井上ひさしのレビュー一覧

  • 私家版 日本語文法

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    井上流の日本語と文法にかかわるエッセー。例文が面白い。なんと、「は」と「が」についての考察には、デヴィ夫人へのスカルノ元大統領のラブレターが取り上げられている。

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    2018年10月20日
  • 井上ひさしの読書眼鏡

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    井上ひさしさんが亡くなって8年になります。
    「難しいことを易しく、易しいことを深く、深いことを面白く」を座右の銘に『ブンとフン』や『四十一番目の少年』『新釈遠野物語』『吉里吉里人』など、多くの作品で私たちを楽しませ、考えさせ、そしてちょっぴり泣かせてくれました。

    本書は、その基にある膨大な読書と勉強の一端の、さらに雫の一滴のおすそ分け。新聞の書評、同郷の藤沢周平さん、義姉の米原万里さんの作品の書評を収めています。

    弱い立場の人の側に立たれ、目線を低く実相を見極めようとされました。選書にその姿勢が表れています。
    『チラシで読む日本経済』(澤田求ほか)、『見たくない思想的現実を見る』(金子勝、

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    2018年10月03日
  • 言語小説集

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    ・括弧の恋
    ・極刑
    ・耳鳴り
    ・言い損い
    ・五十年ぶり
    ・見るな
    ・言語生涯
    ・決戦ホンダ書店
    ・第惨事人体大戦
    ・親銭子銭
    ・質草

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    括弧の恋を見て、バカリズムのライブを思い出した。
    記号や言葉、無機物を単なる表現の手段としてではなくあたかも生きているかのようにとらえた作品が印象的。(決戦ホンダ書店、親銭小銭)
    後は言語障害に関わる作品も多い印象。(言い損い、言語生涯)
    タイトルがタイトルなだけに、いずれも切り口は違えど言語に関わる話。
    ふっと思いついた一見くだらない言葉遊びを何とも面白く小説として成立させてしまった、そんな印象の短編集。

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    2018年07月31日
  • 吉里吉里人(上)

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    ネタバレ

     一応「SF」小説だと言うから読んだのだが、かなり期待の斜め下を行く作品だった。
    SF的ガジェットは無くもないが、ほとんど冗談のような医療技術に負う所が大きいからだ。

     東北の一寒村が日本政府に対して独立を唱えるという発想は面白い。
    そしてその手法が軍事独立ではなく文化的戦略による独立である事も。
    色々言うとネタバレになってしまうのだが「吉里吉里国」の戦略は用意周到かつ大胆、しかしどこか肝心な所が抜けている。

     本作は上中下の三巻にも及ぶ長編だが、作中の時間はたった二日にも満たないという「ロミオとジュリエット」にも負けない強行軍だ。
    それだけ出来事が濃縮されているかと言うとむしろ逆で、暇な

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    2018年06月22日
  • 「けんぽう」のおはなし

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    憲法って何のためにあるのか、知ってますか?
    そんなこと偉そうに言えませんが(笑)、私も最近になって学び直しています。


    改憲をしようとする政治家がいる今、
    唯一の被爆国である日本は、多くの犠牲を伴った『戦争を放棄』した。どんな背景があって、どんな意図があって今の世の中ができたのか。子供だけでなくて大人も知る努力が必要なんだと思う。


    私たちの存在と権利を大切に守ってきてくれた憲法を子供にもわかりやすく説いた絵本。


    『人間一人ひとりを、かけがえのないそんざいとして、たいせつにする社会、それをいちばんだいじにしていこう、というのが日本の「けんぽう」です。(文中より)』


    5/3は日本国憲

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    2018年04月21日
  • 喜劇役者たち

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    著者の実体験を基礎にしているだけに、本当にこんな喜劇役者がいたのではないかと思ってしまう。渥美清、谷幹一、長門勇、関敬六、佐山俊二らの芸の分析も随所にあり楽しめる小説である。

