井上ひさしのレビュー一覧
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この作品は物凄く混沌としている様に見えるよう作られている。読みにくいとか余計な脱線があるという意見もあるようだけれど、世の中、世知辛さ、情、抵抗活動、どうにもならないもの、無念、舞台は田舎であるし、秩序でできた煌めく小綺麗な文章でこの独立運動がもし書かれていたら、それは吉里吉里人の話ではない。
現代のコスパタイパ思想に浸かってしまう学生時代に、この作品を読めて良かったが、社会人など時間に追われるようになると、この作品の無駄さ、豊かさなどは、味わうのは難しいかも。
それと政治の諸問題をこんなに分かりやすくした物語は珍しかった。
日本から独立するって話は、昔、村上龍なども書いていたように記憶しているけれど、きちんと独立して平和に世を治めたハッピーエンドの話は読んだ事がまだない。ライトノベルだと別世界を統治する系の話はよくあるようだけれど、日本が舞台で、政権を転覆させてそれをやるのは難しいのかしら。と、これを読んだ当時、思っていた。 -
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死んでしまったあの人のことを思うと自分は幸せになってはいけない という気持ちを本当の本当に理解することはできるだろうか。幸せになっていいかどうかというより、今もうすでに幸せである。
と考えると、被曝体験は想像することもできないくらいの次元の違う悲惨さだっただろうと思った。被曝以前に、自然な老い以外で身近な人と死に別れてしまった経験がない、被災の経験も幸いなことにない。
平和な人生に心から感謝。
この悲惨さを本当の本当に理解できてはいないだろうから難しいしおこがましくもあるけど、どうにか後世に伝えていくことはしないとならない。
こういう本とかに子供と一緒に触れて、一緒に想像する、みたいなことを単発ではなく時々やらないとならないと思った。 -
Posted by ブクログ
まさに名人芸のような井上ひさしさんの遺作。素直に面白いと思いました。
本書は「縁切寺」と呼ばれた北鎌倉の東慶寺が舞台。妻の側からの離婚が難しい時代、寺の境内に身につけているものを投げ込めば、駆け込みは成立。そして駆け込み人が東慶寺で24か月過ごせば、夫は絶縁状を書かねばならないというシステム。井上さんは、このシステムを女性のためのアジール(聖域)として「素晴らしい発明」と評しています。井上さんは居を鎌倉に定めていることもあり、東慶寺を愛しているのでしょうね。楽しんで書かれたのがわかる作品となっています。
本書は「オール讀物」に1998年から足かけ11年にわたって連載された全15話をまとめた短編連作集。全編を通じての主人公は中村信次郎。医者の見習いから転じた新米の戯作者。信次郎は縁あって身を寄せた東慶寺の御用宿「柏屋」の布団部屋に篭って、創作に苦しんでいます。一方では柏屋の番頭手伝いと駆け込み審議の書記を任せられています。本書は15人の駆け込み人と中村との交流、駆け込みの顛末を1話完結で描きます。
本書のすごいのは1話1話の起承転結がはっきりと描かれていて、まるで落語の人情噺を読んでいるようです。話の展開はミステリー仕立て。それぞれにひねられたオチが準備されています。
また、鎌倉の自然、地理が描かれていて絵画的な作品です。
個人的には読み終えるのがもったいないような作品。ただ、時代小説ですので趣味に合わない読者もいらっしゃると思います。最初の1編が趣味に合えば、たぶんハマるのではないかと。 -
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伝説の天才打者、横浜大洋ホエールズの田中一郎選手。昭和54年度は本塁打56本、打率4割7分4厘という驚異的な記録を打ち立てた彼は、実は盲人だったのです。
その彼を先導したのが、盲導犬でした。
この物語は盲導犬チビの目線で描かれています。田中一郎もスゴいけど、このチビがまたスゴい!野球のルールを知りつくしているばかりか、プロ野球の歴史にも精通、世の中の情勢にも詳しく、まるで井上ひさしが取り憑いたような(笑)、博覧強記の知識犬なのです。99%は完璧な盲導犬ですが、1%は色っぽいメス犬によろめいたり、残飯のラーメンに食らいついて捕まったり、妙に人間っぽくて憎めないチビなのです。
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分厚い単行本を一日に12頁ずつiPadで撮影して、通勤電車での読書の友にしていました。
戦時中そして戦後すぐの日本の首都東京の様子が描かれていて、当時の社会や家庭の様子、日本人の考え方や考え方の変化をありありと思い浮かべることができました。井上ひさしさんの「日本語」に対する思い、こうあるべきという方向性がうかがえてこの数週間は本当に楽しい通勤でした。古い漢字や古い言い回しもたくさんありましたがそれにも直ぐに慣れて読み進めることができました。
作中の女性たちの逞しさや日本と日本語を思う心の美しさ、それと終章での大どんでん返しがこの作品の読みどころです。