井上ひさしのレビュー一覧
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ネタバレ母に薦められて読んだ本。
全く何の知識もなく読み始めて、まえがきで原爆のことなのだとわかり、覚悟して読む。
読みながら、思いがけず3.11の津波のことを考えた。津波の後、この作品の父と娘の別れの回想と同じような体験談を読み、胸がえぐられた。全編通して、とても辛いのだけど、父の思いが前を向いていて、救いがある。
原爆の資料集めやその際の言論が占領軍によってコントロールされていたのは知っていたけど、民間人がひしひしと感じ、そして話せない沈黙の中でどれだけのものが失われ続けただろうと考えると、やるせないし、また、原爆被害にあったものの子孫として、自分のこれだけの距離感はこの「話せない」「話さない」こ -
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井上ひさしが十代の少年だったころ、学校の先生は、生徒たちに「君たちは20代前後までしか生きられない」と話していた。戦争の時代だったからだ。でも井上ひさしは20代よりずっと長く生きている。戦争が終わったから。そしてあの敗戦後に、日本が戦争に巻き込まれることは最近まで無かったから。
私たちの憲法は美しい。私が受けた学校教育では、憲法が取り上げられることはなかったと記憶している。私が忘れているの?たまたま専攻が違ったの?
日本国憲法を変える必要があるにしても、変える前に、この社会を生きる人たちの間で、もっと現在の憲法が意識されるべきだ。ましてや、大日本帝国などというカルト国家を信奉している無能な -
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江戸時代、離縁を求めて寺へ駆け込む妻とその夫のほつれを解きほぐしてゆく時代物ミステリー。
映画を先に観ました。
映像美、登場人物たちの愛らしいキャラクター、起伏あるストーリーなどどれをとっても素晴らしくて、興奮冷めやらぬ思いで帰り道に原作を購入しました。
原作を読んでまた驚愕。
映画とはだいぶ違う!
小説はオムニバスなんですね。
映画はオムニバスの要素を残しつつ、全体を通しての起承転結もつくられていて素晴らしいエンタテイメント作品になっていました。
小説は小説、映画は映画として楽しめるそれぞれプロのお仕事ぶりを感じて唸ってしまいました。 -
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井上ひさしは 日本語が好きな日本人だなと読みながら思った。
辞書が、睡眠薬という言葉から、活字中毒者の症状がでている。
たぶん 辞書を読んだら イメージがわいてきて 眠れなかったのではないか。
物知りの話には飽きてしまう。
未来を見据え、英知をつくり出せる真の知者が思いのほかに少ないという指摘は強烈である。
選定した本が、井上ひさしらしい。ちょっとやそっとでは、読めないものがある。
それでも、読み砕いた上に、自分の進むべき方向を示している。
戦争のもつ被害者、加害者 そして 戦犯裁判の意味を深くとらえようとする姿勢がすばらしい。
乃木大将より、伊能忠敬が上だと言う辞書の活字数評価がおもしろい。