あらすじ
※本作品は、2023年発売の単行本版「審議官―隠蔽捜査9.5―」を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
板橋捜査一課長のキャリア観を変えたのは、共に誘拐捜査にあたった大森署時代の竜崎だった。そんな竜崎も警察庁の長瀬審議官の前では一介の中間管理職にすぎない。竜崎の家族である、冴子、美紀、邦彦。署長転出直後の部下たち。神奈川県警のトップ、佐藤本部長。さまざまな人々の目から見た竜崎伸也の素顔、そしてその凄みとは。『隠蔽捜査』シリーズへの愛が深まる、絶品スピン・オフ短篇集。(解説・若林踏)
同じキャリア警察官の主人公「竜崎」と、幼馴染「伊丹」の物語。
とにかく「竜崎」のキャラ設定が秀逸!万事の『原理原則』に忠実で、しがらみの多い警察機構の中、ただひたすら『正論』『理屈』を武器に超合理的に全てを進めていく姿が痛快になってくると、あなたは立派な「竜崎」ファンです。堅物過ぎてヤな奴なのは否めませんが、対照キャラの「伊丹」が、それだけじゃないことを読者に説明してくれます。
的確な判断と部下への指示。こんな上司なら一生ついていきたいっす(かなり堅苦しいけど)。
ドラマ出演者が形容したのは「警察版 半沢直樹」。主人公のキャラは全く違えど、組織内の権力争いとスッキリする読後感は確かに似ているかも。1巻ごとの完結ですが、続巻も読みたくなること必至!そして続巻も期待以上です。(書店員・ラーダニーバ)
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Posted by ブクログ
今野敏「隠蔽捜査」シリーズ第12作目(2023年1月単行本、2025年9月文庫本)、スピンオフ短編集作品としては3作目、長編作品は9作。
今回は竜崎が警視庁大森署署長時代と神奈川県警本部刑事部長になってからの時代の脇役達のエピソードが並行して描かれた短編9編(①空席②内助③荷物④選択⑤専門官⑥参事官⑦審議官⑧非違⑨信号)のスピンオフ作品だ。
①空席⑧非違は竜崎が大森署を去った後の大森署の面々のエピソードを描いた短編。
②内助③荷物④選択は竜崎が大森署時代の家族のエピソードを描いた短編。
⑤専門官⑥参事官⑦審議官⑨信号は竜崎が神奈川県警刑事部長に就任してからの竜崎と県警の面々との日常のエピソードを描いた短編。
いずれも竜崎伸也(神奈川県警刑事部長、警視長、キャリア、47〜48歳位のはず)の周りの脇役達の物語であるが、全ての案件は竜崎の存在感に結びつく。
隠蔽捜査シリーズのスピンオフ短編集は、脇役の人物像の意外性や期待像を見せてくれる満足出来る短編集だ。
①空席
竜崎を大森署から神奈川県警に送り出した直後で新署長がまだ着任していない状況の大森署の面々のエピソードだ。
第二方面本部からの品川署管内で起こったひったくり事件に対する緊急配備の指示を受けた大森署が同時に起こった大森署管内のタクシー強盗事件の捜査に緊配を切り替えたことに対する方面本部の野間崎管理官の嫌がらせへの対応の物語。
主な登場人物は大森署署長の竜崎伸也に、懐かしい面々の大森署の貝沼副署長、斎藤警務課長、久米地域課長、笹岡生活安全課長、関本刑事課長、戸高刑事課強行犯係巡査部長、根岸生活安全課少年係巡査、第二方面本部の弓削本部長、野間崎管理官、そして大森署の新署長が藍本小百合、北海道警の総務課長からの転任の美貌の40歳女性警視正だ。
