市塔承のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレこういう構成の小説は初めて読んだ。最初に登場したエリメという人物が読んでいる本があり、その本の登場人物が本を読み、またその本の人物が本を読んだり、別の本を見つけたり‥‥。毎日途中、途中まで読んでいくと今読んでいるページの【本】はどの人物が読んでいる【本】何だっけ?と分からなくなって、パラパラと前のページを毎回めくりながら読み進めた。
序章がこんな感じだったのだが、1章からが怒涛の展開だった。宝探しの物語が歴史探求の物語へ。それから自身と身内の罪の話へと変わって惹きつけられた。
宗教も化学もエネルギー資源も、それ自体が悪いのではなく、それを利用しようとする人間が悪なのであると。深く刺さった。
これは物語だけの話ではなく、現実でも起こっていることだから。
残念だったのが、罪を犯した父親の、彼自身の言葉やその後が書かれていなかったこと。エリメが記憶を取り戻し、父親が罪について問い詰められて、どんな言葉を発したのか。殺人者としてどんな罰を負ったのか。それについての記載がなく非常に残念。
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Posted by ブクログ
架空の国を舞台にした歴史ファンタジーであり、ミステリー要素もある作品。
大学院で化学の研究に勤しむ主人公エリメは、ある日強い精神的ショックで意識を失ってしまった。数ヶ月の昏睡を経て自宅で目を覚ますが、倒れた頃の記憶を失っている。どうやら恋人であったジアネの交通事故死が関わっているようだが…。
健康を回復し大学に戻るにあたり、旅の道連れに自宅から一冊の本を持っていくことにした。その本『女王陛下に捧ぐ、王家の宝の在処』には予想もしていなかったこの国の過去が書かれていた…
第66回メフィスト賞受賞作、著者は若干二十歳の大学生、「5つの作中作が入れ子構造になった」作品、そして美しい装丁に惹かれて手に取った。
この入れ子構造になった作品をしっかり読み込み、そこに記された「宝の在処」を主人公と共に追う中で物語の真実に到達する仕掛けだ。
本作の舞台は拝月教という宗教が強い政治的支配力を持った国である。本来、人々を救うはずの宗教がエリメのいる時代でも、作中作の中でも延々と戦争と流血を繰り返している。歴史の中でそれに抗う人は過去来たくさんいたであろう。しかし、エリメの生きる現代でも拝月教は健在で相も変わらず戦争を仕掛けているという…
なぜこの宗教は生き延びたのか?歴史は繰り返すのか?作中作が在処を記したという宝とは何か?それを知った時、読者は、主人公は何を思うのか…。
宗教と科学と政治。いずれも人々の生活をより良くするために行われるもののはずである。それなのに何故戦争は繰り返されるのか?
折しもウクライナやイランで、AIやドローンが戦争兵器として使われる現在、著者の問題意識はここにあるのだろう。そういう意味で、架空の世界のことでありながらとても現代的なテーマである。
作品としては純粋に話を追う面白さはしっかり備えている。作中作は5つと言えどもそれらはマトリョーシカのようにシンプルに一つの作品の中に内包されているし順番通りに登場するので筋も複雑ではない(若干そこが物足りない部分でもある。笑)
惜しむらくは、合計6つの作品(5つの作中作+エリメの物語)で構成されているにも関わらず、それらの作品の文体や語り口にそこまで変化を感じない点。それぞれ著者が違う文体とは思わせられなかった。その筆力はこれからに期待。
また、読者が迷子にならないように、途中でここまでの話を要約する人物が現れたりと、とても親切な設計だがそれが読む楽しみを奪ってしまっている面はある(編集者の意見で挿入されたのだろうか)
あと、個人的には作品の冒頭で予想した終盤の展開が当たってしまったのも物足りなさを感じた所以。
とは言え、十分に楽しめた。次回作にも期待である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレメフィストを追って7作目。
作中作という事前情報のおかげで、万全を期し、挑むことができた。
個人的な感想として、作中作は過去回想に近い役割を担っているように感じる。間に割って入ったり、作中作に題名をつけて区切りを明白にしたりしているので、過去回想より作中作の方が構造の分かりやすくなった印象。
また作中作は物語の展開の役にもなっている。歯車みたいな物で、ひとつが動くと外側の作品も動く感じです。
もっと言うなら、展開は別の部屋に入る感覚。玄関からリビングに行くイメージだけど、作中作はリビングから石造りの地下室に埋もれていく。それがこの作品の書き手と読み手を困難にしていると思う。紙とペンで整理しないとちょっと辛い。
さて、作品の構造の感想だったけど、物語の感想です。
別の作品に例えるなら『チ。−地球の運動について-』に似てる。世界観や主軸が似てるんだと思います。サカナクションさんの『怪獣』聴きながら読むとテンションぶち上がりますよ。
昔の西洋風?(まだこの辺は明るくない)であり、女王陛下の宝の在処を探す物語。そして取り巻く利己的な宗教。
チ。も15世紀ポーランドがモチーフと言われていて、異端審問がある世界。
どちらも異端者は裁かれてしまいますね。
では、この作品はチ。の二番煎じなのか?
そんな訳は勿論なくて、受け継がれる物(謎)が本作では終盤まで不明瞭である。バレるというハラハラ感はチ。と比べてあまりない。異端審問官という具体的な敵がいない。いても拝月教会という集団ぐらい。
挙げたらキリがないぐらい、この作品には宗教と人間が絡んだ歴史。そしてハッピーエンドで終わらないあたり、結局人間界にはヒエラルキーがあってしかるものという意図を感じます。
最高司祭の『理想論だけではいけない』というのは、エゴイズムではありながら生々しい歴史を踏襲したセリフかもしれませんね。