乃南アサのレビュー一覧

  • あなた(上)

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    「あなた」と呼ぶ実体は?

    乃南アサさんの作品は登場人物の表現が豊かで、読み進めるうちにいつの間にか作品の中に引きずりこまれていきます。しかし、この作品は最初から何か違う。「あなた」と呼ぶ見えない登場人物が漂っていて、これは一体何なんだろうと。「あなた」と呼ぶ実体は一体何?単にゆるい恋愛小説ではない何かが待ち受けている予感がします。

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    2020年04月19日
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)

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    戦時下、父やきょうだいを亡くし、母親と2人で東京で暮らす二宮鈴子。彼女の14歳の誕生日、昭和20年8月15日水曜日、戦争は終わり、日本は敗戦国となった。混乱する社会の中で、母子2人のサバイバルがはじまる。

    戦争以前、女は家庭に入り、男たちを陰で支えるだけだった。しかし、敗戦国となり、多くの男手を失った日本では女たちも自立しなければならない。在日米軍の手足となる者、性を商売にする者、小料理屋、女中、キャバレー。男は女を守れなくなった日本で、奮闘する女たち。その一方で女が働くことを嫌悪する古い価値観を持つ男女もいる。

    鈴子の母は英語を知っていたおかげでアメリカ軍の慰安婦施設の通訳として働くこと

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    2020年04月12日
  • 不発弾

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    さすが乃南アサさん。短編集ですべてがいい!と思える本はなかなかないのですが、この本はどの話も面白かったです。黒かったり、ほろっとする話だったり。

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    2020年03月31日
  • 禁猟区

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    警察庁の監察を行う部署に務める婦警沼尻いくみと、監察対象になった警察官たち。

    詐欺を働き手に入れたお金をホストに使った若山。
    息子の病を直した自然食品を、暴力団に教えた結果、暴力団の悪事に手を貸すことになってしまった風祭。
    時効間近の事件を追いながら、警察内部の秘密情報をマスコミに流していた小池。
    ストーカーに追われる沼尻と、沼尻の元交際相手内野。

    実際にあっては困るけど、ありそうと思わされる話ばかり。
    警察官も人間ですから、欲に流されることはあるとは思いますが、悪を正す番人である自覚を持って欲しいと願います。

    風祭の件は、少し可哀想に感じました。

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    2020年03月11日
  • 結婚詐欺師(下)

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    さすが乃南アサさん!

    とても面白かった。上下巻一気に読めました。文章力が素晴らしいのでしょうか、飽きることが全くなく、テレビドラマか映画を観ているかのようでした。読み終わってしまったのが残念です^ - ^

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    2020年02月28日
  • 女刑事音道貴子 風の墓碑銘(下)

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    ネタバレ

    全体的な感想は上巻で書いたので、こっちでは無駄話w
    この小説の面白さは、とにかく地味な事件に、地味なキャラ二人(中年オヤジ&中年にさしかかった女性)のやりとりがのっかることで、人と人のちぐはぐなコミュニケーションを巧く描き出していることにあると思う。

    唯一、難癖付けるwならば、音道のキャラクター設定にちょっと違和感があった。
    こういうタイプの女性って、こういう時にそういう風に言うかなぁ?という場面が時々ある気がする。
    そういう意味では、著者にとって、この話での音道は、実はあくまで形式的な主人公に過ぎなかったりするのかな?なんて思った。

    とはいえ、この音道&滝沢のコンビの妙はすごくいいので。

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    2020年02月11日
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)

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    再読。

    14歳の多感な時期の女の子鈴子の目線で描かれる戦後の日本。
    負けた国の女達のそれぞれの生き方に、複雑な思いを感じながらも、大変興味深く読み直しました。

    鈴子が嫌悪感を感じてしまう母つたゑの生き方も、この時代にはやむを得ないもので、ある意味逞しく、羨ましくすら感じました。

    勝子ちゃんとの再会のシーンには、涙が止まりませんでした。
    勝子ちゃんと鈴子の会話、これこそが戦争で失われてしまっていた大切なものだったと思います。

    慰安所をテーマにしている部分で、語られることの少ない作品かもしれませんが、素晴らしい作品。
    またいつか手に取りたいと思います。

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    2020年01月15日
  • 女刑事音道貴子 鎖(下)