ひったくり事件とタクシー強盗事件の間に詐欺事件への対応で戸高巡査部長が刑事の勘で活躍、ひったくり事件とタクシー強盗事件への犯人へと結びつき、一挙に三つの事件が解決する。これも対応に悩んだ貝沼副署長と斎藤警務課長が竜崎にアドバイスを求めた結果だった。
②内助
竜崎の妻の竜崎冴子が主人公の物語だ。竜崎がまだ大森署の署長の時代で大森署の管轄で起きた殺人事件に冴子が何か既視感を感じ、その既視感の理由を考え、調べていく内に犯人の人物像を突きとめてしまうという話。
娘の美紀も登場してネット検索で冴子を手伝う。竜崎の素人で家族の意見も聞いて参考にするという姿勢も感じいい。
主な登場人物は竜崎伸也の他、竜崎の妻の竜崎冴子、娘の竜崎美紀、息子の竜崎邦彦、警視庁の伊丹刑事部長。
③荷物
竜崎の息子の竜崎邦彦が主人公の物語。やはり竜崎がまだ大森署の署長の時代で邦彦がポーランドからの女子留学生ヴェロニカと知り合い、そのヴェロニカから頼まれた荷物の受け取りで麻薬犯罪に巻き込まれたかも知れないと悩む話。
隠蔽捜査シリーズ1作目で竜崎が警察庁総務課長から大森署の署長に左遷させられる原因となったのが邦彦のヘロイン所持(自首)だった為、また父親に迷惑かけることへの恐怖から一人悩むのだが、最後は竜崎にことの状況を全て話し相談したことで全て解決する。
実際は麻薬でも何でもない物だったのだが…。
主な登場人物は竜崎伸也の他、息子の竜崎邦彦、ポーランド人のヴェロニカとアントニ、そして戸高刑事。
④選択
竜崎の娘の竜崎美紀が主人公の物語。これも竜崎がまだ大森署署長の時代の出来事で美紀が出勤途中で痴漢らしき男を取り押さえたことから始まる。
理不尽な扱いを会社からも警察からもその容疑者からも受けて絶望するのだが、竜崎の助言で一気に自信を取り戻すスカッとする話だ。
会社を辞めるか続けるか、警察の呼び出しに応じるか拒否するか、課長の誘いを受けるか断るか、正義を信じるか目を背けるか、選択は全て自分次第だと悟り、美紀は自分の人生に自信を取り戻すのだった。
主な登場人物は竜崎美紀、美紀が勤める会社のプロジェクトリーダーの相田勝(美紀の味方)、課長の富岡芳秀(嫌な上司)、痴漢被害者実は痴漢詐欺の橋本久美、愛宕署刑事課巡査部長の増原(美紀を犯人の仲間だとして聴取する)、大森署刑事課の戸高、そして竜崎伸也に冴子。
⑤専門官
今回は竜崎が神奈川県警に刑事部長として就任して間もない時の出来事だ。
神奈川県警では警部待遇の警部補を専門官と呼んでいる。今回の主人公はその専門官と呼ばれている刑事課の矢板敬蔵警部補というベテラン刑事だ。年齢は捜査1課長の板橋武(警視)と同じだが、矢板警部補は部下一人の小隊長(班長)で、課長と小隊長では組織での立場は雲泥の差だ。
神奈川県警の捜査1課長の下には20の中隊があり、20の中隊の下に50の小隊があるという。20人の中隊長の一人が中江達弘中隊長(警部)で、下には二つの小隊がありその一つが矢板小隊だ。矢板はやり手のベテラン刑事だが問題児で組織を無視した行動を取ることが多い。特にキャリアを毛嫌いしており、竜崎の前任の本郷刑事部長のことを公然と批判していた。刑事部長と班長(小隊長)では話も直接出来ない立場であるにも関わらずだ。
神奈川県警の刑事総務課長や捜査1課長は竜崎相手に矢板が問題を起こさないように説得と監視をするが、県内で起こった連続強盗事件で竜崎が捜査本部を立てようとしていると勘違いした矢板が竜崎に直接捜査本部の設置を止めるようにと訴えようとするのだが…。
