今野敏のレビュー一覧
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たくさんの人気シリーズがある今野敏さんの作品の中で、私が一番好きなのがこの「隠蔽捜査シリーズ」です。「分水」はその最新刊となります。
このシリーズの魅力は、何といっても主人公・竜崎伸也という人物でしょう。キャリア組と呼ばれる警察官僚ですが、生真面目すぎる堅物で、空気を読まず(読めない?)、何事も原理原則に従って判断します。キャリアにありがちな派閥争いや上司への忖度とは一切無縁な男です。
そんな是々非々を貫く竜崎に、最初は戸惑っていた上司や部下も、いつしか彼を信頼し、ともに事件解決へ向かっていくその過程こそが、このシリーズ最大の魅力だと思っています。
今回の「分水」でも、竜崎らしさは健在でした。どんな状況でも信念を曲げない姿勢には思わず引き込まれ、シリーズファンなら随所で頷いてしまうはずです。
私も竜崎伸也に影響を受け、実生活で彼のように振る舞ってみたいと思うことがあります。しかし、生半可な気持ちではすぐにメッキが剝がれて逆効果になるのは目に見えています。それでも、「こんな人間になれたら」と思わせる魅力が竜崎にはあります。
シリーズがいつか完結する日が来るのなら、ぜひ数々の「竜崎語録」をまとめた特別出版を実現してほしいものです。 -
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回帰 警視庁強行犯係・樋口顕
今回は、国際テロ組織の犯行ではないかと思われる車両爆破事件が発生し、死者2名と負傷者10数名がでた。C4と言われる軍用の爆薬が使用されたのだ。目撃情報からパキスタン人のムハマンド・シファーズ・サイードの身柄が拘束され、取り調べか開始されたが、本人にはアリバイがあった。そんな中、警視庁の元刑事で違法捜査で辞職した因幡芳治が国際テロ組織と関わりがあったという情報があり、最近日本に入国したということも明らかになった。因幡は天童管理官の元部下でもあった。その因幡から突然天童管理官に連絡が入り、次に発生の恐れがあるテロを防ぎたいので力を貸してくれるように頼まれた。警視庁公安部の事前情報では因幡は国際テロ組織の一員として見ていたが、思わぬ展開に…
樋口顕係長は因幡の現在の素性がなんとも言えないまま天童管理官とともに因幡の行動に賭けてみる。テロの標的にされたのは靖国神社だ。どうしてもテロを止めたい因幡と樋口係長は、靖国神社でテロの実行犯を寸時で発見し指揮本部の命令を待たずに取り押さえる。正に危機一髪のところだった。一歩間違えば、自爆スイッチを押されたかも知れない瞬時の判断であった。手に汗握る瞬間を文章で表す今野敏作品の素晴らしさはピカイチである。事件と同時に樋口顕を悩ませる一人娘照美の家族愛も微笑ましい。
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大森署署長へ異動となった竜崎伸也は、着任早々に発生した立てこもり事件の指揮を執ることになる。事件は収束したかに見えたが、その判断をめぐり、警察組織全体を巻き込む新たな問題へと発展していく。迷いなく決断し、その責任まで引き受ける竜崎の姿を描いた警察小説。
前作は、第一印象では理解しがたかった竜崎という人物への見方が、読み進めるうちに変わっていく面白さがあった。キャリア官僚としてすでに確固たる立場を築いていた彼を通して、その信念や価値観に触れる物語だった。
一方、本作の舞台は、まったく勝手の違う現場である。大森署長として、新しい部下や組織、家族との関係に向き合いながら、自らの立場を築いていく。どこへ異動しても竜崎は竜崎だった。しかし、そのぶれない姿勢が少しずつ周囲を動かし、当初はぎこちなかった組織が一つにまとまっていく過程には、大きなカタルシスを覚えた。
タイトルの『果断』は、まさに竜崎を象徴する言葉だと思う。迷わず決断し、その結果から逃げず、責任まで引き受ける。その姿勢は変わらない。ただ本作では、それが新しい環境の中で試され、周囲との関係を通して、より確かなものとして浮かび上がっていく。
前作が竜崎という人物を描いた作品だとすれば、本作は、そのぶれない姿勢が組織にどう作用し、少しずつ周囲を変えていくのかを描いた作品だった。警察小説としての緊張感はもちろん、組織論やリーダー論としても読み応えがある。前作で竜崎という人物に惹かれたなら、本作では、その姿勢が人と組織を動かしていく過程に、さらに引き込まれるはずだ。 -
