伊坂幸太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ阿部和重さんと伊坂幸太郎さんの合作の小説です。2人で思ったよりきちんと文書や話を推敲しあって作った長編小説のようです。
相葉時之はかつて少年野球のピッチャーを務めていた男でした。性格は行動力がある反面、あまり深くものごとを考えないため、いつも失敗してしまいます。後輩の女性を助けようとした結果、代わりに多額の借金を背負うことになります。この借金返済のため、心の拠り所だった実家を母から売却されてしまい、相葉は家を買い戻すための資金を必死で探していました。
井ノ原悠は、相葉とバッテリーを組んでいたキャッチャーで、常識な社会人です。小さい子供がいますが、原因不明の皮膚病院を患い治療費が嵩み、借金をしてしまいます。仕事はオフィスにあるコピー機の販売や保守点検を行っています。しかし毎月の給料ではやっていけないので、営業で売り込んだコピー機から会議資料・機密資料などのスキャン結果を自分のパソコンに転送をさせるプログラムを組んで、情報屋としてお金を稼いでいました。
桃沢瞳は、作品冒頭に出てくる女性です。「ガイノイド脂肪に注目しろ」と言って、色仕掛けで情報を集めています。ただ、書き出しのインパクトは強く、一気に彼女の印象が頭に叩き込まれます。彼女の目的は父親の無念を晴らし、村上病の謎を解くことです。
ある日相葉は、「一儲けできる」と思う取引のため、ホテルでの待ち合わせに向かいます。しかし、別の部屋でのロシア人の取引と、関係者が入れ違ってしまいます。状況を誤解したロシア陣たちと乱闘になりますが、ホテルのガードマンである同級生の助けで辛うじて逃げ出します。その際、水を汲んできた髭面男のスマホを奪うことに成功します。相葉はその後映画館に潜り込みますが、その際に、偶然旧友の井ノ原に出会います。「金が欲しくないか?」と井ノ原に問いかけますが、面倒事に巻き込まれるのを嫌い断られます。しかし、結局は事の成り行きで井ノ原ひ強制的に関与してしまうことになります。映画館には、髭面男が追いかけてきますが、さらに彼を殺したロシア人のメンターに今度は追われることになります。
相葉がスマートフォンを持っていることが明らかになると、冷酷で異常にこの銀髪の男メンターが、執拗に相葉と井ノ原を追い始めます。この男は“テロリスト”のような存在として描かれ、死体を重ねながら、2人は追われるようになります。
相葉と井ノ原は、奪ったスマホの情報を辿る中で、「ゴシキヌマ」という言葉と出会います。これは蔵王山中にある火口湖「御釜」のことであり、その地元ではかつてウイルス性の感染症「村上病」が流行し、立入禁止区域となっていました。またその地域には、太平洋戦争末期にB29爆撃機が墜落したという痕跡があります。物語の冒頭で髭面男の汲んで来た水も御釜の水でした。
さらに物語が進む中で、二人は公開直前に上映中止となった幻の映画『鳴神戦隊サンダーボルト』の存在を知ります。この映画は蔵王の御釜を舞台に撮影されたものですが、中止の理由は公にされなかったため、館長が所持していたコピーを二人は入手し鑑賞します。その映像には、五色沼で魚が生きて跳ねている場面が写っており、それが原因で公開中止になったのだと、2人は気づきます。
やがて、2人は桃沢瞳と合流します。桃沢は、村上病に関する情報を集めていたため、情報屋の井ノ原に接近していたためです。しかし、桃沢はメンターに攫われてしまいます。メンターが2人に要求したことは一つでした。五色沼の水を汲んでくること。
相葉と井ノ原は、映画のサンダーボルトの主演をしていた赤木駿に出会い、五色沼やB29に関する情報を仕入れます。特殊な五色沼の水から、旧日本軍は化学兵器を作ろうとしていたこと、B29はそれを察知していたアメリカ軍が派遣した爆破部隊であったことを教えてもらいます。
桃沢を助けるため、2人は御釜に侵入し、水を汲んできます。そして、待ち合わせ場所に現れたメンターに桃とひきかえに水を渡します。その場でメンターは水から化学兵器を作ります。彼は日本の破滅を願うテロリストでした。2人は共同してメンターを倒しますが、メンターはその場で化学兵器に時限爆弾をつけて作動させてしまいます。都市部での爆破をさけるため、2人はそれを仙台市内の銀行の金庫でそれを爆破させます。
感謝した資産家より、2人は借金を帳消しにしてもらます。また相葉は桃沢と付き合い始めます。
非常に話のあらすじは面白いです。そのうち、映画化とかされそう。ただ、共著であるせいか、少しいつもの伊坂幸太郎さんの作品より読みづらい気がします。
でも、それを差し引いても面白いですね。
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Posted by ブクログ
ネタバレ伊坂幸太郎25周年特別版のカバーに惹かれて購入
合作ということでどうかなって思ったけど、買って正解だった。
勢いだけ良くていつも肝心なところで選択を間違える相葉と、真面目っぽいけどなんだかんだと相葉に付き合う井ノ原のコンビがとても良かった。
特に相葉の、自分のせいで他人を不幸にしてしまったことを内心では悔やみながらも強がりが出て、また自己嫌悪するという人間臭いところがかなり好きだった。ちょこちょこ「ちゃんと考えて動きなよ…」って思うところもあったけど、そこも含めて相葉っていう人間って感じで、最終的には好きになってた。
話的には、テロの話は片付いた実感がない感じで呆気なく終わるし、借金もなんかいつの間にか無くなってるしでちょっと消化不良な感じもある。
でも最後の、12年前の骨折事件のその後が語られるところはとても良かった。相葉は井ノ原と再会して、12年前の後日談を知ったことで救われて(奥さんも手に入れて)、井ノ原は相葉と再会してあり得ない経験をしたことで息子の治療も思い切れた。相葉と井ノ原それぞれの人生の逆転の話だったのかな。
調べたら、楽天の試合は実際3点差から見事逆転勝利したとのことだった。
野球には逆転があるし、人生にもあるのかもしれない。
最後の書き下ろし短編もめちゃくちゃ良かった。赤木さんかなり好き。 -
Posted by ブクログ
タイトルに騙された!SFじゃないのか、、、
いや、デストピアものの近未来的なSFだった。
舞台は、平和警察という公安と特高を混ぜて、そこから倫理観や道徳観を差し引いた様な組織が跋扈する世界。彼らにかかれば、どんな無実な人間も危険人物にされてしまう。そして、あるのは処刑という未来のみ。そんな世界で唯一の対抗するツナギのヒーローと平和警察の攻防を描いた話。
いやー、これは伊坂作品のなかでも異色じゃない?
いつものユーモラスな感じは身を潜め、漂う暗鬱な空気感。平和警察に睨まれたら本当に終わってしまうという恐怖感が、もし自分や周りの人がそうなってしまったらどうしようと怯えながら読む事ができた。
タイトルの回収も、そういう意味か!?と思うタイミングで出てきたなぁ。
初期でも魔王とかはある意味ディストピアだし、こういう伊坂ワールドもたまらない!!