しかし竜崎は矢板の事件解決の考えを聞いて即時に矢板に任せることを告げる。竜崎の捜査本部設置に関する考え方も矢板と同じ考えであり、今までのキャリアとは全く違う竜崎に戸惑い、以前の板橋と同じように竜崎の軍門に下るのも時間の問題のようだ。
主な登場人物は竜崎伸也(神奈川県警刑事部長、警視長)、板橋武(刑事部捜査1課長、警視)、池辺渉(刑事総務課長、警視)、矢板敬蔵(刑事部捜査1課小隊長、警部補)、中江達弘(刑事部捜査1課中隊長、警部)。
⑥参事官
今回も竜崎が神奈川県警刑事部長に就任して間もない時の出来事。仲が悪い二人の参事官(阿久津、平田)を何とか収めろという特命を本部長(佐藤)から受けた竜崎が逆に気が合い仲は良いという報告を本部長にする物語。
主な登場人物は竜崎の他、佐藤実(神奈川県警本部長、警視監)、阿久津(41歳、神奈川県警刑事部参事官、警視正、キャリア)、平田清彦(51歳位、同 参事官兼組織犯罪対策本部長、警視正、ノンキャリア)、吉村(同 組織犯罪対策本部薬物銃器対策課長)、永田優子(34歳、同 刑事部捜査2課長、キャリア)、池辺渉(50歳、同 刑事総務課長、警視)。
⑦ 審議
今回は竜崎が神奈川県警刑事部長に就任してからしばらく経っていくつかの事件を解決してからの出来事だ。前作「探花(隠蔽捜査9)」の続編のような展開の物語。
警察庁長官官房の長瀬審議官から佐藤本部長に呼び出しが掛かり、要件の当事者であった竜崎が同行する。要件というのはNICSのリチャード・キジマ特別捜査官を東京での日本の事件捜査に参加させていたことに関する聴取であった。前作「探花(隠蔽捜査9)」の「横須賀殺人及び死体遺棄事件」をすぐに思い出した。
当時指揮をとっていたのは竜崎刑事部長で、竜崎は長瀬審議官に説明するが長瀬はすこぶる機嫌が悪い。竜崎はどんな懲戒でも受ける気でいたが、必要以上に長瀬の機嫌が悪い意味が判らなかった。阿久津参事官に長瀬とNICSの関係の情報から長瀬の面子の問題だとわかり、竜崎の今までとは違った顔での対応をとり、面子を立てる事に成功してお咎め無しでうまく収めることに成功する。
主な登場人物は竜崎の他、長瀬友昭(警察庁長官官房 審議官 刑事局担当、佐藤本部長より3期上、警視監)、佐藤実(神奈川県警本部長、警視監)、伊丹俊太郎(警察庁刑事部長、竜崎と同期で幼馴染、警視長)、阿久津(41歳、神奈川県警刑事部参事官、警視正、キャリア)、池辺渉(50歳、同 刑事総務課長、警視)、リチャード・キジマ(NICS/アメリカ海軍犯罪捜査局 特別捜査官)。
⑧非違
今回も竜崎が神奈川県警刑事部長に就任してからしばらく経ってからの大森署の出来事だ。大森署に新署長が来てその新署長と第二方面本部の野間崎管理官とのやり取りと戸高刑事の勤務中のボートレース通いの非違行為の問題が取り出されたことへの新署長の見事な対処話の物語。
主な登場人物は藍本小百合(大森署新署長、40歳、警視正、キャリア、超美人)、野間崎政嗣(第二方面本部 管理官)、貝沼悦郎(大森署副署長、警視)、斎藤治(大森署警務課長)、戸高善信(刑事課強行犯係、巡査部長)。
⑨信号
竜崎が神奈川県警刑事部長に就任してからしばらく経ってからの県警内部の揉め事を竜崎が切れ味よく収める話だ。
