井上ひさしのレビュー一覧

  • 野球盲導犬チビの告白

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    伝説の天才打者、横浜大洋ホエールズの田中一郎選手。昭和54年度は本塁打56本、打率4割7分4厘という驚異的な記録を打ち立てた彼は、実は盲人だったのです。
    その彼を先導したのが、盲導犬でした。
    この物語は盲導犬チビの目線で描かれています。田中一郎もスゴいけど、このチビがまたスゴい!野球のルールを知りつくしているばかりか、プロ野球の歴史にも精通、世の中の情勢にも詳しく、まるで井上ひさしが取り憑いたような(笑)、博覧強記の知識犬なのです。99%は完璧な盲導犬ですが、1%は色っぽいメス犬によろめいたり、残飯のラーメンに食らいついて捕まったり、妙に人間っぽくて憎めないチビなのです。

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    2022年03月05日
  • ブンとフン

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    父が子供の頃に読んだ本と聞いて、こっそり買って読んでみた一冊です。
    想像以上に、凄く楽しめます。本が読者に語りかけてくるスタイルで、ページの中にのりしろがあったり、切り取り線があったり。昔大好きだったかいけつゾロリやおばけマンションを思い出して、ワクワクしました。
    何回も読みたくなるフレーズが沢山あるし、ストーリーもワクワクするし、終わり方も突然に見せかけて凄く綺麗だったし、創作とはこの本で表現されたようなことを言うんじゃないかな、と思います。
    最初に書いた本がこれってすごいなぁ。他の本や作品も観てみたいです。

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    2022年02月23日
  • 一週間

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    レーニンの手紙にそんなに価値があるのでしょうか。手塚治虫の『アドルフに告ぐ』のヒトラーの出生証明みたいなもんだけど…。でも、『東京セブンローズ』の対ソ連版みたいな感じで面白かったけどね。

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    2022年02月19日
  • P+D BOOKS 東京セブンローズ(下)

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     分厚い単行本を一日に12頁ずつiPadで撮影して、通勤電車での読書の友にしていました。
     戦時中そして戦後すぐの日本の首都東京の様子が描かれていて、当時の社会や家庭の様子、日本人の考え方や考え方の変化をありありと思い浮かべることができました。井上ひさしさんの「日本語」に対する思い、こうあるべきという方向性がうかがえてこの数週間は本当に楽しい通勤でした。古い漢字や古い言い回しもたくさんありましたがそれにも直ぐに慣れて読み進めることができました。
     作中の女性たちの逞しさや日本と日本語を思う心の美しさ、それと終章での大どんでん返しがこの作品の読みどころです。

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    2021年12月24日
  • 父と暮せば

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    原爆で父や友人を亡くし、自分だけが幸せになってはいけないと思い詰める。反面、新しい出会いに生まれ変わりたいと想う自分がいる。再生に向かう物語。
    原爆だけではなく戦争のなかで加害者と被害者が同時に存在することの不合理。

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    2021年08月09日
  • 自家製 文章読本

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    文章読本として三島丸谷はじめこき下ろしてるくせにその実用性は足元にも及ばないという感想を見受けたが、そもそも井上ひさしは文章読本など書く気はまるでなく、文芸作品として他の文章読本をいじり倒し、茶化し、弄び。そしてそれらを書いた作家たちを最大限にリスペクトを現してしているのだ。特に丸谷才一版の多岐にわたる引用をパロディにして、その上で既存の文章読本に内容をなぞらえて新解釈を加える力業。エッセイというよりも読み物としてとてもスリリングだ。

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    2021年06月09日
  • 吉里吉里人(下)

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    ネタバレ

    下巻に入り、更にテンポアップ。面白さにグイグイのめり込む。吉里吉里国の独立の戦略である、医療立国、金の隠し場所に迫る。
    相変わらずの言葉遊びと、荒唐無稽のストーリーだが、段々と中毒になってきた様に面白いと感じる。
    そして、一気に物語はラストのクライマックスへ。
    ラストで、この物語を紡いできた記録者がキリキリ善兵衛であり、百姓どもに朝が訪れることを待ち望んでいたことが明らかにされ、この物語が、百姓の解放を通底とした独立物語であるというテーマが浮き上がってくる。
    ここで言う百姓が朝を迎えるというテーマは、現代消費社会、国際分業といったシステムから降りて、自給自足をしながら文化を守り医療を享受し独立

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    2020年11月24日
  • 井上ひさしの読書眼鏡

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    井上ひさしさんも、亡くなられてから10年。(佐野洋子さんと同じく)

    最初から、最後の松山巌さんの〆の解説文「中継走者としての読書」まで面白かった。

    読んで良かった。

    多分これから何度も何度も読み返すことになるだろうな。

    それにしても、東日本大震災の前にお亡くなりになったとは思えないほど、“今”を言い当てていてコワイくらい。

    ❖今はもう中古でしか買えないようだけれど、“文化の厚み映すだ大辞典”の紙の辞典の完全版は、是非手に入れたい。

    ❖早速、購入した本:『見たくない思想的現実を見る』(中古だけど)

    ❖井上さんの義姉でもあった米原万里さんの本はどれも全部読んでみたい。

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    2020年10月24日
  • 「けんぽう」のおはなし

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    「明るい勇気」をもらえる本。
    実際に小学生に話された内容が元になっている。
    なんと分かりやすく、勇気をもらえる本だろう。
    国のことや憲法のこと、平和のことが、この1冊に凝縮されている。
    「主権者教育」の第一歩に!