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    2018年03月01日
  • 東慶寺花だより

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    読みながら思い出した。東慶寺。女性が離縁を求めて駆け込む寺。まさかこの寺を舞台に物語を書く人がいたとは。「離縁」「駆け込み寺」というとどうしてもミゼラブルなイメージが先行してしまうが、実際には人情物語。どこかアットホームな感もある。ときには男の方が間違って駆け込んだり、再駆け込みは禁止、をまるで「二度漬け禁止」的ノリで話が展開されたり、笑っていいのか戸惑いつつ笑ってしまう。古都・鎌倉の情景に想いをはせつつ読むのも一興。

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    2017年07月25日
  • 父と暮せば

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    短いので軽く読めるけれど、深い重い。でも前を向ける。
    世界は残酷だ。でも、生きている人は前を向いて生きていかなくちゃいけない。それが生きられなかった人に対する努めで、次に生きる人への義務だ。死んだように生きていてはいけない。

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    2017年06月21日
  • 東慶寺花だより

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    最近、DVDを見て興味出て来て原案となった本作品を読みました。
    いくつもの話があり面白かったです。
    それ以上に映画化の際、随分印象が違う話になったんだなって楽しくなりました。
    色んな評価があるんだろうけど、原作も楽しかったし、映画はもっと楽しかったですよ。
    本読みしてから、映画見て見て。
    樹木希林さんの「女じゃいけないんですか」に笑っちゃうと思います。

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    2017年05月31日
  • 百年戦争(下)

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    複数巻の長編を平行に読破しよう月間。ゆるゆるとでも続けないと。

    秋子くんが猫になったまま行方不明となり、人間に戻った清と良三の間で、今後の猫 vs 鼠戦争をどうするのか、そもそもなんでそんな話になったのかという方向へ。

    「ドン松五郎」方面の動物大戦争でずっと進むかと思った上巻から全く方向性の変わる下巻。話は予想もしなかった、悪魔の仲間となって、神様仏様と対決するのだ。ネタバレ?いや、このくらい書いても、上巻を読んだ人にだって、わからんでしょ?

    上巻で銀座に有った店の名前を羅列するような、枚数稼ぎ的なものは無いとは言わないが(資生堂の話とか…)、かなり減り、過去の神話や伝説、昔話のたぐいを

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    2017年05月22日
  • きらめく星座 昭和オデオン堂物語

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    第二次世界大戦中の東京、オデオン堂というレコード屋一家とその仲間たちのてんやわんや。
    いい曲ならばジャズのような敵国音楽だって取り扱う店の方針、だけでなく、長男の正一が脱走兵となり憲兵に追われているせいで、非国民の家だと非難されるオデオン堂。とはいっても彼ら自身は「反骨の家」といったイデオロジックな雰囲気ではなく、明るくのんきに暮らしている。しかしさすがにやりにくくなってきたので、娘のみさをを傷痍軍人の源次郎と結婚させて「美談の家」となることで急場をしのぐ。
    教育勅語製な軍人さんであった源次郎がオデオン堂の人たちとの交わりで変化していくところがやはりみどころか。
    こんな時代に生まれてくる子ども

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    2017年03月12日
  • 吉里吉里人(下)

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    再読。と言っても、あらかた話は覚えてなかったので新鮮な気持ちで読めた。改めて、一流の作家の先進性、世の中を見る慧眼に驚かされた。

    細部では今となっては、古臭く効果を減じている部分もあるが、物語が提起している話題は全く古びていない。逆に言えば世の中変わっているようで変わってないわけだが・・・

    個人的には、余りにしつこい下ネタに辟易するところもあったり、現実離れした人物設定、饒舌すぎて読むのに苦労した点はあったが、概ね楽しめた。東京で育った私には農家の苦労も怨念も分からないが、元は両親の出は農家である。遺伝的には、多くの日本人同様百姓である。仕事で、東北に行くと、荒れ果てた休耕田を見て心が痛む