県警のキャリアだけの飲み会で、「車も通らない時刻で誰も見ていない信号を守るかどうかという話題」から県警本部長が放った言葉が記者に漏れて、ノンキャリアの交通部長が本部長を追求するのだが、助けを求められた竜崎がスパッと収める気持ちのいい話。
主な登場人物は竜崎の他、佐藤実(県警本部長、警視監、キャリア)、八島(県警警務部長、警視長、キャリア、竜崎と同期)、東山(県警警備部長、キャリア、竜崎の一期下)、三島(県警交通部長、警視正、ノンキャリア、58歳)、永田優子(県警刑事部捜査2課長、キャリア、34歳)、阿久津(県警刑事部参事官、警視正、キャリア、41歳)。
Posted by ブクログ
短編集。
大森署の人物達にスポットが当たった作品もあり、嬉しかった。
脇役達を主人公にすることで、竜崎のことがより理解出来た。
竜崎は相変わらずぶれない、揺らがない。
原理原則に基づいて行動するというが、強くなければそれは出来ないと思う。
そんな強い竜崎に対抗出来るのは、妻の冴子さんだけだろう。
Posted by ブクログ
このシリーズ大好きなんですが、単行本で読んでたのに、また読んでしまった…
途中で気づいたけど、結局、最後まで読んでしまった…
短編集なので、あっという間に読み終えます。
個人的に好きな話は「参事官」です。
いずれにしましても、私自身も、竜崎部長のようにうまく取りまとめることができたら、会社でももっと出世するんだ方なぁといつも思っております。
普段は、短編集は読まないのですが、これは中編位の濃い内容で、1篇、1篇に引き込まれました。
子供達や、竜崎さんに関わった人達が、竜崎さんに相談することで、ストンと腑に落ちる。
凄いなー。
つい、枝葉の方を見ちゃうんですよね。
Posted by ブクログ
『初陣 隠蔽捜査3.5』以来久々となる、隠蔽捜査シリーズのスピンオフ短編集第3弾である。今回も、竜崎の家族、古巣の警視庁大森署、異動先の神奈川県警など様々な人物が登場するが、中心にいるのはやはり竜崎なのであった。
「空席」。竜崎を神奈川県警に送り出し、一時的に署長不在となった大森署に、難題が降りかかる。結局、まだ移動中の竜崎に頼り…。「内助」。竜崎の妻・冴子の意外な才能とは? 長年、竜崎家を支えてきたのは伊達ではない。
「荷物」。竜崎の長男・邦彦が受け取ってしまったブツとは。どうしても過去の記憶が過ぎるが…なんだそのオチは。「選択」。竜崎家の長女・美紀が、正義感から巻き込まれたトラブルとは。極めて昭和な上司にも呆れるが、強くあれ。
「専門官」。かつて竜崎に対抗心を燃やした神奈川県警の板橋捜査一課長も、扱いに困る部下がいた。もちろん竜崎の勝ち(?)。「参事官」。同じ参事官でも、一方はキャリアで、一方は叩き上げ。興味がないと言い切る竜崎よ…。
「審議官」は、『探花 隠蔽捜査9』の後日談に当たる。竜崎が米軍関係者のリチャード・キジマを捜査に参加させたことに、警察庁からいちゃもんが入り…。面子に拘る、面倒なキャリアの世界。竜崎は、必要とあらばこんな腹芸もこなすのか。
「非違」。やたらと大森署にやって来る、第二方面本部の野間崎管理官。目当ては美貌の藍本署長で、戸高の件は口実に過ぎない。いい加減に独り立ちしなさいよと言いたくなるが、これは『署長サスピション』の前日譚か。
最後に「信号」。竜崎が珍しく、神奈川県警のキャリアの飲み会に参加すると、佐藤本部長の発言がちょっとした問題に。みんなで渡れば、なんて言葉もあったが…。八島警務部長の提案は、それなりに意味はありそうに思うが?