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    2020年08月01日
  • 吉里吉里人(下)

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    上中下巻と、面白くて一気に読んだ。吉里吉里人を読みながら、日本の内部で吉里吉里国が独立するという設定がイスラム国の比喩のようにも取れたし、また『横浜駅SF』を思い出しもしたし、あらゆる吉里吉里に関する要素が百科事典的に記されている様はメルヴィルの『白鯨』のようでもある。それにしても、日本で『白鯨』のような大きな物語を持った古典に『吉里吉里人』が相当すると考える人はあまり多くないかもしれない。国の内部で国としての独立を立ち上げる視点は大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』そのものだし、日本は日本国内での独立、地方の自立をカノンとして持っているというのは、英文学やフランス文学にはあまりない特徴のように感じ

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    2020年08月01日
  • 吉里吉里人(中)

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    上中下巻と、面白くて一気に読んだ。吉里吉里人を読みながら、日本の内部で吉里吉里国が独立するという設定がイスラム国の比喩のようにも取れたし、また『横浜駅SF』を思い出しもしたし、あらゆる吉里吉里に関する要素が百科事典的に記されている様はメルヴィルの『白鯨』のようでもある。それにしても、日本で『白鯨』のような大きな物語を持った古典に『吉里吉里人』が相当すると考える人はあまり多くないかもしれない。国の内部で国としての独立を立ち上げる視点は大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』そのものだし、日本は日本国内での独立、地方の自立をカノンとして持っているというのは、英文学やフランス文学にはあまりない特徴のように感じ

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    2020年08月01日
  • 吉里吉里人(上)

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    上中下巻と、面白くて一気に読んだ。吉里吉里人を読みながら、日本の内部で吉里吉里国が独立するという設定がイスラム国の比喩のようにも取れたし、また『横浜駅SF』を思い出しもしたし、あらゆる吉里吉里に関する要素が百科事典的に記されている様はメルヴィルの『白鯨』のようでもある。それにしても、日本で『白鯨』のような大きな物語を持った古典に『吉里吉里人』が相当すると考える人はあまり多くないかもしれない。国の内部で国としての独立を立ち上げる視点は大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』そのものだし、日本は日本国内での独立、地方の自立をカノンとして持っているというのは、英文学やフランス文学にはあまりない特徴のように感じ

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    2020年08月01日
  • 父と暮せば

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    ちょうど去年の秋、長崎の原爆資料館にいったことを思い出した。この物語の舞台は広島だが、原爆という共通点がある。
    私が話を聞いた被爆者は88歳。当時は小学生で、被爆者の中では比較的若い方だった。その方ですらこの年齢。静かに、緩やかに生の体験を話せる人がいなくなる状況に恐ろしさと悲しみを覚えたことが記憶にあります。
    仕事や人間関係が悩みの大半を占める今の状況は、ともすれば平和の弊害なのかもしれないと感じます。

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    2020年06月28日
  • モッキンポット師の後始末

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    俺に読書の面白さを教えてくれた一冊です。

    井上ひさしが、大学時代のエピソードを元に
    作られた作品らしいが、本当に面白くて、
    一気に読める(笑)

    三人の貧乏学生が、色々やらかして、
    モッキンポット師を怒らせたりするんだけど、
    そのやり取りがすっごく面白くてね(笑)

    今から30年前に、当時読書なんか一切しない
    高校生だった俺に、本の面白さを教えてくれた、
    思い出の一冊です。

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    2020年05月17日
  • 私家版 日本語文法

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    軽妙洒脱な語り口だが、内容は重厚なのはさすが。言葉について色々思うところがあったが、なんとなく同じことを考えている人がいるんだなぁと同意するところ多し。昭和56(1981)年に出版されたものだが、古くならない。

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    2019年11月17日
  • 井上ひさしの 子どもにつたえる日本国憲法

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    なぜ憲法改正なのか。

    本当に日本国憲法は時代にそぐわない黴の生えた代物なのか。
    本当に日本国憲法では日本人は主権者としてのアイデンティティを確立できないのか。

    あらためてそういうことを考えさせらえれました。

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    2019年11月16日
  • 組曲虐殺

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    先日舞台を見てきた勢いで借りました。戯曲脚本形式なので普通に読むのはちょっと読みにくいかもしれませんが。舞台を見たあとでは、あのときのあの台詞が甦ってきて二度美味しいという感じ。名前だけ知っていた小林多喜二の人生は壮絶で、現代社会にも通じる様々な怒りを感じました。そんな中にも井上ひさしさんらしい、笑いユーモアもあり、もっともっと作品を世に送り出して欲しかったとしみじみ思いました。

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    2019年11月14日
  • 父と暮せば

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    台本であり、読みやすい。
    幸せになることに対しての娘の葛藤、父の心配、そして、幽霊として娘のそばにおり、娘がそれを受け入れているというユニークな設定。あたたかい。

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    2019年09月02日
  • 日本語教室

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    2019.8.29済。
    非常に読みやすい文体。
    こういう文体好きだなあ。
    「美しい日本語はひらがなと漢字のバランス」
    「劇のセリフは、観客に即分かる単語で」

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    2019年08月31日
  • 四十一番の少年

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    教会の孤児院を舞台にした短編3作。

    高校に入学するため、孤児院に入った利雄は、同室に割り当てられた高校生の昌吉に目をつけられる。昌吉から何かと「しごき」を受けていた利雄であったが、昌吉は突然「丸木舟で川下りをしろ」と言い始め…。

    いじめられ、しごかれる表現が最後の作品を除いてずっと続き、それはほとんど救われないため、非常に読んでいて辛い作品群であるが、その重圧が読者を引き込んでいく。最近の作家か編集者かは知らないが、重苦しい雰囲気をなるべく短く終わらせようという傾向が強く、重苦しいものを重苦しいまま描くということができているのは、重松清くらいではないのか。

    それはさておき、電車の中で読ん

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    2019年07月07日