森博嗣のレビュー一覧
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『もう少し、なにか良い言葉をかけてあげれば良かった。ちょっと油断していたのではないか。若いときの自分だったら、もっと緊張感があって、ここぞというときに言いたいことをずばっと言えたような気がする。最近、どうもいけない。鈍っていると感じるのだ。べつにもう人生これで良いではないか、という諦めみたいなものに支配されつつある。』
「真鍋君としては、どうなの?」
「何がですか?」
「永田さんのこと」
「ああ… ー いえ、全然です」
「全然大好きとか?」
「なんか、そういう方向へ持っていきたがりますよね。若者を見ると、とにかく色恋沙汰の話しかできない中年って多いと思うんですよ。あれはどういう心理なんでしょうね。自分たちの欲求不満を若者に投影しているんですか?」
「希望を捨てないで」
「希望?」
「ええ」
「どんな希望がある?」
「生きていれば、希望はあるわ。最善を尽くすの。逃げないで」
「凄い車ですね ー 何をしに、ここへ来たのですか?」
「車が? ー 私を運ぶためだと思うけれど」
「殺したのは、私です ー 悔いはありません。いえ、もちろん、悔いはある。でも、これを選んだんです。これよりも私らしい選択は、なかった」
「真実なんて、誰にもわからない ー みんなが、自分が認識していることを正直に話しても、それは真実ではない。認識が間違っている可能性は常にある」
「人間の行動って、そもそも一つの理由だけで決まっているものではないと思います ー そのときの瞬間的な判断でさえ、いろいろなことに思いが巡るもんじゃないですか」
「うん、そうね」
「それをですね、動機はこれこれこんなことだとか、いちいち理由を決めて、そんなの間違っているとか、納得がいかないとか、議論すること自体がおかしいと僕は思います」 -
Posted by ブクログ
ネタバレ森博嗣氏が100個の話題に対する考えをまとめた、大学の講義のような一冊。私が特に面白いと感じたのは子育てに関する森氏の考え方である。子供であろうとも一人の人間として尊重し、自由や物を与えたりしない姿勢は自分にとっては驚きであった。私自身がいろいろと親から与えられて育てられたと感じているからである。いろんな環境の下で育った人がいるからこそ、いろんな考え方の人間がいる。そんな当たり前のことを再認識させてもらえた。
そしてエッセイという形によって自分とは違う考え方を垣間見ることができるのはうれしい、かつ面白い。言語を持つ人間という生物の特権であろう。 -
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スカイ・クロラやS&Mシリーズなどで知られている森博嗣さん。
本書はその森さんによるエッセイ集なのですが、自らを題名にある水柿助教授と言う人物として表現する等、フィクション形式を採用しています。
後半になるにつれ脈絡のない話になって来ていますが、色々と面白い一文があり、例えばミステリィファンの奥さんを紹介する一文では
ミステリィファン、というのは、つまり、ミステリィ小説を読む人たちのことで、ミステリィ小説を書く人のことではない。
この点が重要なのである。
や、大学教官の奇妙なエピソードを紹介した後、
大学の教官というものは、相当におかしい人種なのか、と思いがちである。
それはとんでもない誤解だ。
こんなものは氷山の一角であって(以下省略)
と言った物があります。
他には、大学受験の答案用紙採点の際、医学部の40代の女性助教授が採点しながら
「馬鹿野郎!何考えてんだぁ!」
「うーん?読めんなあ・・・。何がいいたいの、あんた?」
「まったく、駄目だよ駄目だよ、話にならんぜ!」
「おぉ、この子は賢いわぁ・・・、うんうん、字も可愛いし」
とツッコミを入れていた「煩い」エピソードの紹介など、思わずクスッとなる個所が多かったです。
著者の筆が滑りまくった感のある一冊となっておりますので、読者の方も滑りながら読むのがおすすめ。
色々とコムツカシイ事(ただし内容はくだらない)を考えるのが好きな人にはもっとおすすめな一冊です(笑)
#自分で書いておきながらではありますが、滑りながら読むって一体どんなのだ?(笑) -
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「椙田さん、いらっしゃったんですか。珍しいですね」
「うん、たまに珍しいこともしないとね」
「全然わかりません」
「わからないなら、無責任なこと言わないでよ」
「わかることだけを話していたら、こんな議論なんて、できないんじゃないですか」
「さあ、どうかなぁ。こんなこと続けていても、ものごとが解決するのかどうか、正直わからない。でも、少なくとも、僕の仕事は、僕に仕事を頼んだ人を納得させることなんだ。足を運んで、時間をかけて、汗を流しても、結局はわからなかった。だけど、とりあえずは、なにもしなかったよりは、努力をした分、しかたがない、という納得が得られる、というわけだね。困ること、悩むこと、その時間を請け負っているようなものだから」
