乃南アサのレビュー一覧
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年の瀬、萄子(とうこ)の家に、結婚して家を出た娘の真希がひょっこり帰って来ます。軽い調子で話していますが、夫に浮気され、実は相当傷ついているようです。結局、真希は3ヶ月後に離婚しますが、友達に誘われていった沖縄から、立ち直りを示唆する明るい便りが届き、萄子はほっとします。
ただ、安堵する一方で、萄子は昔のことを思い出してしまいます。人との別れ、沖縄、これらは萄子には、できれば封印しておきたい凄絶な経験と結びついていました。
「ごめん、もう、会えない」
東京オリンピックの前日、婚約者であり、刑事の奥田勝は電話でそう告げて失踪。その後、奥田の先輩刑事の娘が惨殺死体で発見されます。萄子は -
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ネタバレ震災のことが書かれていることは事前にネタバレしていたが、ここまでリアルとは思わなかった。
それは、作者自身が2011年の3月11日、取材のために仙台に足を運んでいたことからくるもので、あそこで芭子が経験したことは、ほぼ作者の体験談だという。
あの日、東京で地震に遭った自分ですらそれなりには大変な目に遭い、辛い思いや多少のトラウマもあったが、仙台で被災して、でも向こうに生活の拠点があるわけではない作者と、そして芭子はどれほどのものを抱えているのだろうか。
あの地震が、全ての人々の人生を大きく変えてしまったと書かれていたが、人生だけではなく、この小説の結末さえもあの地震が変えてしまったような気がし -
Posted by ブクログ
前作とは雰囲気が打って変わって、今まで通りだと思って読んでいたらびっくり。かなり衝撃のラスト。
やっぱりわたしは、ふたりにはずっとこの距離感を保って、お互いに足りないところを補い合って生きていってほしかった。けど、今までもチラホラと芭子の綾香に対する意識と、綾香の芭子に対する意識の違いっていうものが見え隠れしてきたし、その違いがついにここまで来てしまったのも不思議じゃない。このラストを迎えるための伏線はあったんだよなあ。
芭子が東日本大震災を被災するシーンが生々しく、被災経験のないわたしが言うのもおかしいが、なんというか本物の、3.11の空気感があったように思えた。目の前で起きてるのになんだか -
Posted by ブクログ
ぶっちゃけた話、売れている作家とは言い難い乃南アサさんだが、知る人ぞ知る短編の名手なのである。しかも、後味が悪い…。本書は、過去の単行本から傑作短編を選りすぐった再編集版であり、男女関係のもつれを描いた作品で統一されている。
唯一の初収録作品「くらわんか」。最初はお互い、割り切った関係のつもりが、徐々に深入りし…という話は、現実にも掃いて捨てるほどありそうだ。こんな器用な二重生活は、僕には無理だな…。初読時に怖えぇぇぇぇぇ! と思った「祝辞」は、再読してもやっぱり怖えぇぇぇぇぇ! この後、2人はどうなったんでしょうかねえ…。
「留守番電話」。固定電話を引かない人も多い現在、時代を感じ