大きく2つの物語で構成されており、この交わることの無かった2つの物語が、終盤で繋がり、温かな奇跡が起こる…
主人公の心也と、心也が幼い頃に他界した母、男手一つで心也を愛情たっぷりに育てた父…
生前の「母の夢と願い」が父から息子へ受け継がれており、母が自慢の息子と評したとおり、心也がいつだって他人
...続きを読むの気持ちを慮ってやれるような優しさを携えたままの大人になっていることが何より嬉しかった。
やっぱり格好いい父の背中をみて育った息子は格好いいのだ。
ラストの奇跡には、通称「ひま部」の部長と先輩のやりとりや、桜の木や四つ葉のクローバー、ブルートパーズに思い出の焼きうどんまで登場して、次々押し寄せる波の如く感涙してしまった。また、阿久津さんの正体に驚きと喜びが押し寄せる。
はぐれ者のライオンのような石村のその後が気になったが、振り返ればあれっきりになってしまった…という子供の頃の記憶はよくある。ある意味とてもリアリティがあり、それもまた作者の意図するところなのだろう。
「こども食堂」をメインにした物語と思っていたが、良い意味で裏切られた。森沢明夫さんの作品は、いつも緻密に考えられた主人公の個性を丁寧な心理描写で描いていて、大切なことを真っ直ぐに伝えてくれる。その伝え方が、絶妙な匙加減で心の奥深くに温かく響いて蓄えられる。私にとっては癒しのセラピーみたいなものだ。
読後はとても心地良く明るい気持ちになれる。
たいせつな人へお勧めしたい作品