解説の冒頭にある、今野敏さんがインタビューで語った言葉は興味深い。警察小説である以前に、面白くなければならない。本シリーズも、警察組織やキャリアをデフォルメしている面はあるだろう。すべては面白さのためなのだ。
Posted by ブクログ
.5 ですから♪
スピンオフです!
短編です(-。-;
わかってるんですよ。.5 は短編って。
こんな短編大嫌い人間の私でも、竜崎の短編は面白いんです!!最高なんですっ!!
おびのりさんから文庫になったと情報を頂き探しておりました。
新品の本屋さんでは売り上げ上位でした。
流石ですっ!!
神奈川県警になってしまってから、一抹の寂しさがあったのですが、この本はそんな私の心も溶かしてくれるような本でした。
大森署!
やっぱり私は大森署のみんなが好きだぁーーー。゚(゚´ω`゚)゚。
戸高さんが出てくる話が特に好きだーー!!!
竜崎の家族もいいですよね(*´꒳`*)
竜崎の判断力!
あれが私にあればなぁ〜。
とにかく面白い一冊でした♪
Posted by ブクログ
今野敏の「隠蔽捜査」シリーズ、スピン・オフ短篇集。
警視庁大森署長から神奈川県警刑事部長に異動したシリーズ主人公:竜崎伸也の家族や、大森署時代の部下達の活躍を描いた9編のスピンオフ・ストーリーが納められています。
巻頭の「空席」のみ既読でしたが・・・
いや!とにかく楽しいっ!!(^_^;)
シリーズを知っているからこその楽しさですが、シリーズ未読の方にも十分楽しめる作品達かと・・・
特にシリーズ一作目「隠蔽捜査」でのキーパーソンである竜崎の息子:邦彦が主人公の「荷物」は、ただただニンマリする感じで・・・
予備知識は要りません。堪能してください(^_^;)
Posted by ブクログ
今野敏『審議官 隠蔽捜査9.5』新潮文庫。
『隠蔽捜査』シリーズのスピン・オフ短編集。9編を収録。
相変わらず面白い。昨年末に亡くなった父親もこのシリーズが大好きで2人で交互に新刊本を購入し、シェアしていたことを思い出す。
『隠蔽捜査』シリーズの面白さの秘密は、竜崎伸也の人物像にあると言っても過言ではない。変わり者と呼ばれる竜崎伸也であるが、本人にしてみれば、実は何者にも忖度せず、合理的に清く正しく真っ直ぐに生きているだけなのだ。それが普通の人には、変わり者に見えるのだろう。今の世の中、ますます忖度せずに真っ直ぐ生きることが難しい時代になって来ている。
いずれの短編も小気味良く、面白い。
『空港』。竜崎伸也の推理力と観察力の凄さが光る。竜崎伸也が警視庁大森署長から神奈川県警刑事部長に異動となり、新任の大森署長が着任する前の署長不在の空白時にひったくり事件とタクシー強盗事件が同時発生する。
『内助』。竜崎伸也も凄いが、家庭に居ながらにして凶悪事件を解決してしまう妻の冴子も凄い。大森署管内で発生した空家の火災事件。焼け跡から28歳の女性の他殺遺体が発見される。大森署長の竜崎は捜査本部に泊り込み、捜査の指揮を執る。妻の冴子は昼のニュースで事件の発生を知るが、事件に何故か既視感を覚える。
『荷物』。竜崎伸也の父親としての懐の深さと洞察力の凄さに驚く。竜崎伸也の息子の大学生の邦彦が同級生のポーランド人のヴェロニカから頼まれて預かった荷物の中身は、覚醒剤のような白い結晶で、邦彦は再び父親に迷惑を掛けてしまうと思い悩む。
『選択』。竜崎伸也が娘に対して極めて合理的なアドバイスをする。広告会社に勤め始めた竜崎伸也の娘の美紀は朝の通勤電車で痴漢を捕まえたことから、イヤなトラブルに巻き込まれる。
