井上ひさしのレビュー一覧
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井上ひさしの小説初読み。
十二人の手紙と言う作品を読もうと思っていたものの、積読すること
月日は立ち、ラジオ番組でこの小説のラジオドラマを拝聴したことがきっかけで、
小説を読みたいと思いつつも、なかなか入手できずじまい。
ようやく入手出来て読むことになりました。
フンと言う、まったく売れることがなく人里離れた場所で貧乏暮らしをする
小説家が書いた作品が、ある日突然売れたことで、担当者が、
お金やフン先生の好きな嗜好品を持ってきます。なんか裏があるのかと
勘ぐっていたところ、突如、小説原稿からブンという四次元の大泥棒
が現れ、三次元のフン先生の世界で泥棒を働き始めるという物語。
果たして、どうなっていくのか、なぜ「ブン」と言う作品が突如売れ始めたのか。
冒頭に書いた、ラジオドラマきっかけと言うことで、
そのラジオドラマでは、今となっては大昔、井上ひさしがまだ小説を
書く前の、脚本や戯曲を書いていた頃の児童向けとも言える
ラジオドラマに書いた脚本である。
そのラジオドラマでは、テンポが良く、時代的に声優とは言われていませんが、
声優たちの演技力に音楽が素晴らしく、ブンの声を超ベテランで日本人なら
知らない人はいないと言っても過言ではない、黒柳徹子が担当している。
このテンポ良く展開するSFファンタジー的な作品の小説を読んでみたい、
と思い、幾日かようやく手にして読んだ結果、ラジオドラマとは違う部分も
多く、そもそも、フン先生の状況と言うのはあまりラジオドラマでは描かれて
いないので、そいうところや様々なブンの行動など、より多く楽しめる
展開となっていました。どちらが良いかと言うと、どうしてもラジオドラマ
と個人的には思う次第ですが、それでも読めたことは良かったと思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子供向けの遠野物語を読み民話や伝承の魅力を改めて感じ、評価の高かった井上ひさしの新釈を手に取る。丁寧に編まれた方9つの短編は最後までしっかり読者を楽しませてくれる。物語を読んだ、という深い満足感を味わえる一冊。
物語は入れ子構造式に展開しており、作中ではある老人が時に本家の遠野物語について触れながら彼の経験した不可思議な出来事が語られている。
読みすすめていくと時に沼地に足を踏み入れたような、狐につままれているような不思議な感覚に襲われるが、最終的には世界というのは本来こういうものかもしれない、、と妙に納得して全てをそのまま受け止めてしまえる。
物語の世界と自分の世界の境界が曖昧になっていく感覚がとても心地良い。
あっという間に東北の仄暗い御伽話の世界に誘われ、井上ひさし氏の力量の高さを改めて実感した。 -
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井上ひさしのエッセイ集『ふふふふ』を読みました。
井上ひさしの作品は、2年半くらい前に読んだ『一週間』以来なので久し振りですね。
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苦笑 失笑 嘲笑 哄笑
いっこうにまともにならない世間を、愛と渋みをもって最後まで見つめ続けた人気エッセイ第二弾!
