井上ひさしのレビュー一覧

  • 不忠臣蔵
    『井上ひさし短編中編小説集成第10巻』より
    赤穂浪士から漏れた人々を史実を元に創作した時代小説。

    年寄れば愚にかえる275
    「士は師たるべし」(山鹿素行)(太平の世の中では武士は無用の者。耕しも、造りも、商いもせず禄を食む。そんな世で武士というものが必要とされるべき性質は、正義や倫理の手本として日...続きを読む
  • ナイン
    こんなに読み終わるのに時間がかかった本は久しぶりだった。2週間かけてやっと読み終わったが、字の小ささに驚いたし文体が多分自分に合っていなかったんだと思う。
    教科書に「握手」が載っていたので、その続きでも読めるのかな〜と軽い気持ちで読んだが教科書とほぼ終わり方が一緒でガッカリした。しかし、それに引き換...続きを読む
  • ナイン
    東京が舞台の16篇の短篇小説を収録。1987年刊。
    表題作の「ナイン」は、中学の野球部でキャプテンだった正太郎が大人になって周りに迷惑をかけるも、元チームメイトたちが彼を庇うという話。夏の日差しに影を作ってくれた優しいキャプテンだったからこそ、みんなで支えようとしていた。昭和な街並みの風景がどこか懐...続きを読む
  • 吉里吉里人(上)
    日本から分離独立を宣言した東北のとある山村を巡る顛末。
    時にユーモラスに、時に下世話に、あっちへ行ったりこっちへ来たりしながら饒舌に語られる。
    まだ国鉄のグリーン車で煙草が吸えた、古き良き時代の作品。
  • ナイン
    最も印象に残ったのは、タイトルにもなっている「ナイン」だった。幼い頃に感じた大きな大きな信頼は、あの頃から多くの時間が過ぎ去り大人になっても揺るがない。決して色褪せることのない当時の気持ちと光景。それはとても尊いことのように感じた。
  • 東慶寺花だより
    2010年4月に亡くなられた井上ひさしさんの遺作
    単行本は 2010年11月に出版

    鎌倉の「かけこみ寺」東慶寺の御用宿の居候が語る話15編
    女性の名と季節の花を織り込んで江戸時代を写し取っている

    それぞれ興味深い話だけれど
    どの人物も独り立ちしてるなあと

    あとがきで作者が「江戸時代から女性は十...続きを読む
  • 四千万歩の男(三)
    幾多の妨害や刺客に狙われながらも蝦夷地測量を続け、ニシベツにて折返し、ようやく江戸に戻り、お上に地図を届け無事に役目を終えるかと思いきや、まだまだ一件落着には至らず。物語は続きます・・。
  • 四千万歩の男(一)
    (再読)56歳から天文学をおさめ歩測で日本地図を作製した伊能忠敬の愚直な記録をもとにした小説。
    忠敬の右肩に乗った感覚での筆致に納得した記憶がよみがえる。
    第1巻は子午線1度の距離を測って蝦夷へ渡るまで。
  • 十二人の手紙
    手紙を使った作品集。
    手紙だけに真実もあり、虚実もあり、ちょっとブラックな終わり方もあり、楽しめた。
    ただの作品集かと思ったら最後に一つにまとまり、面白かった。
  • モッキンポット師の後始末
    大学生3人組の引き起こす騒動と、後始末に奔走しながらも3人を温かく支える、関西弁のモッキンポット神父のお話です。コミカルなだけではなく、終戦間もないころの雰囲気が伝わってきます。
  • おれたちと大砲
    ★3.0

    『世の中の馬鹿をおれたち四人が代表で請け負ってるみてえだ』(五人)
    という一言に尽きる。
    幕末、将軍慶喜を助けるために立ち上がった『黒手組』五人の仲間のドタバタ珍道中。

    井上ひさし氏の頭の中はどんな風になっているのだと思いながら時々吹き出しつつ、歴史の空気を感じながら読むのは氏の作品ら...続きを読む
  • 十二人の手紙
    全編書簡形式で構成されている、趣向を凝らした技巧の光る短編集。

    語り口が手紙や手記で構成される作品はこれまでも何作か読んできましたが、この『十二人の手紙』はその中でも特にユニークな仕掛けや、技巧の光る作品でした。

    特に「赤い手」という短編は、手紙だけでなく出生届や婚姻届といった人生の転機に役所な...続きを読む
  • 井上ひさしの 子どもにつたえる日本国憲法
    2012年2月27日
    子ども用に買ったものだけど、自分でも読んだ。

    基本的には純粋な平和のお話だと思う。

    が、疑問に思ったところがいくつかあった。
    普通の大人ならとーぜん知ってることかもしれないんだけど、私はどーにも、あほすぎる…

    疑問その1
    (p40「あたらしい憲法のはなし」の引用より)
    ...続きを読む
  • 吉里吉里人(上)
    かつての師に勧められた事を思い出し、読んでみた。

    日本でとある村が吉里吉里国として独立を宣言したというあらすじから、御伽噺のようなものを想像していたが、国とはなんなのか、考えさせられるものになった。
    吉里吉里人は、独自の言語や通貨を持ち、資源等も自給体制を整えて、政治的な大義名分なども掲げている。...続きを読む
  • 井上ひさしの日本語相談
    同シリーズの雑学要素たっぷりで勉強にもなる大野晋版と読み合せると、この井上版はどちらかというと読み物として面白い。
    残念なことにエッセイとして良くできているので書かれてあることがそのまま馬耳東風になってしまい、知識として定着しないところ。
    一答ごとに膨大な資料を使って、一文字あたりかなりの金額になっ...続きを読む
  • 新釈遠野物語
    遠野物語をベースにしつつ、昭和28年頃に、山中に住む不思議な山男から聞いた話として、複数の小話が綴られている。
    東北で語り継がれてきたであろう話がベースになっているものと思うが、一昔前の東北地方で苦しい生活を送っていた人たちの様子や、人間と動物の情愛など不思議な話が多く、変な話だと思いつつも、なぜか...続きを読む
  • 十二人の手紙
    どれも思いがけないオチがあった

    昔の作品なので、文調が古いけれど、それもこの作品を引き立てているのかな

    「玉の輿」good
  • 新釈遠野物語
    「遠野物語」のパロディかと思って読み始めたが違った。そこに下地はあるものの独創的なファンタジーである。山の神、精霊、河童、狐付き。都市では失われた自然との交歓をユーモアたっぷりに語ってくれる。2021.2.4
  • 不忠臣蔵
    吉良家への討ち入りに参加しなかった、またはできなかった旧赤穂藩士たちを描いた、忠臣蔵に纏わるアナザーストーリー。
    血の通った文体とストーリーは、まるで講談を聞いている様だ。
  • 吉里吉里人(中)
    中巻に入って、話のテンポが上がり、俄然面白くなってきた。
    言葉遊びの散りばめられた、荒唐無稽のストーリー展開の中に、国にまつわる様々な社会問題が提起され、その本質が描かれていく。
    民族の独立問題、国家防衛(自衛隊の存在)と日米同盟、憲法9条、経済と性的産業、農政問題、医療や看護の問題と福祉の問題。日...続きを読む