人が、渋々ながらも一緒に捜査活動を続けるうちに、徐々にお互いを認め合っていくことに-----というのは、言ってみればありがちなパターンなのですが、しかし、なかなか読ませてくれますね。
しかし、滝沢の愛想がないのは、実際には貴子のことが嫌いというよりも、どう扱っていいのか分からないからではないでしょうか。
そして面倒くさいからというのもあるのでしょう。
そして、貴子の方も決して自分の弱みを見せようとはせず、だからといって頑張っている姿を主張したくもないという頑固さから、必要以上に愛想がありません。
女刑事としては、柴田よしきさんの「RIKO」シリーズに登場する緑子の方が迫力があると思うのですが、この貴子の無表情な感じもいいですね。
この物語では、貴子と滝沢の視点が交互に描かれ、この2人が実は似たもの同士だったということが、次第に分かってきます。
無理に相手のことを理解しようとはせず、単なる傷のなめあいの関係にはならないところがいいですね。
ただ、事件の方は、時限発火装置と犬の咬傷の両面から捜査されることになるのですが、これがどうも中途半端な印象を受けました。
せっかくの時限発火装置という設定が生かしきれていないような気がします。
貴子と疾風のシーンがとてもいいのですから、初めから時限発火装置など使わず、そちらに的を絞った方が良かったのではないかと思いました。
それにしても、貴子と疾風の魂の触れ合いの描写には、思わず目頭が熱くなりました。
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直木賞受賞作にハズレなし!
深夜のファミレスで男の身体が炎上!
いきなり引き込まれる場面から始まり、
最後は疾風と音道と共に
一緒に走り抜けた感あり。
Posted by ブクログ
◯好きなフレーズ
実に静かな表情をしていた。襲おうという気配など、微塵も感じられない。むしろ、無様に転んだ貴子を労るような、もう諦めるのかとでも言いそうな顔。
誇りの高さ、嘘や裏切りを許さない厳しさ、そして、孤独感。あまりにも静かな、遠い眼差し。
疾風
Posted by ブクログ
乃南アサさん初読みの『凍える牙』の概要と感想になります。
深夜のファミレスで1人の男性客が突然、助けを乞いながら燃え出すという不可解な事件が発生する。機動捜査隊に所属する貴子は、昭和の刑事(デカ)を代表するような滝沢と臨時のコンビを組んで捜査にあたる。2人は相性最悪ながら、事件に絡む謎の「牙」を追い求める中で次第に互いを認め合って「牙」を追い込んでいく。
本作は直木賞受賞作で女刑事 音道貴子シリーズ1作目だそうですが、前半は人間味というか人間臭さを滲み出しながら音道と滝沢の相性の悪さが描かれている一方、後半の怒涛の展開は警察24時や逃走中を観ている時の緊張感を味わえるといった緩急が凄い作品で楽しめました。
結城充考さんのクロハシリーズとは正反対な本シリーズも追いかけたくなりますね。
Posted by ブクログ
乃南アサの長編小説。僕がこの作品に出会ったのは、筆者を知り、どうやらこの作品が面白いと言われている様なので手に取ったという経緯だ。なのでシリーズかしている事も知っていたが、「風紋」や「晩鐘」程では無いだろうと軽い気持ちだった。
冒頭からファミレスの焼死体、牙の後、という不穏空気に一気に引き込まれる。
貴子と滝沢のコンビも魅力的で、滝沢の皮肉な親父感(皇帝ペンギンはピッタリ)は、男社会の嫌な部分を凝縮している。それに負けない貴子の強さ、また素の部分はギャップを感じ魅力的におもう。
彼女はバイクを愛用しており、カーチェイスならぬバイクチェイスはまるで映像を見ているかの様な描写力だ。女性刑事や探偵は数人知っているが、キャラクターとして魅力的な一人になった。
物語が進むにつれ、牙の意味が明かされていく訳だが、物凄く切ない気持ちになる。衝撃度や世界観含めて読んでよかった。面白い作品だった。
Posted by ブクログ
何も言うことがないくらいすごい面白かった。
引き込まれて読み終わりました。
最初は、滝沢刑事と音道貴子のコンビで、なんとなくうーん…って感じだったんだけど、中盤からどんどん引き込まれて行った。
さらに疾風が出てくる頃にはもう、どうなる?次はどうなるの??って気になって気になって。
音道貴子シリーズは読もうと決意しました。
凍える牙はけっこう前に発刊されてたんだ。なぜ今まで気づかなかったんだろう。もっと早く飲みたかったー。
Posted by ブクログ
オオカミ犬?警察ものなのに?
あ、ファンタジーかあと思った。
いやすみません、そのオオカミ犬が主人公達を凌ぐ存在感となる。
後半の疾走感たるや。
オオカミ犬にとても会いたくなる一冊。
Posted by ブクログ
先が気になって、夢中でページを捲った。
原殺しの犯人はともかく、笠原の動機には全く共感も理解もできない。
もう少し、笠原に同情できるような、「そこまでのことをされたのなら殺してやりたくもなるわ…」と思わずにはいられないような、もっと凄惨な過去があってほしかった。
父ちゃんには申し訳ないが、笑子がああなったのは自業自得じゃないの?
