あらすじ
「……絶望するには、いい人が多すぎる。希望を持つには、悪いやつが多すぎる」この国のありようを憂い、虐げられた人々のために、『蟹工船』や『党生活者』などの傑作を発表し、ペンを武器に国家権力に闘いを挑んだプロレタリア作家・小林多喜二。29歳という、その早すぎる死までの波乱の数年間を描く評伝劇。多喜二、その姉、故郷に残した恋人、偽装夫婦となる女同志、執拗に追跡する特高刑事……笑いと涙のなかに、登場人物たちそれぞれが胸に抱える苦しみや夢が浮かび上がる。官憲によって虐殺された多喜二の死の先に見えたものは何か? 格差と閉塞感にあえぐ現在の私たちは、「あとにつづくものを信じて走れ」と叫ぶ多喜二の理想を忘れてはいないか? 井上ひさし最期の戯曲にして未来へのメッセージに満ちた傑作。
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Posted by ブクログ
井上ひさしという人間はDV野郎だから嫌いだけど、そんな人間がどうしてこんな作品を描けるんやろうと思う。小林多喜二に惹かれていく特高の刑事がこの話の救いだ。先日の韓国での戒厳令で、薬莢が空っぽだった軍人たちを想起した。国民には本気で向かい合わなかった軍隊。「絶望するには、いい人が多すぎる。 希望を持つには、悪いやつが多すぎる」
Posted by ブクログ
先日舞台を見てきた勢いで借りました。戯曲脚本形式なので普通に読むのはちょっと読みにくいかもしれませんが。舞台を見たあとでは、あのときのあの台詞が甦ってきて二度美味しいという感じ。名前だけ知っていた小林多喜二の人生は壮絶で、現代社会にも通じる様々な怒りを感じました。そんな中にも井上ひさしさんらしい、笑いユーモアもあり、もっともっと作品を世に送り出して欲しかったとしみじみ思いました。
Posted by ブクログ
井上ひさしの最後の戯曲。
小林多喜二とその周辺。
虐殺のあたりはさらりと書かれている。
こういうテーマの作品をシリアスに描くのではなく、軽みを含んで表現できるのが井上ひさしの真骨頂だ。