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    音道貴子刑事シリーズ、
    はらはらドキドキした。くじけない強い精神に
    応援した
    だいぶ前に読んでほとんど忘れてるけど
    夢中になって読んだことだけは覚えてる。

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    2020年01月12日
  • ウツボカズラの夢

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    面白くて、ついつい読み耽ってしまいました。
    ドラマ化されていたのを知りませんでした。
    もっともっと小説が読みたいです。
    未芙由の生き方、その他登場人物の生き方、とても興味深く、楽しめました!

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    2020年01月12日
  • 氷雨心中

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    長編に疲れたので、暑気払いのつもりで短編を読んだ。

    話が終わるたびに、クーラーの風にゆっくり当たれるので猛暑向きかも。
    きっと知る人ぞ知る名編なのだろう、すぐに読み終わってしまった。

    「氷雨心中」平成16年(2004年刊)

    日本工芸を材にした完成度の高い面白い短編が6つ。
    特に「青い手」は事件は表に現れないまま終わるが、読後にあ~~と思い当たる、
    そんな風に生活の裏から(物語の裏から)
    滲み出す暗い部分が、ミステリアスな香りを漂わせる。
    お線香はこうして作るのか、お香も。
    でも話はじっとり恐ろしい。

    「泥眼」日本舞踊の名手に泥眼の面を頼まれた能面作家のはなし。
    女の一途な想いが、面を作

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    2019年12月26日
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)

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    8月15日
    戦争に負けたその日からすべてが変わってしまった。

    戦後を懸命に生き抜く女たちの生活が
    14歳の鈴子を通して描かれる

    英語力を生かして進駐軍相手の通訳として働く母。
    男を利用しながら「力」を求める母に
    反発しながらも「しかたない」と無気力になる主人公

    今の80代、90代ってこんな思いをして生き抜いてきたんだなぁと改めて実感・・・

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    2019年10月17日
  • 結婚詐欺師(下)

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    ネタバレ

    どうやって終わるのか楽しみな1冊でした。
    元カノの美和子さんが登場したことによって
    とても面白くなりました。
    夫婦の会話で、仕事でイラつくダンナと家庭を顧みない
    ダンナにイラつく妻、のやりとりがリアルに感じられた。
    橋口はどうしようもない男だけど
    こういうタイプの人っているんだろうな。
    千草さんも、だまされてたのは分かってたと言ってたし
    でも止められないって、そんな風になるんだろうか。

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    2019年10月04日
  • 結婚詐欺師(上)

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    ネタバレ

    初めての作者の本。
    ホントにこんな手口でだまされるのか?って
    思ったけれど、思いつめたらこうなるんだろうか。
    カツラと眼鏡で見た目の年齢が10歳ぐらい変えれるって
    いうのも面白い。
    自分がだまされた男が冴えない禿げ頭だったら
    余計に落ち込むというのも分かる気がする。
    詐欺師って単に見つけただけじゃ捕まえられないのかな?
    どうやって捕まるのか、楽しみ。

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    2019年09月21日
  • 美麗島紀行

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    【私が出会った八十代になる男性は,植民地の子として暮らさなければならなかった少年時代を振り返って,「懐かしくて懐かしくて,悔しくて悔しくて」と遠くを見る表情で瞳を潤ませた】(文中より引用)

    その美しさから,美麗島とも称された台湾。その島と人々,そして歴史の魅力に惹かれた筆者による紀行文です。著者は,『幸福な朝食』や『凍える牙』等で知られる作家の乃南アサ。

