井上ひさしのレビュー一覧

  • 東慶寺花だより
    さすが作者の筆の力。江戸時代の鎌倉の四季が目に浮かぶ。訳ありで東慶寺に逃げ込む人妻。その生活を思いやって支え合う人達がみな粋でかっこいい。映画観てなくても信次郎のセリフは全部大泉洋氏でイメージできた(笑)
  • 吉里吉里人(中)
    とんでもない荒唐無稽な物語の中に、現代にも通用しうるキラリと光る問題提起があるでガンス。
    ダニエル・カールが読んでいたらいいなあ。
  • 吉里吉里人(上)
    井上ひさしが博学すぎて引く。

    とんでもなく冗長でまだるっこい展開は、筒井康隆の「虚人たち」に近いものを感じる。まだるっこいのに、ページをめくる指が止まらないあたりも似ているぞ。

    てなわけで、中・下巻もひと思いに読みます。
  • 私家版 日本語文法
    小説家井上ひさし氏による最近(昭和50年代後半)の日本語文法に関する考察。

    こむずかしい文法の話もこの人の手にかかると面白い。下世話なワイドショーのように興味本位で楽しめる。

    文法は面白い。

    自分自身も含めて誰もが文法という法則の中に生きている事に気付いておらず、先に知った人がまだ知らない人に...続きを読む
  • 自家製 文章読本
    想像していたよりも難しい内容だった。
    「文章読本」は、谷崎、三島、丸谷など大家が著しておられる。本書井上本はそれらも引用しながら展開されてゆく。
    しかし文章の形態を定義づけたり、日本語との関連、そして書き手側と読み手側の違い……。
    このような本を書ける作家は、文章や日本語を本当に真面目に考えていると...続きを読む
  • 井上ひさしの日本語相談
    正しい日本語を使いたい人は多いが、日本語が変化してゆく中ではこれが正しいという日本語はない。言葉というのは難しい。
  • 一週間
    ソ連の捕虜となった主人公がどうにかして日本へ帰ろうとするはなし。歴史の題材はとても深刻なものを扱っているのに、ユーモアがあって面白い。全体を笑いのオブラートで包み込んでいるような感触。最後の終わり方が唐突であるように感じたが、落とすところは何気なく落としておいて、笑わせるところは笑わせるような語り口...続きを読む
  • 四千万歩の男(五)
    思ったより時間がかかった。昔とは物の単位が違うからイマイチ実感が湧かなかったが大変な手間と時間がかかったものだったんだなと感じた。
    そして、その精度の高さから考えると、拍子抜けする位単純な方法で測量していたことを知って、けっこう驚きだった。
  • 言語小説集
    「言葉の魔術師」の本領発揮の短編集。

    『括弧の恋』、ワープロの "」" さんが "「" さんと恋に落ちて、威張った"◉"とか"■"に邪魔されながらも"!"や"×"に助けられながら思いを遂げる話、そこらのラブストーリー(もちろん主演は人間の。)より切なくて泣ける。

    一番好きなのは、流行りのビデオと...続きを読む
  • 言語小説集
    最後の「質草」はいい。歌舞伎になる。「芝浜」や「文七元結」みたいな世話の新作にできるんじゃなかろうか。落語にするのもいいかも。
  • 言語小説集
    冒頭の「括弧の恋」や「耳鳴り」なんかは、なんとなく筒井康隆のような…シュールな作品。
    (そういうご縁でか、解説は筒井康隆が書いている。)

    そうかと思うと、マレー語が残っている集落の話である「見るな」とか、老方言学者が五十年ぶりにかつての憲兵に復讐する「五十年ぶり」など、ドラマティックなものもある。...続きを読む
  • ブンとフン
    相当久しぶりの井上ひさし。「ドン松五郎」なんて好きで中学以来、何度読んだか忘れるほどであったが、そういえば代表作の「ブンとフン」は読んでいなかった。パラパラっとめくって、読まなかった理由がわかった。ワタクシは、改行の多い詩を書くのも読むのも苦手なのである。パラパラっとめくるだけでいくつも出てくるが、...続きを読む
  • 言語小説集
    ワープロの上で暴れ始める記号たち、ある日突然舌がもつれて落魄する元青年駅員、古書店で繰り広げられる小説と映画の仁義なき戦い…。
    本書は言葉にまつわる、そんな奇想天外な物語を集めた短編集。
    実は恥ずかしい話、井上ひさしの小説を読んだのは今回が初めてで、代表作のひとつで読売文学賞を受賞した「吉里吉里人」...続きを読む
  • 言語小説集
    80年代の雰囲気が残る、懐かしさを感じる作品集。解説を書いている筒井康隆の作品を感じさせる短編もあります。
  • 犯罪調書
    過去に話題となった犯罪者を筆者独特のユーモアとセンスで切り取った短編集。巻末の解説にある人間(犯罪者)のコレクションというというより、事件のコレクションだ。
    何か事件が起こると、それを題材に小説が発表されるが、事実を題材にしてはいても所詮フィクション。本書のように事実関係だけ(多少手は加えているよう...続きを読む
  • 黄金の騎士団(下)
    本当に久々の井上ひさし作品。

    前回読んだ作品は『偽原始人』だったと思う。賢い子供たちを書かせたら、右に出る人は居ないのではないだろうか。偽原始人と同じく、子供たちが周りの大人を振り回していくストーリー展開が圧巻である。

    悔やまれるのは、これが未完の作品であること。
  • 日本語教室
    とても興味深かった。助詞の「は」と「が」の使い方にはなるほどと納得させられた。普段あまり意識しないで使っているぶん、どちらが適切なのか迷ったとき、かなり役立つと思う。
    ほかにも日本語の成り立ちや、外来語との向き合い方、やまとことばと漢語など、面白い話が盛りだくさん。

    上智大学でのある講義を再現した...続きを読む
  • 四千万歩の男(一)
    2014/10/14
    読み終わった
    昔々、父に勧められた本。読み終わるのに8ヶ月かかったよ。井上ひさしらしく、舞台にしたら面白そうな台詞回しや話の起伏が多い。旅のひと宿ひと宿が、舞台の一幕のような完結ものに思える。きっと途中から途中まで読んでも面白いよ。
  • 黙阿彌オペラ
    2014/10/28
    読み終わった。
    井上ひさしイヤー続きます。江戸と明治、時代の間で起こる群像劇です。戯曲です。
  • モッキンポット師の後始末
    【本の内容】
    食うために突飛なアイディアをひねり出しては珍バイトを始めるが、必ず一騒動起すカトリック学生寮の“不良”学生3人組。

    いつもその尻ぬぐいをさせられ、苦りきる指導神父モッキンポット師──ドジで間抜けな人間に愛着する著者が、お人好し神父と悪ヂエ学生の行状を軽快に描く笑いとユーモア溢れる快作...続きを読む