あらすじ
酒蔵へ出稼ぎに来た青年は、昔ここで働いていた祖父が女性を案内中、発酵タンクに落ち、共に事故死したことを知る。そして彼もまた恋人を連れて酒蔵を案内すると……「氷雨心中」。能面、線香、染物、提灯など、静かに自分の技を磨き続ける職人たち。だが、孤独な世界ゆえに、周囲の人々の愛憎も肥大してゆく。怨念や殺意を巧みに織り込み、美しくも哀しい人間模様を描く6つの物語。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
白抜きみたいな小説。
そのものは描かれない。
輪郭だけ見えて、目鼻立ちは分からない。
こんな表現の仕方があるのか…!と新鮮で面白かった。
目鼻立ちの部分を想像して、語り合えたら楽しそうだな。
Posted by ブクログ
長編に疲れたので、暑気払いのつもりで短編を読んだ。
話が終わるたびに、クーラーの風にゆっくり当たれるので猛暑向きかも。
きっと知る人ぞ知る名編なのだろう、すぐに読み終わってしまった。
「氷雨心中」平成16年(2004年刊)
日本工芸を材にした完成度の高い面白い短編が6つ。
特に「青い手」は事件は表に現れないまま終わるが、読後にあ~~と思い当たる、
そんな風に生活の裏から(物語の裏から)
滲み出す暗い部分が、ミステリアスな香りを漂わせる。
お線香はこうして作るのか、お香も。
でも話はじっとり恐ろしい。
「泥眼」日本舞踊の名手に泥眼の面を頼まれた能面作家のはなし。
女の一途な想いが、面を作ることが二人の執念のようになって迫ってくる。
「夜離れ」平成17年(2005年刊)
6編、みな女心の、これも妄執というか、こんな女にとりつかれたら男は恐ろしいだろうし、
女は苦しいだろうというようなストーリー。
ありそうな話かもしれない。
短くて、それぞれ250ベージから300くらいですぐに読める。
肩のこる長い話よりも、読後は充実しいている。
Posted by ブクログ
高校の時に読んで、再読。
「青い手」「氷雨心中」「おし津提灯」は覚えていたのだがあとは読むうちに思い出すという感じだった。
話は全て好きだが最後の「おし津提灯」で全てかっさらわれてしまうため、他の作品がうろ覚えになってしまう。自分だけかな?
Posted by ブクログ
良かったです。
この本を友人に勧めたことがあるのですが
「暗っ」と言われてしまいました…が
これって暗いのか…
暗いと言うより情念のような
強さと恐ろしさを感じないかな…。
短編ですが一つ一つ確かな仕上がりの本だと思います。
Posted by ブクログ
6つの短編。線香、着物の染め、日本酒造り、金細工、能面、提灯、そんな和の職人が主人公。伝統工芸の場で、さらっとおこる殺人事件。事件について、くどくどした話は無く、後で気付くような。
Posted by ブクログ
職人や伝統工芸をテーマにした、これはブラックショートというんでしょうね。短編が6つありました。線香職人、染工芸、酒造、歯科技工(ジュエリーも)、能面職人、提灯職人、外側からしか知らないその職人さんの仕事ぶりも興味深く読める。そしてそれぞれに、ぞっとするオチが!わかってしまうオチもあったけどそれはそれとして。個人的には能面職人がある踊り手の注文のために何度も何度も何度もうち直しした「泥眼」(嫉妬や怒りの情念が正に正気を失わせようとしている瞬間の女の顔。女が執念の鬼、怨霊の化身となる寸前の、最後の人間の表情。)に引き込まれました。一番アサさんらしいと思いました。
Posted by ブクログ
いずれも「職人」が主人公のミステリー短編集。
かなり綿密に取材をされたんだろうな〜と想像させる職人の世界に引き込まれたかと思いきや、最後はどれも背筋がひやっとする結末。
ちょっと先が読めるところもあったけど、安定した面白さでした。
Posted by ブクログ
線香、染物、酒造、能面など日本の伝統工芸の世界を背景としたミステリー。
閉ざされた職人の世界と言うか・・・なじみのない世界なので、余計に怖さが増します。
何回も読むことで、隠された恐怖に気付きます。
「青い手」と「泥眼」がおすすめ。
Posted by ブクログ
乃南アサお得意の人間の情念が絡んだちょっぴり怖い短編集。どの話にも伝統工芸の職人達が登場するのがユニークで興味深かったけれど、途中まで読むとオチがわかってしまう話が多かったのが残念。
Posted by ブクログ
乃南作品の評価が一般的にどうかは知らないが、
感覚的には恩田陸や辻村深月などよりも低いように思う。
めちゃめちゃ個人感覚でいうとその理由は、
あまりに半径3メートルの設定にあることだからではないかと思っている。
常にその辺にいそうな女性の物語。
あるいは家族内のストーリー。
ダイナミズムにかける、というのかもうひとつ広がらないというのか。
今回のテーマは、様々な珍しい職業の人にスポットをあて、
ならではのしっとりした死をテーマとしている。
その意味では、設定を3メートル以上に広げたとも言えるのだが、
ただし物語ごとに、展開はやはり、主人公を中心としたいわば二親等内の話。
設定が面白いんだけど、背伸びの分に深みがあるというよりやはりノーマル。
単に自分にとっては、知らない世界をのぞき見たのみ。
そこからのもうひとつの伸びまでは感じられず。
というわけでこの本は、残さないことに決定。
Posted by ブクログ
日本古来の伝統文化を感じさせるミステリー短編集。
なんとなく先が読めてしまうものもあったけど、どれも漂う雰囲気がどこかもの哀しくてゾクゾクする。
どの話も様々な職人の技術や工程が垣間見れて、面白かった。線香がなかなか興味深い。
「青い手」と予想通りな展開だった「おし津提灯」が私好み。