『専門官』。胸がすくような竜崎伸也の判断と合理性。根っからのキャリア嫌いの捜査一課のはみ出し者と呼ばれる刑事の矢坂が竜崎伸也刑事部長に物申す。
『参事官』。次々と降り掛かる難問を物ともせずに必ず良い方向に答えを導き出す竜崎伸也の凄さ。こと人事のことになると一筋縄ではいかない。佐藤本部長からキャリア参事官と地方参事官の2人の対立を解決せよと命ぜられた竜崎伸也は鋭い観察眼で真実を明らかにし、ものの見事に解決してしまう。
『審議官』。どこの組織にも面子ばかりを重んずるアホな権力者が居るものだ。『探花 隠蔽捜査9』に登場した米海軍犯罪捜査局のリチャード・キジマ特別捜査官を巡るひと悶着。佐藤本部長と竜崎伸也は、警察庁長官官房の審議官に呼び出しをくらい、リチャード・キジマ特別捜査官を捜査に加えたことで叱責を受ける。
『非違』。上に立つ者はそれ相応の実力を有している。極稀に何でこいつがというようなアホも居るが。竜崎伸也が去った後の大森署で問題児の戸高刑事を巡り、騒動が持ち上がる。副署長は竜崎を頼り、対処方法を尋ねるが、竜崎は新しい署長が対処してくれるはずだと突き放す。
『信号』。警察官も人間であり、本音と建前がある。キャリア会の飲み会の席上で赤信号を渡るか否かという議論についての佐藤本部長の発言がマスコミに伝わり、問題となる。佐藤本部長の元に呼び出された竜崎伸也は屁理屈を捏ね回し、佐藤本部長の発言を有耶無耶にしてしまう。飲み会が嫌いだという竜崎の発言に、自分も職場の飲み会には一切出なかったことで、当時の上司から協調性が無いと烙印を押されたことを思い出した。今の世の中だとあり得ないことである。
改めて四角四面の竜崎伸也の人と成りを見ると、亡き父親を思い出す。父親も忖度や媚びることを良しとせず、極めて真っ直ぐな生き方を選んでいた。そのせいで父親は損をすることも多かったのだが、人生全体で見ればそれがプラスに働いたのではないかと思う。そんな自分も頑固で融通が利かず、父親の血を濃く継いでいるようだ。
本体価格710円
★★★★★
Posted by ブクログ
「.5」はスピンオフ。
それでも読みたい竜崎さん。
周りの人、みんな竜崎さんが好きすぎる。
あ、この人も落ちたでしょう、うふふ。と思う瞬間が好きだ。
Posted by ブクログ
相変わらず面白い。整数番号の話がどこまで進んだか忘れてしまったが、この連作短編集を読んで思い出した。竜崎が警視庁大森署の署長から神奈川県警本部の刑事部長になったんだった。竜崎の家族の話も出てきた上、長男の薬物の話も出てきてそういえば1冊目はそんな話だったと思い出すなど。安定して楽しく読めたので、シリーズを続けて読んでる人にはおすすめ(すすめなくとも9.5までくれば買うと思うけど)
そういえば毎度出てくる左翼、学生運動批判が少なかった。
Posted by ブクログ
今野敏『隠蔽捜査』シリーズ。
『審議官 隠蔽捜査9.5』。
警視庁大森署長から神奈川県警刑事部長と異動となった竜崎。
これぞ、竜崎。
元部下も妻も娘も息子も、上司までも。
原理原則に基づく行動、忖度はしない、竜崎は誰に対しても変わらない。
的確な判断を瞬時に。
『ほっとけばいい』
悩んでいることがばかばかしくなるような、竜崎の言葉。
誰もが竜崎に救われる。
そして、竜崎に魅せられる。
そして、そんなことは竜崎にとっては『どうでもいい』。
Posted by ブクログ
