井上ひさしのレビュー一覧

  • 十二人の手紙

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    ネタバレ

    手紙形式で綴られた12の短編からなる連作小説です。各話は独立していますが、最終章で登場人物たちが交錯し、全体として巧妙な構成が明らかになります。以下、各短編の詳細なあらすじを紹介します。

    1.プロローグ:悪魔:上京した柏木幸子は、就職先の社長・船山太一と不倫関係に陥ります。彼の「妻と別れる」という言葉を信じていましたが、それが嘘であると知り、絶望の末、社長の娘を殺害してしまいます。拘置所からの最後の手紙で、彼女の悲劇的な運命が描かれます。
    2.葬送歌:劇作家志望の女子大生・小林文子は、自作の脚本を恩師の中野慶一郎に送り、批評を求めます。しかし、彼からの返信には意外な事実が綴られており、彼女の

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    2025年03月13日
  • ブンとフン

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    すごい奇想天外な話だった。着地点がどこなのか想像できず…。最後は落語のオチみたいだなと感じた。
    ブンのあのはちゃめちゃぶり(フン先生も大概だが笑)はアニメにしたら子ども達に受けそう。

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    2024年12月13日
  • 父と暮せば

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    宮沢りえの劇場版を観た後に読みました。

    ひろしまの言葉だからこそ伝わるものがあるように感じました。声になることで、人の身体が伴うことで、一層深く沁み込んでくるお話であるように感じました。

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    2024年09月21日
  • 十二人の手紙

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    手紙だけで構成されているという面白い内容。一体どんな話かと思って読んでみると、不気味なものだったり、少し笑えるものだったり、考えさせられるものだったり。
    手紙を通じて考えさせられる、それぞれの人生。
    特に役所への届出だけで構成されている修道女のエピソードが印象的だった。
    また、昭和の時代感も節々に感じる事ができた。
    メッセージが相手に瞬時に届く事が当たり前の現代だからこそ、手紙の良さを再確認すべきだと思う。

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    2024年09月20日
  • 吉里吉里人(中)

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    国会議事堂車が水上国際空港に到着し、大量の魚の変死を目撃するところから始まった中巻は、古橋の判決言渡し前には国外移住案件、その後は国境線での自衛隊との対峙と事件が続き、古橋がどさくさに紛れて花街に迷い込んだことから、ひょんな方向へ展開することになった。タックスヘイブン、日本の百姓への厳しいメッセージは、著者の問題提起である。古橋に訪れた春、そして吉里吉里国立病院での懲役労働の場面となり、吉里吉里国の周到な戦略が明らかになりつつ、本巻最後に日本国の諜報部員らしき影が……。

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    2024年09月16日
  • 新釈遠野物語

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    岩手旅行に行くので遠野物語を読もうと思い立った。中学生のころ、言葉遣いが難しく挫折した遠野物語。まずはライトなものを、と探していたら見つけた本書。オシラサマや河童の話を作家が煮詰めるとこうなるのか!と思った以上に面白い。
    著者は実際に釜石療養所で働いていたようで、それだからか、本当に語られている昔話のようなリアルさがあった。

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    2024年09月14日
  • P+D BOOKS 東京セブンローズ(下)

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    戦時中の話が興味深かった。代用コーヒーの質が下がって戦後に飲んだ純コーヒーの味をすごく噛み締めている様子が印象的だった。後は戦災で家をなくした人が貯金を下ろすときのシステムや床屋の様子など。
    旧字体が読みにくかった。かなを振って欲しかった。

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    2024年08月25日
  • 十二人の手紙

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    手紙というと近年は人情物の定番アイテムだが、本書は70年代の作品ということもあるのか、意外とサスペンス的なドンデン返しを主体とした構成となっている。
    電話やメール、SNSと、通信手段が格段に発達した現代から見ると随分まどろっこしい感じもするが、そこも含めて味わってほしい作品。

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    2024年08月15日
  • 吉里吉里人(上)

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    初ひさしが本書。なぜか吉里吉里というワードが脳内に残っていて、ネット古本屋にて入手。売れない作家・古橋健二を狂言回しにして、吉里吉里国独立の瞬間から、日本国を相手取った独立闘争をユーモラスに描く。<引用>日本国の国益だが言う物、もう真平……『国益の為だ、増産すろ!』『国益の為だ、減反すろ!』……ズーズー弁で訴えかける国の横暴がひしひしと伝わる。話が横道に逸れることが多く、上巻は午前6時の独立から半日程度しか経っていない。冗長感は否めないが、作品の世界観を理解する役には立っている。

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    2024年08月06日
  • 十二人の手紙

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    手紙など書物媒体が使われた短編小説の傑作。
    そして小説特有のあざとさを極力排除した作品でもある。結末を違う形に脚色すればもっとドラマティックなストーリーが期待できるのをあえて素っ気なく終わらせる(もちろん意外な結末の作品もある)ことで、その演出により物足りなさよりも現実世界の有り様を淡々と提示する、人生ってこんなモノというリアリティ効果をもたらすことにも成功している。さらに、プロローグと呼応したラストの短編は各短編の主な登場人物たちが一堂に会するという趣向も素晴らしい。
    そして最後まで読んで、各短編でのあざとさの排除は、実はエピローグで出てくる登場人物たちのその後を示唆するためだったのがわかる

