乃南アサのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ*かつての恋人の故郷でその不在を想うキャリア・ウーマン。寒い土地への転居を境に狂い出す「じゃぱゆきさん」。整形して若い男と結婚し、離別した娘を従妹として引き取ろうとする母。夫の子を産むと決めた女を尋ねる女。次々と夫が死ぬ魔性の女。彼女たちはさまざまに熟れていく。女性の心理描写の名手による短編を精選し、単行本未収録作品を追加したベスト・オブ・ベスト第二弾*
これは…ホラー?ホラーなの?!
と言うくらい、怖い。出て来る女性陣が強者過ぎる…
どの作品も、バラエティ豊かに女の業をまざまざと見せ付けてくれます。
そして、一見淡々とした情景が、次の瞬間にくるりと変わる様が本当にお見事!
後味はよろし -
Posted by ブクログ
ネタバレ*色恋をめぐる狂気は、その女たちを少しずつ蝕み、少しずつ壊していった……。ある女は大阪に引っ越してまで愛人を追いかけ、またある女は親友の婚約者を欲しがる。職人の夫の浮気を疑った妻は夫の作る提灯に火を仕込み、OLは見る間に垢抜けた同僚への嫉妬に狂う……。サスペンス・ミステリーの名手の短編を、単行本未収録作品を加えて精選したベスト・オブ・ベスト第一弾!*
巧い。巧過ぎる。
今回のテーマは「若い女性の狂気」編だそうですが、欲望・妬み・焦燥・略奪・復讐等々、女性の性や業がこれでもかと詰め込まれています。そのリアルな描写、一瞬で反転する物語たち・・・お見事としか言えません。
読むごとに背筋がぞわぞわ -
Posted by ブクログ
中学生だか高校生だかで読んだ時もそれなりに泣いたような記憶があるけど、改めて、芭子ちゃんが道を違えた時の年齢になって読み返すと、嗚咽するほど泣いた。
家族にも縁を切られ、唯一の社会との繋がりであった仕事も辞めた芭子も、「独り」ではなくて。
お向かいのおじいちゃん、おばあちゃんが仕事を辞めたことに気がつき、気にかけてくれていたこと。
絶縁を申し出された弟から、これからの芭子の人生を想う手紙が送られたこと。
もちろんずっと支え合ってきた綾香の存在も、全てが温かくて、苦しくて。
ひとりでは生きられないことが、時に苦しくもあるけれど、やっぱり救いなんだなあと改めて感じた。
こんなにも芭子に共 -
Posted by ブクログ
ネタバレ乃南アサ 7作品目。
太平洋戦争末期から終戦後1年、RAAに纏わるお母様・つたゑの娘・鈴子から見た忘備録。
「もう懲り懲りなの」お母さま・つたゑの怨念が、したたかに響く。時代に従い、親に従い、夫に従い、国に従ってきた。その結果、手にしたものは、失ったものは、あまりにも残酷だ。それは、日本中のすべての女性も同じ。ぶつける先のない怒りと悲しみと絶望。
倖いにも、変われるチャンスがあったお母さまは、その時代を切り抜けていく。
「日本に無くてアメリカにあったもの」「男にあって、女にないもの」それに拘って、強く生き変わってゆくお母さまの姿は、逞しい。娘の目を除いて。
「戦争なんか、するからだよ」「