繰り返される戦争やテロ、政治家の失言、脅かされる平和憲法、ないがしろにされる農業……。
いつの間にやら窮屈になった世の中を、時には嘆き、おおいに憤慨しつつ、それでも真剣に愛し、格闘してきた著者が遺した言葉の数々。
ユーモアと、定評のある観察眼が随所に光る、今こそ読みたい徒然の身辺雑記第二弾。
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講談社発行の月刊小説誌『小説現代』に2005年(平成17年)7月号から2009年(平成21年)9月号に『ふふふ』というタイトルで連載されたエッセイを収録して2009年(平成21年)に刊行された作品です……最初に単行本化された『ふふふ』の続篇にあたる第2作のようです。
■おみやげ問題
■世にも恐ろしい読物
■また、アメリカですか
■かこつけ屋
■「時間」は作者
■いやな感じ
■カリブ海のエメラルド
■情報隠し
■道州制の思い出
■いたずら
■契約
■武蔵考
■侍従日記から
■二十一世紀的武器
■頭の中の火事
■暴風神父
■ある連想
■失言集
■いちばん偉いのはどれか
■母への二通の手紙
■憲法の三原理
■暗い五月
■朝青龍問題によせて
■空気を読めよ
■政治家の要件
■機転か、場当たりか
■二人のゴルフ狂
■シベールのラスク
■わたしの読書生活
■あっという間の出来事
■二つの妄想
■「偉人」たち
■朝日訴訟と残飯闘争
■イヤな予感
■あの黄金週間
■寄付金の取り分
■アイアムアボーイからパンニハムハサムニダまで
■台本作者の迷い
■無刀流について
■靴が飛んだ話
■桜桃寸感
■さもしい了見
■道化師宰相
■夢想
■中古品一台につき二十万円也
■長い目次をつけてから
■解説 生方卓
徒然に思うところを書きつづった身辺雑記…… 何かおかしい今日この頃の政治経済、社会情勢を語り、仕事の端々で感じる言葉に対する蘊蓄を語り、世の中に苦笑、失笑、哄笑する徒然の記! 待望のエッセイ集。
「むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、ゆかいなことをいっそうゆかいに」という井上ひさしの哲学が随所に感じられる作品……政治や社会問題などの難解なテーマがユーモアと平易な言葉で語られており、愉しみながら読むことができました、、、
ユーモアたっぷりなんだけど、政治や時事、社会問題等々、社会の矛盾や偽善に対する視点が鋭く、それでいて批判に毒がなく人間味と優しさを感じるところ、テーマの幅広さが特徴ですね……読む人の立場や経験に関係なく、何かしらの「気づき」や「共感」を与えてくれる力があるなぁ と感じました。
個人的には、繰り返される戦争やテロへの憤りを感じさせる原爆や戦争への言及が印象に残りました……単なる批判に終わることなく、どうすれば人間らしく生きられるか! ということを考え続けた結果なんでしょうね、、、
現代の日本社会に通じる問題意識があり、時代を超える普遍性を持ったエッセイでしたね……機会があれば前作の『ふふふ』も読んでみたいですね。 -
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2020年、文庫本発行より40年たった井上ひさしの短編集が突如売れ始めた。中公文庫20年〜23年の売り上げでは、ベスト6に入る健闘ぶりだったという。調べると、ある書店員の作ったポップがキッカケであり、決してドラマ化や映画化がキッカケではないところに、この短編集が「本物」である証があるのではないか。
連載されていたのは、戦後から32年経った1977年の頃。登場人物全員に、若者には高度成長期の光と影を投影し、年長者には戦後30年の復興の影を背負わせているのも上手い。
ともかくも、手紙、手紙、手紙、手紙の数々「だけで」物語を創って仕舞う作者の手品のような手際を堪能するべし。勿論、時には公文書だけで物語を進めたり、手紙の中に戯曲や小説を入れ込むという「趣向」も愉しむべし。
何故、21世紀も20年も経った頃に、この作品がスマッシュヒットしたか。色々理由はあるだろうけど、多分2つはあると思える。
①インターネット世代から見て、手紙は多くの違いがあって、昭和の時代性もあり「それだけで」とっても新鮮に思えた。
②手紙の持つ、熟考した長文の持つ「嘘」の魅力、時間のかけた「やり取り」からくるドラマ性が、読者を魅了した。インターネットならば、すぐに解決する問題が数日かかるからこそ、浮き彫りになるテーマがあるのだ。
人情話もあれば、謎解きサスペンスもある。多くはあっと驚く「どんでん返し」も多い。最終章は全登場者再登場!という力技さえ見せている。もし、創作教室みたいな講義があれば、この薄い短編集を「教科書」に強く推薦したいと思う。 -
購入済み
ちばてつやさんがおすすめされていて以前から気になってましたが、値引きになっていたので購入。いわさきちひろさんのやさしい挿絵に、タイトルにも子どもにやさしい解説、大人のための本のように感じました。