    ほとんど何も知らないところから台湾を訪れ,そこで筆者が受けた衝撃や気づきを記録しているため,台湾を考える上での第一歩としても特にオススメできる作品。作家による紀行文ということも影響してでしょうか,流麗な文体とあいまって台湾にまつわる魅力が

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    2019年09月20日
  • 涙(上)

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    結婚式を間近に控えていた恋人が殺人容疑をかけられ、いなくなってしまった。
    テレビに映ったよく似た人を探してドヤ街に出かけるが、、、
    わずかな手かがりを頼りにお嬢様だった主人公が必死に恋人を探す物語。
    乃南アサのテンポのいい作風が進展が少ない恋人探しの旅を読みやすくさせてくれる。

    面白い。

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    2019年08月24日
  • 水曜日の凱歌(新潮文庫)

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    戦時中の従軍慰安婦問題については、韓国の執拗な追及で、しばしばマスコミに取り上げられる。
    しかし、敗戦直後の日本で、占領軍のために同じような目的のものが、政府によって組織されていたとは、寡聞にして知らなかった。
    著者は、戦後裏面史のこの事実を、14歳の少女鈴子の眼を通して鮮やかに描き出した。悲惨な現実ではあるが、彼女の眼を通すことによって、微妙なバランスを保っている。
    しかも、ここに登場する女性たちは、時代に翻弄され、国家にさらに男たちにも裏切られながらも、絶望を突き抜けたところに立って爽快でさえある。
    題名『凱歌』に象徴されるように、心地よい読後感となっている。
    登場人物の一人ミドリは鈴子に

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    2019年07月16日
  • 晩鐘〈上〉 新装版

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    「風紋」では被害者の家族。こちらは加害者の家族に焦点を向けた作品。主人公は加害者の息子、当時幼稚園位だった子が小学校高学年になっている。私学の教師の妻だった加害者の妻はやはり落ちるところまで落ちてしまって、子供を実家に預けっぱなし。この息子は自分の父親については知らない。化粧が厚い時々くる“おばさん”が母親とも知らない。ひょんなことから自分の父親が人殺しと知ってしまう。その後、自分の妹を圧迫死させる。蛙の子は蛙なのか…連行される時、影で父親が涙を流すが、犯した摘みは計り知れない。浅はかな行動で全てが狂う

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    2019年04月20日
  • 幸福な朝食

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    私は乃南アサの作品はかなり読んでる方だと思うが、処女作のこの作品が一番の傑作だと思う。なんというか、キモさがいい。ちょっと不思議な魅力のある作品。

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    2018年11月19日
  • ボクの町

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    インサイド警察、というよりも、主人公の高木聖大が悩みながら、もがきながら、素敵なおまわりさんに近づいていく風景が見えるような、そんな作品でした。続編を先に読んでしまっていたので、聖大がちゃんとしたおまわりさんになっていくことはわかっていたけれど、どんなふうに変わっていくのか?というところがとても面白読めました。

    乃南アサさんももうすっかり僕のお気に入りの作家さんです。読みたいものが続々と出てきて楽しい読書の日々です。

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    2018年10月24日
  • 地のはてから(下)

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    ネタバレ

    「ニサッタニサッタ」の前日譚。エエ味出してたあのとわさんが主人公。

    大正から戦前戦中戦後といえば、戦争で悲惨なことになったとはいえ、文明国家だと思っていたの本。俺らの祖父祖母の時代だから地続きの世界と思っていたが、北海道開拓史においてはl、こうまで俺の知らない過酷な世界だったとは。

    それにしても、主人公とわ、そしてその母親のたくましさ、しぶとさが素晴らしい。物語の中で何度も何度もしつこいくらいに悲惨な目にあう、とわさんや母親。それでも彼女らは生き延びること、子供や家族をなんとしてでも養うこと、それだけを念頭に「今日を生き延びる、今日をやり過ごす」ことに集中する。そして何度も何度も地べたを這

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    2018年08月30日