井上ひさしのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ書評などでさかんに引用されている「レーニンの手紙」は物語の半ばにならないと出てこない。しかしそれまでだって(いやむしろそれまでが)十分に面白い。シベリヤの厳しい寒さのリアリティ、旧日本軍の上下関係をそのまま持ち込んだ収容所の理不尽さや、戦陣訓を国際法に優先させて部下の待遇をソ連任せにする関東軍トップへの痛烈な批判、戦前の地下共産党伝説のスパイMの行方など、夢中で読ませる。さあそれらが後半でどう本筋に絡まっていくのか、という期待は、しかし残念ながらやや未消化のまま終わってしまう感がある。それでも悪役含め人間存在に対する著者の暖かいまなざしがいたるところユーモア溢れる描写に現れていて、プロットを読まされるのではなく、小説を読んでいるという実感を与えてくれた。
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ネタバレ貧乏作家のフン先生の小説から主人公のブンが現実世界に抜け出して大騒動を繰り広げる。
「どうせ盗むなら、人間の一番大切なものを盗んでやろうと思ったんです。」
「ほう、そりゃなにかね」
「権威です。人を思いのままに動かすことのできる、あるもの。
お金も出世もホコリも、努力もよい行いも、なにもかもみんな、権威、力をもつための手段にすぎないんです」
「でもねェ、ブン、もしそうだとしても、権威をもつことがなぜいかん?」
「人間の目がくもりますもの。権威をもつと、人は、愛や、やさしさや、正しいことがなにかを、忘れてしまうんです。
そして、いったん、権威を手に入れてしまうと、
それを守るために、どんなハレンチなことでも平気でやってしまうのだわ」
劇作家 井上ひさしの処女作。
各章に出てくる語呂合わせ、言葉あそびに、舞台劇の風合いを感じる。
読者に直接語りかけたり、エッチなページに封印用のノリシロを付けたり、コント55号・高見山が登場したりと、
楽しませようとするサービス精神に富んでいる。 -
Posted by ブクログ
「ひょっこりひょうたん島」の脚本を書いていたのが、
この本の著者である井上ひさしさんでした。
その他にも、小説や、芝居の戯曲を多数残し、2010年に亡くなっています。
僕は名前しか井上さんのことは知らなかったですが、
この本を読んでみると、彼の学識の深さと、
それを咀嚼して簡単な言葉で人に伝える力と、
その内容の面白さ(学問の面白さ)を大事する姿勢の素晴らしさに
圧倒されずにはいられませんでした。
序盤などは、茶髪にふれて、「ちょっと頭が固いおじさんだな」という
印象を持ちましたし、他にもそういうところがちらほら見受けられました。
でも、一冊まるまる読むと、そういったところはちょっとした
心のニキビのようなものだったりもして、
井上さんの根っこのところは、もう少し寛容でおおらかだよなぁと感じられる。
本書は、僕やあなたの母語である
(そうじゃない方もいるかもしれませんが)日本語について、
その「今」「なりたち」「特徴」「ルール」などをかいつまみながらも、
井上さんの視点からとらえた彼なりの要点というものを軸に、
しっかりと説明してくれます。
といっても、180pくらいの新書ですから、網羅的かつ専門的に
論じている本ではないわけです。
本ではないというか、もともとが上智大学での4回の講義をテキスト化したものなので、
研究のさわりや彼の推論を楽しむような講座なのです。
おまけに、笑いに満ちていたりします。
本書の内容を感じてもらうための具体的なトピックを一つ紹介するならば、
ちょっと日本語から離れてしまいますが、ピジン語とクレオールの話がいいでしょうか。
ピジン語というのは、たとえば英語を知らない奴隷の人たちが、
主人の英語を聴いて仕事をするうちに、少しづつその内容がわかってきて、
自分のネイティブの言語をもとに、それを応用しながら英語を話すようになる。
そういった英語をピジン・イングリッシュといい、
フランス語などでもそういうのが見られるそうで、総称するとピジン語です。
それで、その奴隷の二世ともなると、そんな不完全なピジン語を話す父母に
