乃南アサのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
かのんは家裁調査官。少年(男の子だけではなく女の子も含む)事件の裁判前の調査を行う。主に読む、聴く、書くことが仕事だ。3年に一回異動があり、今は福岡家裁北九州支部に勤めている。彼の栗林は東京で動物園に勤めていて、今はゴリラででいっぱいだ。
そしてかのんも手一杯だ。万引きで捕まった子は母親と本人との面接の後、母親に対する暴行事件で捕まるし、自転車泥棒の子はなにやら家庭が複雑だ。詐欺事件の受け子として捕まった子からは変な臭いがする。安定したかに見えた子は、トンズラする。いくつもの事件を抱えているので、突発的な出来事に速やかに対応できない。
女子高生がウリをするだけでなく、友達まで勧誘していた。おかけで同じ学園から7人もの逮捕者が出た。しかも彼女は妊娠している。
ある日暴走族に出逢った。あの子達もそのうち回ってくるんだろうなぁと思ったら、予想は当たったのだが、両親が日本語は喋れないし書けないときた。父親と母親の、スペイン語とタガログ語の通訳を探して、面談にこぎつけるだけで大変だった。
ある日いきなり弟が北九州までやってきた。なぜやってきたのか、いつまでいるのか、かのんは聞きたかったが、子供ではないのだからと思うしかない。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ美しさに恵まれた女の話。平凡に生まれていればこんな壊れ方をしなかっただろう。
平成8年に文庫になっているが、その年に直木賞を受賞しているので、その関係でデビュー作が文庫になったのだろう。
その後の乃南さんの作品はどれも余り外れがなく面白い。
これは題名もあまりどぎつくなく読みやすかった。
沼田志穂子は美しいといわれ、自分でも容貌には十分自信を持っていた。将来は女優になると言い切り、高校卒業と同時に上京して劇団に入った。
ところが運の悪いことに、彼女にそっくりな柳沢マリ子という女優が一年先にデビューしてしまっていた。
志穂子のスタートはマリ子のそっくりさんから始まり、何をしてもどこに行ってもマリ子の影から出ることは出来なかった。
プライドを捨てず、マリ子に負けたくないと言う信念で、次々に劇団を代わり、チャンスを探すが、彼女に機会は巡ってこなかった。
30半ばになり、業界で暮らしているうちに何人かの男とも付き合ってきたが、今はマリオネットを操る人形使いになっていた。
人形遣いとして経験も積み、腕は認められてきたが、やはり夢は捨てきれないでいた。
その頃、彼女に憧れる後輩の弓子と、6畳と小さな台所のあるアパートに住んでいた、貧しい暮らしの中で、家事が不得手な志穂子は、献身的な弓子の手料理をさほどありがたくも感じないでいた。
志穂子が付き合っていた男の子供を妊娠した弓子に激怒して、アパートを飛び出し、帰ってくると由美子が出血し、その血の海の中で死んでいるのに気がついた。
志穂子はまた一人になった。人を寄せ付けない雰囲気はますます硬くなり年相応な僅かな衰えが見え始める。そこにまた彼女にあこがれる広美が現れる。
志穂子は編成替えで新しい人形劇が始まることを知る、主役の人形遣いになるためにディレクターと関係を持ち採用される。
そして、彼女の使う人形のアテレコをする新進俳優、良助と知り合う。
良助が大物女優になったマリ子に近づいてくるのを知り、ある計画を思いつく。
清純派女優として守られたきたマリ子を引き下ろす志穂子の計画は成功して、新進俳優だった良助にはチャンスがきた。
だが志穂子に運が向いて来る訳もなく、良助にも疎まれるようになる。
良助は健康的な広美に惹かれ、二人で結婚の約束をする。
志穂子は仕事は続けているものの、精神が壊れていく。
弓子のように子供を生みたい……。
そして彼女は妊娠する。
部屋は子供を迎える準備が始まり、すっかりカラフルな幼児部屋に変身する。
子供が生まれる前に仕事の整理をし、仲間に妊娠を告げて祝福され、幸せだった。
元来食の細かった志穂子は料理もし、よく食べて、育児書を読みお腹の子に話しかけ、ミカという人形と出産の日を待っていた。
一方、父親は自分ではないだろうか。
付き合いのあった男たちは穏やかではない。
良助と飲んでいて、マリ子は志穂子の姦計にはまったことに気がつく。ついに良助もマリ子にひざまずき取りすがり真相を話してしまう。
しかし、そのころ、いつものように志穂子はお腹の子と、戻ってくる弓子を待っていた。
デビュー作だが面白い。さすがに女性の心理が人間臭く、うまく書かれている。
志穂子は容貌に恵まれただけに、いつまでも夢を捨てきれない気持ちがいつか、歪んでいく。
うまくいけば、いろいろな要素が絡んでいるので飛び切りの作品になっていた。でも残念ながら、シーンの切り替えが説明不足で、志穂子の心の揺れに緊迫感が足りない。
壊れていく心の流れが後半はメインになり、その原因も理由もわかるし面白いが、読むとなると少し物足りない。
なぜか肝心の部分が薄味で、残念だった。サイコっぽい。ホラーかな、とどちらとも言えない味があるが。
と言いながらも、この作品ストーリーは面白いので読んでよかったとは思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレすごかった、、心理描写が凄くて飲み込まれて長いのに全然飽きない(汗)
先が気になるし、今読んで居る所が常に面白いし、、どういう流れになっていくのか、、
真裕子は苦しんで苦しんだ末に建部と幸せになれて本当に良かった。余りにも苦しみを見つめて向き合って周りを憎んで、、それは建部の言う通り、真裕子が余りにも真っ直ぐだ正直で、、そして逃げずに向き合う強さがあったから、、
心が血を流す苦しさ辛さ孤独、、だけど俊平が良い子だったからすっかり癒され、、そして建部はこんなにも真裕子を理解し大切に思い守ろうとしている、、結局これ以上の幸せは無いよね〜
結局人生って先は分からないどうなっていくのかは、、
そして真裕子は救われた、、一つの結末。
だけど大輔の方は、、余りにも辛いね、、、
彼も凄く苦しんできた、、まだ幼いのに普通に愛される事を心から望んでいたんだと思う、、こちらは壮絶、、
現実から逃げて受け入れて、、自分を失ってしまったね、、悲しい結末、、
まだまだ人生は続くのにこれで良かった?自分ま終わらせる事が出来る?