あと、主婦が疾風に襲われた現場を目撃してしまった虐められっ子の少女が、その後どうなったのかが気になる。
エピローグあたりで語られるかと思ったけど、あれきり出てこなかった。
Posted by ブクログ
読んでいて、どんどん引き込まれるストーリーだった。
発行された時から時間がたっているので、古い考えだなと思う場面はある。
二つの事件がもう少し複雑に絡み合っていたら、なお面白かっただろうなと感じた。
Posted by ブクログ
ファミレスで突然男が燃えるという始まり方に、のっけから引き込まれた。
かなり前の本なので時代の流れを感じる部分は多かったけど、それがまたなんだかよかったかな。
あまりにも雰囲気の悪いコンビが何となく馴染んできたのが一安心。
Posted by ブクログ
女性を軽視している、ちょっと横暴な滝沢と音道のコンビが、
はじめはこんな二人でやっていけるかと思うくらいギスギスしている。
だけど、二人の目線で物語が進むので、お互いがお互いをどう思っているのかよくわかる。
これは細かいなと思った。
物語もぼんやりとしていた真実が輪郭をもちやがて鮮明になる。
この過程が面白かった。
オーディブルで聴いたけれど、後半のスピード感あるストーリーは
ナレーターの力も相まってかなり緊張感があって面白かった。
Posted by ブクログ
ベルトに発火物をつけられて焼死した男の事件から連続殺人事件に発展していく。最初のなんとも言えない展開からかなり荒唐無稽な事件が発生が読ませてしまうところに作者の力量を感じた女性刑事が男社会の警察、家族からの孤独感とキーとなるウルフドッグとの境遇が重なるところが印象的。終盤の展開はあり得ない展開ではあるが映画のクライマックスのようで目を離せなかった。実写再現してくれたらいいと思ったがよほど予算をかけないと陳腐なものになってしまうだろう。小説ならではの表現かも。とにかくウルフドッグの描写が気高く美しい小説だった。古いが今読んでも十分読める本。
Posted by ブクログ
文庫化で2000年刊なので、そこそこ古いですね。女性蔑視・特別視に反発する描写は、今はやや時代遅れな印象ですが、当時は必要だったのでしょう。
後半のウルフドッグの物語は躍動感があって良き、ですが、冒頭衝撃的な事件で読者を引き付けたのに、そことの関係性が弱くて、残念です。
Posted by ブクログ
乃南アサの直木賞受賞作品。女刑事音道貴子シリーズ第一弾。
刑事という男社会の中でもがく女刑事の様子を描くかなり特殊な事件だが、その内容よりはオオカミ犬と女刑事に焦点が当てられた物語。
Posted by ブクログ
直木賞受賞作。主人公や犯人サイドに共感しやすい。
どんでん返し感はない。
ウルフドッグの疾風が健気で、犬好きの方には刺さるのでは。
ポケベルが出てくるなど、時代を感じる。
Posted by ブクログ
【あらすじ】
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した! 遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。この異常な事件を引き起こしている怨念は何なのか? 野獣との対決の時が次第に近づいていた――。女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた直木賞受賞の超ベストセラー。
『何をしても、何を聴いても、どこかの記憶につながっていく。それが、年を重ねていくということなのだろうか。思い出したくもない風景ばかりを、自分のうちにため込むのが人生だというのか。』
【個人的な感想】
知り合いからおすすめされて読みました。この作者さんの本は初めてでした。流石の直木賞受賞、後半になるほど緊張感が増し、この先どうなるのだろうという気持ちからページを捲る手が止まりませんでした。
Posted by ブクログ
音道貴子と滝沢保のコンビが捜査活動を行い、最終的に検挙に至る物語だが、男社会の刑事組織の中で葛藤する貴子の感情的な様子が巧みに描写されており、非常に楽しめた.原照夫が「発火ベルト」で焼け死に、堀川一樹、吉井知永子、水谷拓が喉を食いちぎられて死ぬという事件が起こり、それぞれの事件の関連性を捜査する過程で、オオカミ犬が登場する.知能の優れたこの犬を訓練していた人物を洗い出したが、大火傷に瀕死の状態.貴子らの努力で高木から動機を聞き出し、次の殺害者を守るべく貴子がオオカミ犬を追跡.手に汗握る迫力ある場面が面白かった.娘の復讐を企てた高木の執念は結果的に殺人を引き起こすことになったが、親として理解できないものではないと感じた.貴子のプライベートな動きも適宜出てくる構成が秀逸だ.
