あらすじ
吉里吉里国の独立に日本国政府は仰天、自衛隊が出動し、国民の眼はテレビに釘付けとなった。防衛同好会が陸と空から不法侵入者を監視する吉里吉里国では、木炭バスを改造した「国会議事堂車」が国内を巡回、人々は吉里吉里語を話し、経済は金本位制にして完全な自給自足体制。独立を認めない日本国政府の妨害に対し、彼らは奇想天外な切札を駆使して次々に難局を切り抜けていく。
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Posted by ブクログ
抱腹絶倒とにかく面白い。ジャンルを言うなら妄想小説R15指定。主人公のオッサンにイラッとしながらもぐいぐい引き込まれていきます。
出会いは行きつけの大型書店。奇抜なタイトルが目に入って書棚から手に取り、表紙の絵に惹かれてペラペラ捲って見る。ルビが多い小説だと思ったらなんと東北弁訳。期待値マックスでレジへと直行でした。
物語はと言うと・・・これが実にえぐい話なのです。小説が醸し出す独特の世界観に酔います。まずはご一読あれ。
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上中下巻と、面白くて一気に読んだ。吉里吉里人を読みながら、日本の内部で吉里吉里国が独立するという設定がイスラム国の比喩のようにも取れたし、また『横浜駅SF』を思い出しもしたし、あらゆる吉里吉里に関する要素が百科事典的に記されている様はメルヴィルの『白鯨』のようでもある。それにしても、日本で『白鯨』のような大きな物語を持った古典に『吉里吉里人』が相当すると考える人はあまり多くないかもしれない。国の内部で国としての独立を立ち上げる視点は大江健三郎の『芽むしり仔撃ち』そのものだし、日本は日本国内での独立、地方の自立をカノンとして持っているというのは、英文学やフランス文学にはあまりない特徴のように感じる。
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国会議事堂車が水上国際空港に到着し、大量の魚の変死を目撃するところから始まった中巻は、古橋の判決言渡し前には国外移住案件、その後は国境線での自衛隊との対峙と事件が続き、古橋がどさくさに紛れて花街に迷い込んだことから、ひょんな方向へ展開することになった。タックスヘイブン、日本の百姓への厳しいメッセージは、著者の問題提起である。古橋に訪れた春、そして吉里吉里国立病院での懲役労働の場面となり、吉里吉里国の周到な戦略が明らかになりつつ、本巻最後に日本国の諜報部員らしき影が……。
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真面目なのだか、巫山戯ているのか分からない物語。
だが、不思議と惹き込まれてしまう。
吉里吉里語が、読みにくいのだが、癖になる。
下巻で、この物語がどういう、結末を迎えるのか非常に楽しみである。
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厚いけど読みやすいので、いいペースで読み進んでいる感じ。中巻読み終わったところで、心の底から汚い中年おっさん古橋を応援している。どうか古橋が、ケイコ木下(きおろし)と幸せになれますように!
P127 「わたしはのう、お若い皆さんよ。その仮想敵国も喰えない国だが、アメリカもなかなか油断のならぬ国だと思っておるよ。なにしろアメリカはこれまで自分の国の中でドンパチをやったことがない。つまり、アメリカにとって<戦争>と<平和>は、いつも遠いところにあったのさ。だからいざとなったらどんな残酷なことでもやってのけるだろうて。その証拠にアメリカは、原子爆弾をあなた方のお国のヒロシマとナガサキに落っことした。その点ではその仮想敵国の方がいくらか戦争のむごたらしさを知っているのではないかしらん。というのはその仮想敵国は通常兵器による戦争で、米国人よりは、はるかに大きな被害を受けているからねえ。もっとも、その差たるや五十歩百歩で、どっちも同じ穴の狢だがね」
P279 『百ショーほど素敵な商売は無い』のくだり、笑える。ミッチー・ミラー合唱団的なノリで出てくる吉里吉里中年百姓合唱団の面々。
P376 ページの飛ばし技エクスキューズ部分、まんまと感心させられてしまう。
P454 『看護覚え書』(ノーツ・オン・ナーシング)と『無駄書き集』(ノーツ・オブ・ナッシング)みたいな芸の細かい言葉遊びの面白さ。
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どんどん筆が乗る中巻。
下ネタはいろいろギリギリなところまでエスカレートし、おかしな方向に転がっていく。
特筆すべきは経過しない時間。
中巻では吉里吉里国が独立してからまだ24時間やっと経つくらいである。時間の進み方に驚いた。
吉里吉里語にも慣れてきて、面白くなってくる。
農業批判の辺りがSFらしくて面白いなぁと思う。
これ普通の現代ノンフィクションでやっても、生々しくなるばかりで面白くは読ませられないよね。きっと。
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くだらない話のように書かれているが…国の構想はよく考えたものだ。ときどき登場人物が作者に代わって持論を展開するところは、これぞ、自説を語る「小説」といったところか。
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吉里吉里人が並べ立てる理論はどれも骨太で,何よりも愛国心に満ちている点で一見手強そうに思えるが,天上からの暴力には無力であった。この筋が何を示唆しているのかは,現代だと少し意味合いが変わってくるだろう。
文章の大半は悪ふざけの域であり,ここは読者の好みの分かれるところだろう。私は読んでいて面倒だと感じることのほうが多かった。
Posted by ブクログ
中巻に入って、話のテンポが上がり、俄然面白くなってきた。
言葉遊びの散りばめられた、荒唐無稽のストーリー展開の中に、国にまつわる様々な社会問題が提起され、その本質が描かれていく。
民族の独立問題、国家防衛(自衛隊の存在)と日米同盟、憲法9条、経済と性的産業、農政問題、医療や看護の問題と福祉の問題。日本と吉里吉里国を対比し、日本の社会問題を抉り、吉里吉里国での対策が描かれる構成で、社会問題を解決する理想形を紡いで行く。
どれも重たい課題なのに、冗長過ぎる様な馬鹿馬鹿しいストーリーと、吉里吉里語の言い回しで、易しく、所々で吹き出しながら、読み進められる。
エログロナンセンスだけど、実はテーマは重いのかも。
吉里吉里中年百姓合唱団の歌の中で、『百姓は土を耕す。耕すとは文化と同じ語源でカルチャーだから、百姓は文化人だ』と高らかに吉里吉里語で歌うシーンが圧巻。
Posted by ブクログ
中弛み感を強く感じ、読むのが若干苦痛になってきた。話の本筋が見えなくなり、小ネタを散りばめたような中巻でした。
下巻はもう少しスピーディーになることを期待したい。果たして吉里吉里国の顛末はどうなるのか?