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廉恥 警視庁強行犯係・樋口顕
樋口顕のもとに殺人事件の一報が入る。被害者は、キャバクラ嬢の南田麻里。彼女は警察にストーカー被害の相談をしていた。未だにストーカー殺人事件は後を絶たない。今回もか?と特捜本部では誰もが心配する。そうだとすると警察の責任は免れない。しかし、捜査線上に上がる容疑者はことごとくシロとなっていく。誰が犯人なのか?今回も警察庁から派遣された女性捜査官が犯人の足がかりを付けていく。飛び切りの美人警視のキャリアだ。樋口顕が世話係として抜てきされ一緒に行動を共にする。そして事件解決へと繋がるのだ。樋口顕の一般の刑事と違う感覚と性格はどんな相手も傷つけずに味方に引き込んでいく。これはまさに天性のものとしか思えない。多分今野敏先生も同じなんだろうなと思ってしまう。 -
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大義 横浜みなとみらい署暴対係 短編集
○ タマ取り
常磐町のとっつぁんのタマを狙っているヤクザ がいるとの情報
○ 謹慎
ヤクザを必要以上に叩きのめしたとして諸橋と城島が拘束され謹慎となったあと、現場を目撃した倉持の行動、心情を描いた。
○ やせ我慢
浜崎がどうしてこんな風になったかを日下部に語る物語
○ 内通
笹本からスパイになれと示唆された八雲の立場と思いを描いた。
○ 大義
県警本部長の指示
○ 表裏
ヤクザの怖さとそれを知る刑事の対応
○ 心技体
柔術の稽古によって今の自分が形成された倉持
どの短編も、約40ページで形成されているが、内容が充実したもので、短いながらいずれも強烈な印象を残す逸品揃いだ。予約本を待つ繋ぎの作品としては有り難い。
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新装版ビート 警視庁強行犯係・樋口顕
これは傑作です。今回は最後の最後まで犯人を絞れなかった。「まさか、そこか。」と唸ってしまった。いつもより150ページくらい長い小説なのに最後まで一気読みした。警視庁捜査二課の島崎は日和銀行の行員富岡に脅され捜査情報を漏らしてしまう。捜査は失敗し、自責の念に駆られる島崎。そんな中富岡が殺された。島崎は自分の次男が脅迫の事実を掴み、富岡に会っていたことを知り、疑う。家庭内の絶対絶命の窮地に立たされたクライマックスでは、「樋口刑事早く現着してくれ」と祈らずにはいられなかった。涙無しには読めませんでした。降参です。読者の心鷲づかみされました。とにかく見事な大岡裁きでした。次作が楽しみです。 -
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今野敏『脈動』角川文庫。
余り考えないで購入したが、『鬼龍光一シリーズ』の最新巻であった。このシリーズは最初の頃は追い掛けていたが、最近は全くのノーマークであった。
日本の歴史と呪術との関係なども描かれ、なかなか面白かった。今野敏の『隠蔽捜査シリーズ』も面白いのだが、それと対極にあるようなオカルト的な警察小説も悪くはない。
ある日を境に警視庁内での警察官の不祥事が相次ぐ。捜査一課の刑事が取調室で被疑者に暴行を加えた事案を皮切りに、警視庁内の記者クラブで記者に刑事が殴りかかったり、警務部の係員が受付の女性と庁内で淫行に及んだりと、余りのことに少年事件係の富野輝彦と有沢英行も心配になる。
そんな時、富野の元に元妙道の池垣亜紀から電話が入り、警視庁内で相次ぐ不祥事は亡者によるものだから、それなりの術者に依頼した方が良いと伝えられる。富野は鬼道衆の鬼龍光一に連絡したところ、さっそく鬼龍が奥州勢の安倍孝景と2人で警視庁を訪れる。
2人の術者の見立てでは警視庁を守る結界が破られたことが原因で亡者が増殖し、不祥事を招いているのではということだった。もう一度結界を張らないとどうにもならないということで、鬼龍は陰陽師宗家の萩原兼隆を招聘し、警視庁内を見てもらう。すると庁内にあるはずの三種の神器のうち鏡が破壊されていることが判明する。
本体価格1,020円
★★★★★