井上ひさしのレビュー一覧
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ソ連の捕虜となった主人公がどうにかして日本へ帰ろうとするはなし。歴史の題材はとても深刻なものを扱っているのに、ユーモアがあって面白い。全体を笑いのオブラートで包み込んでいるような感触。最後の終わり方が唐突であるように感じたが、落とすところは何気なく落としておいて、笑わせるところは笑わせるような語り口にいつのまにかはまってしまっていた。結局Mは誰だったんだろうか。当時の歴史的背景を知らなくても、分かりやすかった。むしろ、背景を知ることができる。もっと周辺知識があればもっと面白そう。中国語やロシア語がわかれば尚更。WWⅡ後の裏歴史も盛りだくさん。知らなかったことが多すぎる。学校ではこんな切り口で学
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Posted by ブクログ
相当久しぶりの井上ひさし。「ドン松五郎」なんて好きで中学以来、何度読んだか忘れるほどであったが、そういえば代表作の「ブンとフン」は読んでいなかった。パラパラっとめくって、読まなかった理由がわかった。ワタクシは、改行の多い詩を書くのも読むのも苦手なのである。パラパラっとめくるだけでいくつも出てくるが、もう大人なので無視して読み始め。
そういう個人的な事情は置いておいて、読書家向けに簡単に書くと、ストーリー内でも数回引き合いに出されている、北杜夫の「怪盗ジバコ」を丁寧に書いて、オチまでつけたというような話だ(オチはむちゃくちゃだが)。違いは、あちらはの怪盗は生身の人間であったが、こちらは本から現 -
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ワープロの上で暴れ始める記号たち、ある日突然舌がもつれて落魄する元青年駅員、古書店で繰り広げられる小説と映画の仁義なき戦い…。
本書は言葉にまつわる、そんな奇想天外な物語を集めた短編集。
実は恥ずかしい話、井上ひさしの小説を読んだのは今回が初めてで、代表作のひとつで読売文学賞を受賞した「吉里吉里人」も、直木賞受賞作の「手鎖心中」も未読。
いつか読みたいと思いつつ、まず取っつきやすい短編集から手に取った次第。
全部で11編収められており、どの作品も巧みな構成と描写、それにどこか黒いものを感じさせるユーモアで、小説を読む醍醐味を存分に味わわせてくれます。
私は「極刑」が最も気に入りました。
劇団に