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    2024年07月26日
  • おれたちと大砲

    購入済み

    力まないで読みました

    うらやましいくらいの人々ののんきな暮らしと抱腹するような事件が連続していて肩の荷が下りました

    #カッコいい #憧れる #シュール

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    2024年06月08日
  • 下駄の上の卵 (新潮文庫)

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    軟式ボールを手に入れるため、山形の野球少年たちが東京行きを目指すという冒険譚。
    戦後まもない日本の実情が明るく豊かに活写されている。
    特に山形の少年たちの目を通して覗く、東京の闇市や孤児らの描写は衝撃的。
    一見重いテーマだが、作者お得意のユーモアが炸裂していて読んでてちっとも飽きない。
    間違いなく日本人にしか書けない小説で、こういう作品が後世に受け継がれなきゃいけないと思う。
    井筒和幸の解説も的確でよい。映画化の企画が立ち上がっていたものの流れたとのことだが、是非実現してもらいたい。

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    2024年05月01日
  • 十二人の手紙

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     全部の短編が手紙、もしくは書簡形式で書かれており、最初と最後で印象がガラリと変わるのが印象的だった。そして、プロローグとエピローグの仕掛けも見事だった。

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    2024年04月03日
  • 吉里吉里人(上)

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    情報小説
     三読目。日本SF大賞受賞。

     小説全体、たいへん下世話で、下ネタが苦手なひとは読まないほうがいい。とにかく性器、性行を連想させる下ネタばかり。下ネタ大好き中学生ならぐいぐい読める。

     ストーリー展開が奔放でめっぽうおもしろい。東北から吉里吉里国が独立するのだが、そのための切札をたくさん控へてゐる。その説明で蘊蓄の渋滞だが、とにかく説得力が高い。おれにでも分離独立できるのではないか、と感じ入ってしまふ。
     中巻でケイコ木下が出てきたあたりから、すこしダレてくる。

     ところどころ、都合よく進展させるために、古橋といふこの単純な人物造形にしたのだらうと気づいた。
     比喩は下手。この

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    2024年03月31日
  • 吉里吉里人(下)

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    文庫本(三部作)に改訂する前の単行本で読んだ。
    読みはじめ、何度も「何でこんなのを読まなければならないのか」の自問に襲われ、エンジンをかけるのに手こずった。
    この作品は壮大な構想のもとで、奇想天外・パロディ・下ネタエロ・ダジャレ・ギャグ・ユーモア・類語反対語羅列‥‥冗談のようなノリの文章が延々と続き、常識をひっくり返しまとめ上げたユートピア創造の長編小説である。話題の事柄や背景を克明に説明し作者の洽覧深識をこれでもかと描く。一国独立の法的根拠などいろいろなことをよく調べその描写がとにかく長い。読んでるのが馬鹿らしくなり、ついていくのを止めようと思う。読者の許容範囲の限界ギリギリを挑発し、楽しん

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    2024年02月18日
  • 「けんぽう」のおはなし

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    ネタバレ

    実に分かりやすい!(大人にも)
    「国や政府は大きな力を持っています。国を治めている人たちがその力を利用して、好き勝手なことをしないように、私達国民が「憲法」という決まりを作って、歯止めをかけているのです。」
    総理大臣はじめ、政治家、検察、裁判官のみなさん知ってましたかー???
    子ども向けの絵本にもちゃんと書いてありますよー???
    最近おかしなことばかりニュースになってますけど、好き勝手やってませんよね?ね?
    子ども達のお手本ですもんね?ね?
    よろしく頼みますよ!!!!!

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    2024年01月20日
  • 十二人の手紙

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    全て手紙という形式の短編小説。
    前に書かれたもので時代を感じさせる描写が多いがそれがまた良い。
    淡々と物語が進むがそこから見えてくる人間模様が面白かった。

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    2023年12月18日
  • 言語小説集

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    言葉を巧みにあやつり、今までみたことのない小説が描かれていた。鉤括弧を擬人化した人はこの人がはじめてでないだろうか。小銭も擬人化したりと、擬人化の走りとも言えそう。また、梅毒におかされた男の身体を元に大戦模様を描くのも面白かった。すごいセンスの作者であった。

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    2023年12月18日
  • モッキンポット師の後始末

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    ▼中高生の頃、というと1980年代だったんですが。携帯以前、そして書籍界的には「BOOKOFF以前」だったあの頃、首都圏郊外の小さな「駅前本屋さん」の文庫本コーナーに文字通り日参していました。毎日買うわけではなく、毎日のように文庫本コーナーで、文庫本の「背表紙の紹介文」をとっかえひっかえ読む。割と毎日のように読む。当然ながら同じものを何度も読む。そうやって気になったものをやがて買う。同じような思い出がある人は、この世代には多いはず。

    ▼そんな時期によく井上ひさしさんを読んでいました。そして、この本はその頃からのお付き合いで、なんだけどなんとなくご縁がなく未読だったグループの一員。幾星霜を経て

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    2023年10月21日
  • 新釈遠野物語

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    遠野物語は柳田国男の原作に限る。現代語訳や京極夏彦が脚色したものも読んだが、正直つまらない。遠野物語の迫力は柳田の文体により作られたものといえよう。
    ただ、この新釈遠野物語は別物で、面白い。遠野物語の原作をそのまま使っているのではなく、材料をうまく戦後まもなくの時代に落とし込んでいる。遠野物語を読んだことのある人なら、ああ、あの話か、と分かる。このころまでは、柳田の遠野物語と地続きだったのだろう。

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    2023年10月09日