育てられるのですが、そのピジン語を完璧に使い始めるそうです。
そうすると、クレオールという、安定した言葉ができあがるのだそうです。
1世が自分のネイティブと被支配の言語の混ざったものをぎこちなく使うのに比べて、
それを生まれたころから聴いて育つ2世ともなると、
そんな言語の要点をうまく把握して、滑らかで合理的でさえある言葉にしてしまう
ということらしいです。
面白いと思いませんか。
言葉というものはこうやって柔軟に改造され創造されていく面があります。
日本でも、外来語が定着するのには、1世ではまだ不完全で、
2世になってから安定すると言われると、なんとなく納得できる節はないでしょうか。
さらに、僕は個人的に考えたのですが、これって音楽にも言えます。
たとえば、テクノという音楽が出てきて、それを作った人たちと同世代の人たちよりも、
一回り下の、それらを子どもの頃に聴いて育った世代のほうが、違和感なく
テクノの音楽を理解し、作れたりする。言葉でいえば、クレオールってものが
そこにあるんじゃないでしょうか。僕なんかがわかりやすくクレオールを感じるのは、
Perfumeやきゃりーぱみゅぱみゅさんをプロデュースする中田ヤスタカさんですね。
彼の音楽には、テクノやポップスが定着した後の、普段着的な音使い、音の構築を感じます。
閑話休題。
この本には、そういった脱線的な話題もふんだんに盛り込まれ、
そこが面白かったりし、なおかつ読者もそんな脱線に触発されて、
自由な脱線思索を読書中に味わうこともあろうかと思います。
井上さんの軽妙さがベースにありますので、読みやすい本です。
内容については、日本語についてもっと勉強したい人にとっては、
プロローグになるでしょう。 -
Posted by ブクログ
5/19に誕生日を迎えた時の誕生日記念読書の1冊。56歳になった私は、あの地図で有名な伊能忠敬が、婿養子で財を成し、実は隠居になった56歳から日本地図を作るために全国を歩いたと聞いて、その生きざまをぜひとも読みたかったのです。まあ、とにかく商売では、そこまで財を成したのだからあくどい面もあったのかもしれないけど(笑)、自分の歩幅で正確な日本地図を作ると言うのは、まさに愚直そのものです。私なんか今から「日本を歩いてまわって地図を作ってね」って政府から言われてもお断りするから(笑)
この本は井上ひさしさんの「四千万歩の男」の外堀の本です。本丸はやっぱりその本を読まないといけないけど、ちょっと長いから引いちゃっている時点で、もう負けていますね(伊能忠敬と勝負する気はないけど)。
しかし、この時代、シーボルト(ふぉんしーふぉるとの娘は読んでいたので)関連や天地明察関連が出てきて面白いですね。本当に大河ドラマになるといいのにって思いました。 -
Posted by ブクログ
強烈な光を出す個は はっきりとした明と暗を生み出すのかもしれない。
自分はひょこりひょうたん島の原作者が DVをしていたとしてしか、この方の人となりを知らない。舞台や放送作家として日本を明るく励ましていた方が どうしてDVをするのか この方の考え方を知りたかった。
が・・ わからない
色に狂う方 ギャンブルに狂う方 暴力も同じなのだろうか? 表現者や先駆者は何か悪魔との契約が必要なのか?
本自体は ものすごく明るく判りやすかった ので 余計に寂しくなった。
1日30冊は凄いな 本当に要点読みが出来ているのだろう 圧倒的なインプットだな・・ -
Posted by ブクログ
仕事で、意味のとおる文章を作ることを求められるようになり、その流れでたどり着いたのが、この本。
井上先生が指摘する内容で、ドキリとしたのが、ふたつ。
ひとつは、もともと日本語としてある言葉をわざわざ、別の言葉(外来語)に置き換えていること。
もうひとつが、小難しい漢字を多用していること。
自分がふだんやってしまっていることを指摘されているようで…
そのほか、母音が、数の数え方や駄洒落に関する謎を解き明かす鍵になっている!!
など、ふだん当たり前のように使っている「日本語」という言語を、改めて見直したくなる本でした。
日本語、大切に使っていこうと思いました、改めて。