井上ひさしのレビュー一覧
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上中下巻と、面白くて一気に読んだ。吉里吉里人を読みながら、日本の内部で吉里吉里国が独立するという設定がイスラム国の比喩のようにも取れたし、また『横浜駅SF』を思い出しもしたし、あらゆる吉里吉里に関する要素が百科事典的に記されている様はメルヴィルの『白鯨』のようでもある。それにしても、日本で『白鯨』のような大きな物語を持った古典に『吉里吉里人』が相当すると考える人はあまり多くないかもしれない。国の内部で国としての独立を立ち上げる視点は大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』そのものだし、日本は日本国内での独立、地方の自立をカノンとして持っているというのは、英文学やフランス文学にはあまりない特徴のように感じ
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教会の孤児院を舞台にした短編3作。
高校に入学するため、孤児院に入った利雄は、同室に割り当てられた高校生の昌吉に目をつけられる。昌吉から何かと「しごき」を受けていた利雄であったが、昌吉は突然「丸木舟で川下りをしろ」と言い始め…。
いじめられ、しごかれる表現が最後の作品を除いてずっと続き、それはほとんど救われないため、非常に読んでいて辛い作品群であるが、その重圧が読者を引き込んでいく。最近の作家か編集者かは知らないが、重苦しい雰囲気をなるべく短く終わらせようという傾向が強く、重苦しいものを重苦しいまま描くということができているのは、重松清くらいではないのか。
それはさておき、電車の中で読ん -
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ネタバレ母に薦められて読んだ本。
全く何の知識もなく読み始めて、まえがきで原爆のことなのだとわかり、覚悟して読む。
読みながら、思いがけず3.11の津波のことを考えた。津波の後、この作品の父と娘の別れの回想と同じような体験談を読み、胸がえぐられた。全編通して、とても辛いのだけど、父の思いが前を向いていて、救いがある。
原爆の資料集めやその際の言論が占領軍によってコントロールされていたのは知っていたけど、民間人がひしひしと感じ、そして話せない沈黙の中でどれだけのものが失われ続けただろうと考えると、やるせないし、また、原爆被害にあったものの子孫として、自分のこれだけの距離感はこの「話せない」「話さない」こ -
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井上ひさしが十代の少年だったころ、学校の先生は、生徒たちに「君たちは20代前後までしか生きられない」と話していた。戦争の時代だったからだ。でも井上ひさしは20代よりずっと長く生きている。戦争が終わったから。そしてあの敗戦後に、日本が戦争に巻き込まれることは最近まで無かったから。
私たちの憲法は美しい。私が受けた学校教育では、憲法が取り上げられることはなかったと記憶している。私が忘れているの?たまたま専攻が違ったの?
日本国憲法を変える必要があるにしても、変える前に、この社会を生きる人たちの間で、もっと現在の憲法が意識されるべきだ。ましてや、大日本帝国などというカルト国家を信奉している無能な -
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江戸時代、離縁を求めて寺へ駆け込む妻とその夫のほつれを解きほぐしてゆく時代物ミステリー。
映画を先に観ました。
映像美、登場人物たちの愛らしいキャラクター、起伏あるストーリーなどどれをとっても素晴らしくて、興奮冷めやらぬ思いで帰り道に原作を購入しました。
原作を読んでまた驚愕。
映画とはだいぶ違う!
小説はオムニバスなんですね。
映画はオムニバスの要素を残しつつ、全体を通しての起承転結もつくられていて素晴らしいエンタテイメント作品になっていました。
小説は小説、映画は映画として楽しめるそれぞれプロのお仕事ぶりを感じて唸ってしまいました。