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    2017年02月12日
  • 日本語教室

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    我々日本人が無意識にやっている、日本語のささいな使い分け、日本語の成り立ち、構造など、筆者の深い教養と分かりやすい説明で興味深く読め、勉強になった。また、外来語を漢訳した際に生じた齟齬というべきもの。権利や自由の話。日本人の考え方に、漢字の選択が影響したというのは面白かった。
    読み通してみて、日本語とは、良い意味で、あいまいなものであり、つかみどころがなく、その一方で実に面白いものなのだなと感じました。

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    2016年11月14日
  • 父と暮せば

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    とても短いので、戯曲を初めて読む人にも薦めやすいのではないかと思う。
    ちょっと甘い感じもするが、声高に戦争の惨禍や悲劇を訴えるのではなく、普通の人間のささやかな日常を破壊する恐ろしさを通奏低音のように流し続ける。幽霊の父は、実際には父を見殺しにしたと思っている娘の妄想かもしれない。妄想が死にそうな人間を支えることってあるものね。
     しかし映画では宮沢りえが娘。美人すぎて違和感あり。もっと普通っぽい人が良かった。本には美人でないが愛嬌があるって書いてあるんだから。

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    2016年09月10日
  • 不忠臣蔵

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    吉良邸討ち入りに参加しなかった赤穂浪士のそれぞれの事情を連作短編にした本。
    400ページを超えるボリュームもさることながら、内容の点でも、ずっしり来る。
    討ち入りに参加することの方が安易。誰か、何かのために生き続ける道を選んだ方がいばらの道。
    討ち入りは太平の世になり、活躍の場を失い、それ以外に生きるたつきもない浪人たちが死に急いだのではないか、と問いかけられていく。
    討ち入りに参加した「義士」たちのほとんどが馬廻役、浅野内匠頭から遠い者たちばかりで、近く仕えた者たちには慕われていない君主であるという指摘にも、はっとする。

    取り上げられた「不忠臣」たち誰も、これまでには聞いたことのない人物た

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    2016年08月17日
  • 井上ひさしの 子どもにつたえる日本国憲法

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    時々読み返す、好きな本です。
    やさしくて、力強い言葉と、イラスト。

    剣より強いものがあって、それは戦わずに生きること。

    まさしくそうだよなぁ、と。
    力で解決しようとするのではなく、言葉を尽くして話し合い、解決しようとすること。

    読み返すたび、初心に戻るような、足もとを確かめるような気持ちになります。

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    2016年05月23日
  • 吉里吉里人(上)

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    面白い上に、内容が濃いです。余計な話がたくさん出てきますが、全く飽きさせません。上中下巻で1,500ページほど有りますが、あと二冊、楽しんで読めそうです。

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    2016年02月17日
  • ムサシ

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    すっとぼけた柳生宗矩が魅力的。
    さまざまな登場人物が言葉を変えて
    殺し合いを非難するさまに
    著者の強いメッセージを感じた。

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    2016年01月24日
  • 井上ひさしの読書眼鏡

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    いろいろな、エピソードを交えた読書案内。
    ことば、大江健三郎、原子力、作者の興味はいろんな方面に拡散してゆく。だからこそ、面白い読書案内になっているとも思える。

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    2015年12月28日
  • 吉里吉里人(上)

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    東北の小さな村、吉里吉里が日本からの独立を宣言!吉里吉里国を名乗る。馬鹿げた話なんだけど、あの手この手に手が凝っていて面白い。
    無駄な会話、話の本筋には不要な余計な描写が数多くあるのだけど、ユーモアのセンスに富んでいてかなり笑えて嫌に感じない。
    この吉里吉里国独立宣言時にたまたま居合わせた、売れないダメ作家の古橋。この人のエピソードがまた非常に笑えた。本筋には全くもって不要だと思うけど(笑)

    上巻だけでさえもかなり長かったけど、ただ長いだけじゃなく面白い。引き続き中下巻も楽しみです。
    敢えてジャンル分けするなら、「SFコメディ」でしょうか(笑)

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    2015年12月02日