井上ひさしのレビュー一覧
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井上ひさしさんが亡くなって8年になります。
「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」を座右の銘に『ブンとフン』や『四十一番目の少年』『新釈遠野物語』『吉里吉里人』など、多くの作品で私たちを楽しませ、考えさせ、そしてちょっぴり泣かせてくれました。
本書は、その基にある膨大な読書と勉強の一端の、さらに雫の一滴のおすそ分け。新聞の書評、同郷の藤沢周平さん、義姉の米原万里さんの作品の書評を収めています。
弱い立場の人の側に立たれ、目線を低く実相を見極めようとされました。選書にその姿勢が表れています。
『チラシで読む日本経済』(澤田求ほか)、『見たくない思想的現実を見る』(金子勝、 -
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・括弧の恋
・極刑
・耳鳴り
・言い損い
・五十年ぶり
・見るな
・言語生涯
・決戦ホンダ書店
・第惨事人体大戦
・親銭子銭
・質草
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括弧の恋を見て、バカリズムのライブを思い出した。
記号や言葉、無機物を単なる表現の手段としてではなくあたかも生きているかのようにとらえた作品が印象的。(決戦ホンダ書店、親銭小銭)
後は言語障害に関わる作品も多い印象。(言い損い、言語生涯)
タイトルがタイトルなだけに、いずれも切り口は違えど言語に関わる話。
ふっと思いついた一見くだらない言葉遊びを何とも面白く小説として成立させてしまった、そんな印象の短編集。 -
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ネタバレ一応「SF」小説だと言うから読んだのだが、かなり期待の斜め下を行く作品だった。
SF的ガジェットは無くもないが、ほとんど冗談のような医療技術に負う所が大きいからだ。
東北の一寒村が日本政府に対して独立を唱えるという発想は面白い。
そしてその手法が軍事独立ではなく文化的戦略による独立である事も。
色々言うとネタバレになってしまうのだが「吉里吉里国」の戦略は用意周到かつ大胆、しかしどこか肝心な所が抜けている。
本作は上中下の三巻にも及ぶ長編だが、作中の時間はたった二日にも満たないという「ロミオとジュリエット」にも負けない強行軍だ。
それだけ出来事が濃縮されているかと言うとむしろ逆で、暇な -
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憲法って何のためにあるのか、知ってますか?
そんなこと偉そうに言えませんが(笑)、私も最近になって学び直しています。
改憲をしようとする政治家がいる今、
唯一の被爆国である日本は、多くの犠牲を伴った『戦争を放棄』した。どんな背景があって、どんな意図があって今の世の中ができたのか。子供だけでなくて大人も知る努力が必要なんだと思う。
私たちの存在と権利を大切に守ってきてくれた憲法を子供にもわかりやすく説いた絵本。
『人間一人ひとりを、かけがえのないそんざいとして、たいせつにする社会、それをいちばんだいじにしていこう、というのが日本の「けんぽう」です。(文中より)』
5/3は日本国憲 -
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複数巻の長編を平行に読破しよう月間。ゆるゆるとでも続けないと。
秋子くんが猫になったまま行方不明となり、人間に戻った清と良三の間で、今後の猫 vs 鼠戦争をどうするのか、そもそもなんでそんな話になったのかという方向へ。
「ドン松五郎」方面の動物大戦争でずっと進むかと思った上巻から全く方向性の変わる下巻。話は予想もしなかった、悪魔の仲間となって、神様仏様と対決するのだ。ネタバレ?いや、このくらい書いても、上巻を読んだ人にだって、わからんでしょ?
上巻で銀座に有った店の名前を羅列するような、枚数稼ぎ的なものは無いとは言わないが(資生堂の話とか…)、かなり減り、過去の神話や伝説、昔話のたぐいを -
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第二次世界大戦中の東京、オデオン堂というレコード屋一家とその仲間たちのてんやわんや。
いい曲ならばジャズのような敵国音楽だって取り扱う店の方針、だけでなく、長男の正一が脱走兵となり憲兵に追われているせいで、非国民の家だと非難されるオデオン堂。とはいっても彼ら自身は「反骨の家」といったイデオロジックな雰囲気ではなく、明るくのんきに暮らしている。しかしさすがにやりにくくなってきたので、娘のみさをを傷痍軍人の源次郎と結婚させて「美談の家」となることで急場をしのぐ。
教育勅語製な軍人さんであった源次郎がオデオン堂の人たちとの交わりで変化していくところがやはりみどころか。
こんな時代に生まれてくる子ども -
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再読。と言っても、あらかた話は覚えてなかったので新鮮な気持ちで読めた。改めて、一流の作家の先進性、世の中を見る慧眼に驚かされた。
細部では今となっては、古臭く効果を減じている部分もあるが、物語が提起している話題は全く古びていない。逆に言えば世の中変わっているようで変わってないわけだが・・・
個人的には、余りにしつこい下ネタに辟易するところもあったり、現実離れした人物設定、饒舌すぎて読むのに苦労した点はあったが、概ね楽しめた。東京で育った私には農家の苦労も怨念も分からないが、元は両親の出は農家である。遺伝的には、多くの日本人同様百姓である。仕事で、東北に行くと、荒れ果てた休耕田を見て心が痛む -
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吉良邸討ち入りに参加しなかった赤穂浪士のそれぞれの事情を連作短編にした本。
400ページを超えるボリュームもさることながら、内容の点でも、ずっしり来る。
討ち入りに参加することの方が安易。誰か、何かのために生き続ける道を選んだ方がいばらの道。
討ち入りは太平の世になり、活躍の場を失い、それ以外に生きるたつきもない浪人たちが死に急いだのではないか、と問いかけられていく。
討ち入りに参加した「義士」たちのほとんどが馬廻役、浅野内匠頭から遠い者たちばかりで、近く仕えた者たちには慕われていない君主であるという指摘にも、はっとする。
取り上げられた「不忠臣」たち誰も、これまでには聞いたことのない人物た -
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東北の小さな村、吉里吉里が日本からの独立を宣言!吉里吉里国を名乗る。馬鹿げた話なんだけど、あの手この手に手が凝っていて面白い。
無駄な会話、話の本筋には不要な余計な描写が数多くあるのだけど、ユーモアのセンスに富んでいてかなり笑えて嫌に感じない。
この吉里吉里国独立宣言時にたまたま居合わせた、売れないダメ作家の古橋。この人のエピソードがまた非常に笑えた。本筋には全くもって不要だと思うけど(笑)
上巻だけでさえもかなり長かったけど、ただ長いだけじゃなく面白い。引き続き中下巻も楽しみです。
敢えてジャンル分けするなら、「SFコメディ」でしょうか(笑)