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井上ひさしが、読売新聞に書いていた書評、および、米原万里と藤沢周平に関しての文章を1冊にまとめたもの。
書評での本の選択が独特である。
辞書・事典、大江健三郎の新刊。その他に紹介されているものは、新刊本はなく、発行からやや時間を経たものである。「情報天皇に達せず」「戦争・占領・講和」「第二幕(ニール・サイモン)」「冷泉家 時の絵巻」「医者 井戸を掘る」「日本現代演劇史昭和戦後編2」「プルートーンの火」「チラシで読む日本経済」「公共哲学」「伊能図」「憲兵だった父の遺したもの」「見たくない思想的現実を見る」「ウォーター 世界水戦争」「二十一世紀の遠景」「日本語の教室」「民主と愛国」「昭和天皇」「右派左派を超えて」「林芙美子の昭和」等といったもので、読んだことのあるものは、かろうじて1冊。その他も、ほとんど、聞いたこともない題名の本ばかりであるが、井上ひさしの紹介の仕方が、とても面白く、読んでみたくなってしまう。
最近、書評を読んでは、面白そうなものを求め、しかし、読む時間がなく、「積読本」ばかりが増えてしまう。今回もまた「積読本」が増えそうで、困ったものだ。 -
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ネタバレ手紙形式で綴られた12の短編からなる連作小説です。各話は独立していますが、最終章で登場人物たちが交錯し、全体として巧妙な構成が明らかになります。以下、各短編の詳細なあらすじを紹介します。
1.プロローグ:悪魔:上京した柏木幸子は、就職先の社長・船山太一と不倫関係に陥ります。彼の「妻と別れる」という言葉を信じていましたが、それが嘘であると知り、絶望の末、社長の娘を殺害してしまいます。拘置所からの最後の手紙で、彼女の悲劇的な運命が描かれます。
2.葬送歌:劇作家志望の女子大生・小林文子は、自作の脚本を恩師の中野慶一郎に送り、批評を求めます。しかし、彼からの返信には意外な事実が綴られており、彼女の期待は裏切られる形となります。
3.赤い手:出生届や死亡届など、公式書類のみで構成された異色の作品です。これらの書類を通じて、一人の女性・前沢良子の波乱に満ちた人生が浮かび上がります。最後に本人からの手紙が添えられ、物語の深みを増しています。
4.ペンフレンド:文具会社に勤める本宮弘子は、北海道旅行の案内役を雑誌で募集し、数名の男性と文通を始めます。最終的に一人の男性に決めますが、同僚の西村からの指摘で、思わぬ真相に気づかされます。
5.第三十番 善楽寺:「赤い手」に登場した吉川俊夫のその後が描かれます。飲酒運転事故を起こした彼は、自らに課した贖罪のため、ある寺院で新たな人生を歩み始めます。
6.隣からの声:新婚早々、夫の長期出張で一人暮らしを始めた妻・水戸博子。彼女は隣人との交流を手紙で夫に報告しますが、次第に隣人の話ばかりになり、彼女の精神状態に異変が生じていることが示唆されます。
7.鍵:画家の夫・鹿見木堂が山に籠る中、妻・貴子は自宅で強盗被害に遭ったと手紙で報告します。しかし、夫は手紙の矛盾を指摘し、事件の真相を明らかにします。この作品は、手紙の文面に隠されたトリックが秀逸です。
8.桃:セレブの婦人団体が養護施設にボランティアを申し出ますが、施設長・小原純子からの返信には、ある小説に沿った形で丁重に断られる内容が綴られています。有難迷惑の典型を描いた作品です。
9.シンデレラの死:家庭環境から逃れるため家出し、女優を目指すも挫折した女性・塩沢加代子。彼女は高校時代の恩師に宛てた手紙で、自身の過去と向き合いますが、手紙の真相と宛先の意外な事実が明らかになります。
10.玉の輿:病身の父のために裕福な男性と結婚した長田美保子。しかし、結婚生活は上手くいかず、元恋人への手紙で心情を吐露します。引用された手紙の内容が、物語に深みを与えています。
11.里親:バーで働く甲田和子は、作家志望の青年・藤木英夫に好意を抱きます。彼は師匠を殺したと告白しますが、和子は手紙のやり取りを通じて、事件の真相と彼の誤解に気づきます。
12.泥と雪:夫の浮気に悩む津野真佐子の元に、学生時代の友人・佐伯孝之から手紙が届きます。彼との文通を通じて、彼女は離婚への考えを深めますが、これらの手紙にはある人物の策略が隠されています。
13.エピローグ:人質
これまでの物語の登場人物たちが、ホテルでの人質事件で再登場します。犯人は柏木幸子の弟・弘で、彼の要求や事件の展開を通じて、各キャラクターのその後が描かれ、物語は大団円を迎えます。
『十二人の手紙』は、手紙という形式を巧みに活用し、各人物の内面や人間関係を深く描写しています。各短編の結末には意外性があり、読者を引き込む構成となっています。最終章での登場人物たちの交錯は、全体の物語に統一感を与え、読後感をより豊かなものにしています。