井上ひさしのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
お気楽な若旦那たちは、恵まれた環境ゆえに世間をなめ、自分探しの果てに自爆していく姿がとにかくリアルでイタい。
『手鎖心中』の栄次郎は、まさに「承認欲求のこじらせ」。天才になれない自分の才能のなさを自覚しているからこそ、作品の質ではなく「お上に捕まる」というスキャンダル(今でいう炎上商法)で話題になろうと暴走する。「何者かになりたい」という凡人の執着は、現代のSNS社会にも重なる痛々しさだ。
一方の『江戸の夕立ち』は、「身の程知らずな道楽と甘え」の自滅劇。親や周囲がなんとかしてくれるという世間知らずな甘さが、じわじわと自分の首を絞めていく過程は、自業自得ながら滑稽で冷ややかなおかしさがある。
落語のような軽快な笑いで始まった物語が、気づけば笑えない悲哀や虚しさに変わる「おもろうてやがて悲しき」世界観。
手段や時代が変わっても決して変わらない、人間の浅はかさと愛おしさを突きつけられる二作です。 -
Posted by ブクログ
本書は、子どもにも分かるように、日本国憲法に込められた平和への願いを伝えようとした本(絵本?)。文章も絵も親しみやすいけれど、個人的には少し物足りない。加えて、この本のメッセージを意識して手に取る子どもがどれほどいるのだろうか、とも思った。むしろ、憲法や戦争についてある程度の知識や経験を持つ大人の方が、この本の価値を深く感じられるのでは。それも本書の狙いか。
本の感想とは外れるけれど、現在の世界では、ロシア・ウクライナ戦争や中東での武力衝突など、現実として戦争が起こっている。歴史を振り返っても、人類にとって平和な時代の方が例外なのかもしれない。そのような中で、この時代の日本に生まれ、戦争を経験せずに暮らせていることは、とても恵まれたことなのだとヒシヒシ感じる。
この本から伝わってくる「二度と戦争を繰り返してはならない」という願いには、多かれ少なかれ誰もが共感するだろう。平和憲法の理念を現実の国際情勢の中で貫き続けることは簡単ではないけれども、理想だからこそ掲げ続ける価値があるとは思う。
日本国憲法を学び直すためのキッカケに手に取ってたが、大人の学習用としては少し当てが外れた。とはいえ、コンセプトには賛同するし、この本の価値についても良く理解できる。 -
Posted by ブクログ
最初はあまりにも奇抜な内容と文体に馴染めず、何度か挫折しそうになった。
何とか中盤から、少しずつ面白さを感じるようになってきて一安心。
著者が劇作家だけに、「切り取り線」や「のりしろ」あるし、突然キャラが歌いだす舞台風の演出など遊び心満載で思わず笑いが込み上げてくる。 (((*≧艸≦)ププッ
物語の中で、ブンは「やりたいことがある」と語っていたが、結局彼の本当の目的は何だったのだろうと考えさせられた。
奇想天外な大泥棒の裏にある、様々な社会風刺も深い。ラストの「盗みましょうよ~」の歌がやけに心に残った。
ふと、脳内で銭形警部が「奴はとんでもないものを盗んでいきました。それは、私たち読者の心です。」と叫んでいる。