『あるとき、無駄だからやめましょう、と進言したところ、無駄だからやっているんだ、と叱られたことがある。それを言ったのは、彼女が尊敬する人物で、その人のために働いていた。
彼はこう言ったのだ。
「無駄なことがしたくないのなら、今すぐ死んだらいい」と。』
「行動原理は、でも、常に自分の欲求を満たすためなんですよ。その欲求が、他人に理解できるものか理解できないものか、というだけのことです」
『電話をして良かった、と思った。最初から、疑ってなどいなかった。椙田のことは信じていた。それでも、言葉が欲しいときがあるものだ。』 -
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森博嗣が生徒の成績評価のために講義で質問を受け、その中から一部を抜粋して載せたもの。
答えの切れ味が鋭い。
質問の本質は何か?という事を気づかされる。
自分で調べればわかるものは調べればよい、どう思うかはほとんどが主観、言葉は定義によって縛られる等など、基本的な事。
答えの指針は下記の通りらしい
1.情報を問う質問には、情報が存在する範囲で答え、その情報を得る方法を教えれば良い。
2.意見を問う質問に関しては、意見を誇張してずばり答えるか、あるいは、その意見を問う理由、意見を一つに絞らなければならない理由、を問い返す。
3.人生相談、あるいは哲学的な質問に関しては、まず定義を問い返す。
4.個人的な質問に関しては、ある面は誇張して答え、ある面はかわす。
5.自分で解決しなければ意味がないことを気づかせる。
この答え方は一般社会でも通用しないこともないと思う。
一見、ぶん投げっぱなしの返答に見えるけど、質問の本質を見誤らなければまっとうな回答とわかる。 -
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重要なことは「人間はそんなに単純なものではない」ということ。言動は時と場合によって変わる、考え方もタイプもずっと同じではない。揺れ動いているのが普通である。さらに、深い考えをする人間ほど、なかなか本心というものはわからない。どう見せようかという事を考えて行動しているため、言動から類推できることはあくまでも作り物、演じられている外交的な型でしかない。そういう人は、場合によって全く違うタイプになることがあって、あたかも多重人格者のようにも観察されるが、それは、こちらの見方が部分的だから起こること。
重要なのは「決めつけないこと」抽象的にぼんやりと捉えることで、決めつけないという基本的な姿勢を変えない。
「悩み」について、悩ましいものを自分で見つけたことが、その人の能力であり、その発見にまず一番の価値がある。・・・この文章は、悩み多き私に大きな勇気を与えてくれる。
昔、私が中学生のとき、美術の先生が、絵を描く時には「目を細めて対象物を眺めるといい」と教えてくれた。これは、具体的にものをみないで大雑把にものを見つめると輪郭から全体像を把握しやすいということだったと思う。
具体的に詳細に物事を見るのは機械でもできる。人間の人間たるゆえんは「~のような」大きな把握をして「だいたい」のフォルダに入れるとお互いの事柄がリンクしやすいのかもしれない。
ー歳をとると自分に無縁なものが増えてくるし割り切れるようになる。予感や願望だけの「美しさ」は無益な物として排除される。ついにはもう毎日の自分の身の回りの損得しか考えなくなる。考えるというよりも、ただ「こっちが得」だというせんたくをしているだけにすぎない。犬や猫でもできる判断と同レベルであるー
という文章は痛烈なインパクトだ。「犬猫と同じ」
「目を細めてみる」ことにヒントが多く隠されている。
「具体的に見ない」ことが -
Posted by ブクログ
ネタバレ<印象的な箇所のクリッピング>
・小説家もビジネス。小説書くのが好きなだけなら無料で作品配布すればいい。
・商売の基本は、新しいニーズを発掘してそこに商品を投入することの繰り返し。
・とにかく書き続ける。1個ヒット作出すより10個小さく当てる方が現実的。
・ユーザーのネットの感想を分析する。ネガティブ意見は貴重。何故そういう書き込みをするのか、ユーザーの心理を分析すると小説の次回作に役立てることができる。
・出版社のお客さんは読者ではなく書店さん。
・作家を将来にわたってプロモートするような出版社はない。作家は自分の作品をセルフマネジメントする必要がある。
・出版業界はビジネスの常識から見ておかしい。契約内容が曖昧、お金がいくらか曖昧、締切が曖昧。
・自分が自由になるために「他人が自分を好きになる」ことを犠牲にする。
・アウトプットするほど上達する。
・たくさん読むより、1冊の本を何度も読んで思考して自分のものにする方がいい。
<レビュー>
大沢さんの小説講座本と言ってることがほとんど違うので、面白い。両方一緒に読むと役立つ。