井上ひさしのレビュー一覧
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井上ひさしさんの遺作。連載小説であったとのこと。戦時中共産党員出会った主人公が、自分を陥れようとしたスパイMを追ってロシア二割ったところ終戦を迎え捕虜となる。捕虜となったある日呼び出されると、捕虜向けのプロパガンダとして作っている『日本新聞』なるものの編集室で働かないかと呼び出されるところから物語は始まる。そこを監修するロシアの将校たちがまた日本語が達者という設定でやり取りに引き込まれ思わず笑ってしまう部分も多い。遠くまで脱走したが残念ながら捕まった従軍医師の取材を命じられたところから物語が大きく展開をみせる。荒唐無稽なお話の展開なのだが、あっという間に引き込まれた。日本語が美しいです。こんな
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『ふふふ』に続く井上ひさしさんのエッセイ本。
外交のこと、憲法のこと、世襲のこと等について考察が書かれている。
考え方の参考にしたいことも多いので、また読み返したいと思う。
何よりも心打たれたのは「母への二通の手紙」。
ドイツの赤ちゃんポストに子供を預ける際に、母親が受け取る手紙の文面が紹介されている。
困っているわけでもなければ赤ちゃんを産んだこともないのに、その文面の優しさに涙が出た。
本当に困って、子供の幸せについて思い悩んで預けに来たお母さんは、この手紙できっと救われると思う。
私ですらこんなに優しい手紙を書く人がいる世界で生きられることを感謝したくなってしまったくらいだから。
援 -
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我が母校の大先輩である井上さんの本。日本語の起源、特徴、難しさ、いい加減さを、ユーモアを交えて論じている。大学での講義を収録したものらしいが、こんな授業だったら眠くならないかもと思う。
初めの講義では、外来語なんてケシカラン!といった論調だったが、後半は、ピジン・イングリッシュの例などをあげて、積極的肯定こそしないものの、認める論調に変化している。その井上さんの柔軟性こそが、まさしく日本語の柔軟性をあらわしているのかなと感じた。
東北弁が日本語の起源だ、という説は、 東北出身の著者 ならではの視点なのかなと思うが、それから派生する、美しい日本語など存在せず、あるのは個々人が持つ日本語だ、と -
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僕らは、いつもいろんな言葉を紡ぎながら、どうにか考えること、思っていることをただ面と向かった相手に伝えようと試行錯誤する。
しかし大抵の場合、「言葉はいつも心に足りない」
ましてや使っている言葉がここまで曖昧さを許容して、間違って使っていてもその意で使う人がおおければそれすら許容してしまう大らかな言葉だったならなおさらだ。
大切にすればするほど、言葉はすぐに先に行ってしまう。
80歳のおじいちゃんの使う言葉と我々の使う言葉、10代の子たちが使う言葉で思いが伝わらなくなってしまうような世の中にはなってほしくないなと思い、意識しながらこれからも紡いでいこうと考えさせられた。 -
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井上ひさしの処女作だそうで、確か小学校だか中学校のときに読んだ記憶があったのですが、今読み返してみても結構面白い。
筒井康隆も非常に似たような作風だったななんてことを思いながら結構新鮮な気持ちで読み返すことができました。
売れない作家フン先生が生み出した売れないはずの作品の登場人物、四次元の世界を飛び回る怪盗ブンが本の世界から飛び出して世の中を騒がす。
その怪盗を捕らえるために打たれた手。
そしてつかまった大泥棒ブンに言い渡された刑は、とてつもなく長いものだったのだが、その刑を全うさせるために、刑務所の中で獄死しないようにと立てられたのはとんでもなく立派な刑務所。
それも捕まったブン