本当に苦しむ時が始まったばかり、、ぁぁ続きが知りたい〜
まだまだ長くても良いから、こや物語を終わらせないで乃南さん。
後を引く、、長い長い話しだったのに、、凄いね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ冬休みに入り、一気に読みました。
開拓者、ってかっこいい響きがあるけどとんでもない。
序盤北へ向かう電車の下りの場面を読むだけでも不安で胸がいっぱいになった。
その後も思うようにいかない壮絶で厳しい暮らしの連続に胸が詰まった。
自分の意志では人生をなんとかできない女の人たちが沢山出てきた。男性ももちろん然りだけど、レベルが違う。
とわは賢い女子、不遇かもしれないが運もよかった。
とわの母親が歯を食いしばって育てた姿に思いを馳せる。そう考えると今日本はいい時代。物価は高いけど、でもやる気があれば教育を受けられる。
後編の隣に住んでいたタマヨさんとの会話のシーン、立場ほ違うけど必死に生きてきた二人が心を通わせるシーンには胸が熱くなる。
戦前戦後の北海道の様子がとてもよくわかった。
乃南アサさんの傑作だと思う。
-
Posted by ブクログ
タイトルに惹かれて買ってみたら、まさかの平成初期作品。
30年以上前の今とは異なる日常風景もありながら、女性たちの恨みや憎しみは、今でもあるよねと納得できてしまう変わり映えのなさ。
いつの時代も女性3人集まれば、何かしらトラブルが起きてしまうものだなとしみじみ感じた。
元アイドルの阿季子は、こういう女性いるよねって嫌悪されがちな典型的なタイプ。
自分が良ければなんでも思ったことを口から出しちゃえる軽く毒を吐ける人間である。
毒が蓄積されていった3人の殺意はない憎悪が凄まじかった。
まさに、毒をもって毒を制す。
殺意はないけど、痛い目に見てほしい。
でも、本人が痛い目だと思ってないと意味ないよね。
なんとも言えない現実的なモヤモヤが残った。 -
「凍える牙」について
この乃南アサさんの「凍える牙」は、その他の強力な候補を破り、第115回直木賞を受賞した作品ですね。
30代で離婚歴のある音道貴子。離婚の原因は夫の浮気。そして、今回彼女と一緒に組むことになったのは、かつて女房に逃げられた経験のある中年刑事の滝沢。
男社会の中で認められずに孤軍奮闘する女刑事と、女刑事の存在を認めたくない叩き上げの頑固者の刑事の構図ですね。
この2人が、渋々ながらも一緒に捜査活動を続けるうちに、徐々にお互いを認め合っていくことに-----というのは、言ってみればありがちなパターンなのですが、しかし、なかなか読ませてくれますね。
しかし、滝沢の愛想がないのは、実際には貴子のことが嫌いというよりも、どう扱っていいのか分からないからではないでしょうか。
そして面倒くさいからというのもあるのでしょう。
そして、貴子の方も決して自分の弱みを見せようとはせず、だからといって頑張っている姿を主張したくもないという頑固さから、必要以上に愛想がありません。
女刑事としては、柴田よしきさんの「RIKO」シリーズに登場する緑子の方が迫力があると思うのですが、この貴子の無表情な感じもいいですね。
この物語では、貴子と滝沢の視点が交互に描かれ、この2人が実は似たもの同士だったということが、次第に分かってきます。
無理に相手のことを理解しようとはせず、単なる傷のなめあいの関係にはならないところがいいですね。
ただ、事件の方は、時限発火装置と犬の咬傷の両面から捜査されることになるのですが、これがどうも中途半端な印象を受けました。
せっかくの時限発火装置という設定が生かしきれていないような気がします。
貴子と疾風のシーンがとてもいいのですから、初めから時限発火装置など使わず、そちらに的を絞った方が良かったのではないかと思いました。
それにしても、貴子と疾風の魂の触れ合いの描写には、思わず目頭が熱くなりました。