あらすじ
昭和21年7月。憧れのまっ白な軟式野球ボールを手に入れるため、山形から闇米抱え密かに東京へと向かった国民学校六年生の野球狂の少年たち。その大冒険は、疲弊と混乱の極みに達した東京の街を舞台に、一進一退のシーソーゲームとなって展開していく。眼前に広がる敗戦の実像、しかし人々はなおしたたかに生きている。戦後とはいったい何だったのかを少年たちの視点から繙(ひもと)いた永遠の名作。(解説・井筒和幸)
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Posted by ブクログ
面白かった。
少年たちの思いも、動きも、関係性もとてもリアル。
ボールが手に入りそうになると、がんばれ! と、応援したくなるし、
その手から無くなりそうになると、あぁ…と心配になる。
すごいな、と思うのは彼らの信頼関係。
ボールが手に入るチャンスを誰かに賭けたら、後で責めたりしない。
なくなっても、ボール目的じゃない別行動をとっても、
ちゃんと理由を話して、「それじゃあな」という感じ。
このさっぱりした思いやりが、とても気持ちよかった。
この子たちを好きにならずにはいられない。
Posted by ブクログ
軟式ボールを手に入れるため、山形の野球少年たちが東京行きを目指すという冒険譚。
戦後まもない日本の実情が明るく豊かに活写されている。
特に山形の少年たちの目を通して覗く、東京の闇市や孤児らの描写は衝撃的。
一見重いテーマだが、作者お得意のユーモアが炸裂していて読んでてちっとも飽きない。
間違いなく日本人にしか書けない小説で、こういう作品が後世に受け継がれなきゃいけないと思う。
井筒和幸の解説も的確でよい。映画化の企画が立ち上がっていたものの流れたとのことだが、是非実現してもらいたい。