再読。いつものスピンオフ短編集。竜崎が大森署を去ったあとの面々が、「竜崎署長がいたら・・・。」と考えるあたりが少し嬉しい。家族3人がそれぞれ主人公となる3編があり、職場でも家庭でも変わらない竜崎が見られるのが少し嬉しい。シリーズが長続きするのは嬉しいが、最後どうするのかと少し心配でもあります。
Posted by ブクログ
隠蔽捜査シリーズが好きで、毎回購入して読んでいます。こんな上司がいたら、働きやすいだろうなぁ、と思いつつ。
今回は短編集ですが、ちょこちょこと竜崎も登場し、またそのスマートな考え方、ちょっと醒めた目線、けど的確な判断などに気持ちがスッキリする思いでした。
旅行の飛行機内で読もうと購入し、一日で読めるボリューム、内容も軽くて良かったです。
Posted by ブクログ
短編の中でも短めの作品が多く非常にリズミカルに読める作品集だった。警察小説と表現するよりも警察群像劇という描写がぴったりで、漫画を読んでいるかのような感覚だった。
Posted by ブクログ
隠蔽捜査9.5。
スピンオフ短編集の第3弾です。
いずれも「小説新潮」に掲載された全9編。
「空席」―竜崎が大森署を去った後の憂鬱。
「内助」―まさに内助の功。
「荷物」―息子・邦彦、まさかの2度目の失敗かと思いきや。
「選択」―娘・美紀が巻き込まれる痴漢冤罪。父の的確なアドバイス。
「専門官」―神奈川県警専門官も竜崎の手中に。
「参事官」―キャリアとノンキャリの参事官、案外良い関係。
「審議官」―竜崎も必要とあれば、ご機嫌取りもできる男。
「非違」―非違といえば戸高。大森署美貌の新署長の手腕。
「信号」―竜崎曰く「どうでもいいです」。まさにその通り。
シリーズ本編と比べると小粒ながら、どれも竜崎らしさが存分に発揮されています。
特に家族を描いた短編は、竜崎が家庭すら組織のように扱い、しかも適切に処理してしまうユニークさが光っていました。
Posted by ブクログ
このシリーズのスピンオフは、合理性を重んじる竜崎が何気なく放つ魔法の一言で事件や悩みが解決する、安楽椅子探偵的な作品が多い。だが本作は、竜崎の家族が主人公となる作品も収録されており、いろんな角度から竜崎イズムを楽しむことができる。
竜崎の上司である佐藤本部長の食えないキャラも魅力的
Posted by ブクログ
相変わらず、仕事をする上で有益なヒントが、数多く提示されている。ただし、現実には、竜崎のように、いつもいつもうまくいく手ではないだろう。
会話文と当事者の内面のつぶやき叙述でスルスルと流れていくので、誰にでも読みやすいというのが、本シリーズの特色。
Posted by ブクログ
竜崎署長(前巻から部長ですが)ファンとして全巻読んでいます。周囲の様々な人の視点で主人公の多面的な姿が、ちょうどキリの良い長さで描写されて、スピンオフ短編集を読むのは楽しいです。
このシリーズを読むと、こういう人であったらいいなという主人公のいろいろな場面での造形を考えて好きなように描写していくことができて作者は楽しそうだなと(もちろん、実際にはご苦労がおありと思いますが)感じます。うらやましいです。
Posted by ブクログ
隠蔽捜査スピンオフ短編集
神奈川県警に異動する前後の時期
安定した面白さだ。
竜崎の周りの人々が主人公ではあるけれど、竜崎の存在感がすごい。誰もが竜崎に相談し、背中を押される。
しかし、野間崎管理官は、どこまで俗物になるんだろうか?野間崎管理官の今後も気になってくる。