井上ひさしのレビュー一覧
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書簡小説の短編集です。
その中に忘れられないお話があります。
お役所や学校などに出す届出の書類だけで綴られた前沢 良子(まえさわ りょうこ)さんという女性の一生のお話です。「赤い手」というお話です。
1 出生届
2 死亡届
3 死亡診断書
良子さんは昭和20年4月1日に千葉県市川市で私生児として生まれます。お母さんは出産の際に亡くなりました。
4 転入届
良子さんは生まれて半年で仙台市のキリスト教系孤児院に引き取られます。
5 欠席届
良子さんは冬には両手両足に赤切れができるたちで、ズック靴がはけなくて学校に行けませんでした。小6の冬でした。皆勤賞を逃しました。
6 洗礼証 -
Posted by ブクログ
1977年から78年に連載されたもの。時代設定は応じて古いが、世代的には十分理解できる程度の古さ。13篇すべて手紙の形式のみで綴られる小説。(一部、手紙ではなく、公文書や戯曲だったりするが、ほぼ書簡形式)
多くは、ミステリーの要素を含むどんでん返しで、エピローグではほぼ全ての登場人物が登場して、連作短篇のテイストも楽しめる。
井上ひさしさんがこういう作品をものするひととはつゆ知らず、たまたま手に取った本だったけれど、大当たりといって良いのではないだろうか。
全作品ハズレなしだったが、1番面白かったのは、「ペンフレンド」。オチも秀逸だし、オチを知ってなお知らぬふりをする本宮弘子のしたたかさ -
Posted by ブクログ
1984年刊。
谷崎、志賀、川端、三島、野間、鶴見、丸谷……。井上ひさしがいろんな文章読本を読みながら、文章について考える。いわばメタ文章読本。
随所で出てくるのは、格調の高い文章を重んずる三島由紀夫。メインターゲットはこの読本。たとえばオノマトペ。三島は、鷗外がオノマトペを極力使わなかったので、文章が格調高いものになったと主張するのだが、井上は鷗外が効果的にオノマトペを使っている例をいくつもあげている。
認識や記憶のプロセス、注意容量、短期記憶のスパンなどの点から、文章を考察している章はみごと。当時の専門的な研究者(認知心理学者)でも、ここまでわかりよくは書けないかも。
丸谷才一の文章読本に -
Posted by ブクログ
遠野旅行をした折、土産店で本書を購入。安野光雅のカバー画もよい。
旅を終えてからも遠野の箱庭的魅力をじんわり味わえる、いい物語。「新釈」というのは言い得て妙で、遠野物語を下敷きにしつつもまっさらの物語世界を構築していて夢中で読んでしまった。
際どいお話ばかりなので(1話目がいきなり下ネタオチで、こりゃあすごいなと思ったら回を重ねるごとにそのすごみが増して、二重に驚いてしまった)、お子様にはあまり勧められないが、遠野で語り継がれていた民話も本来はこれくらい生々しいものだったのだろう。エリート官僚・柳田國男の味付けで文学性が増し、今は子ども向け絵本も出ているくらいだが。
遠野物語の中では私は -
Posted by ブクログ
読めば分かるこのすごさ!
こんなにゾクゾクする連続短編小説、読んだことないです。(ただ私、読書量そんなに多くないのですが)
プロローグとエピローグを除き、11の短編それぞれバラエティーに富んでいて、手紙の形式をとっているのが特徴。手紙文に溢れる人間模様が濃厚です。男女間のドロドロとした残酷な部分、「ALWAYS 3丁目の夕日」的な、昭和の郷愁を誘う部分が入り混じり、そこにひねりが加えられ・・・・
次にどんな話がくるのか知りたくて、最後の方はノンストップでした。短編ごとにエッと驚くようなオチがあり、エピローグでまた、驚きの結末が待っています!