Posted by ブクログ
「疾風はの全身は見事に躍動し、輝いていた。背中の中心から尾は黒に近い灰色、腹の方に下がるに従って毛は銀色に見える。自分をお追ってくる者の存在など、まるで眼中にもないように、一点を見つめて走っている。」
走っている姿が目に浮かびます。
Posted by ブクログ
冒頭の火災の焼死体に咬傷がのこされていた。テロ的なミステリーかと思いきや大型犬に襲われて命を奪われる事件が勃発する。孤高の女刑事が理不尽な男社会で抗いながら常に前を向いて闘う姿勢は読み手をひきこみます。ドラマ化されて音道貴子役は小池栄子さんが演じているようですがちょっとイメージがわきません。作品は違いますが誉田哲也さんのストロベリーナイトの姫川玲子を演じた竹内結子さんが個人的には適役で、相棒の滝沢刑事はマキタスポーツが適役ではないかと感じます。音道貴子シリーズを読破しようと思います。
Posted by ブクログ
まだまだ警察組織でも
男尊女卑は根強いのか?
これってどの会社でも同じだけど・・・
とは思いながら
やけに女だから舐められる
女だから馬鹿にされている
が強調され過ぎで主人公も意識しすぎ。
もっともココを強調しているから
後々強面の女嫌いの相棒の
ふとした際の優しさに
「よかったじゃん」と思えるのだろうが・・・・
さて、色々な犯人がいるが
今回はオオカミ犬。
あまりに忠実で
あまりに気高く
あまりに哀しい最後に
犬好きとしては
腹立たしい思いで読み終えた感がある。
こんな事に犬使うな!
(すっかり話に入り込んでいる証拠だが・・・)
しかも、大火事出した犯人の動機が
身勝手過ぎてあきれかえった。
Posted by ブクログ
急にファミレスで人が発火した事件の真相を追う話に見せかけ、女性蔑視とカッコいい狼犬の話だった。1996年か…今では信じられないようなパワハラセクハラ発言満載でビビった。疾風は何も悪くない。
(超速読してしまったので、じっくり読んでたら評価上がってるかも)
Posted by ブクログ
雑に括れば女刑事もの。
面白かった、けど、なんとなく評価しにくい作品。
作中では、
・不可解な2種類の犯行方法の謎
・殺人の動機となった過去についての謎
・男性社会における女性主人公の抵抗
・女性主人公と男性のチーム成長譚
・ウルフドッグと人間の生の躍動の対比
といった複数の要素の絡み合いがある。
ポジティブに言えば、それが物語を面白くしている。
ただ、ネガティヴに言えば、それが物語のピントをぼやかしてしまっている気がした。
けど、それは言い方を変えれば「上下巻にして倍くらいのボリュームで読み応え倍増して欲しかった」という、ポジティブな感想でもある。
女性主人公が、職場でも家庭でも、理解されなかったり犠牲にされたり、女性が男性的社会の中でもがいている姿が描かれ。けれど男性も実はもがきながら生きている(中年男性としては滝沢への感情移入を禁じ得ない)ことを知り。対比としてウルフドッグは、人間に作られ飼われた存在でありつつも自らの意思で飼主の遺志を継ぎ、かつ、自分の命を余すことなく燃やし躍動する。自分もそのようになれそうな気がしたが、それはかなわず、ひと時の高揚を残してまた日常に帰っていく。
そのような人間ドラマを主軸としつつ、車輪の軸を回す駆動力として、事件解決/トリック謎解きものが組合されている。
笑子のエピソードと、滝沢と子供達のエピソードを膨らませて、滝沢の笠原に対する共感と葛藤まで描かれたバージョンを読んでみたいと思いました。
Posted by ブクログ
警視庁機動捜査隊の女刑事・音道貴子の活躍を描く。シリーズ第一弾。深夜のファミレスで体が突然炎上した事件を、警視庁立川中央署のオヤジデカ・滝沢保とペアを組んで捜査する。さらに獣による咬殺事件が続く。ちょっと非現実的なところはあるが、楽しめた。
Posted by ブクログ
オーディブルで聴きました。
昭和の話かと思ったら平成(1996年)の話だった。警察官が特にガラが悪いのか、他の職種はもっとひどいのか知らないが、ひどい時代。
セクハラは当たり前。女性というより、他人に対してのリスペクトとまではいかなくても、礼儀やらはなかったのか。で、男が女性に対して少し思いやりでも出そうものなら、いきなりいい人認定。
今の女性警察官が「女のくせに」と、差別も理不尽な扱いもされていないことを願うばかり。
ストーリーはそれなりに面白かった。ものすごく面白かったわけじゃない。2つの事件の種明かしがいまいちだった。動機も、もっと深い意味があるのかと期待してたのとは違った。
疾風(はやて)は幸せだったのかな。もはやそう思うしかない。
Posted by ブクログ
この小説には読む人が目を離せなくなるような光景が、読者の脳裏にくっきりと浮かび上がり一気に引き込んでいくようなような、そんなワンカットのシーンがきっと待ち受けています。
たった今、想像して思い描いても感動を与えてくれるようなその瞬間を、自分はもうきっと忘れることはできないでしょう。
すごく綺麗で、そして強く健気で愛おしく、そしてとても哀しい。
そのシーンの為だけにでも読む価値があったと今でも思っている作品です。