山本幸久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
もうすぐお雛祭りだけに、雛人形への気持ちが高ぶりました!
こういった、昔からの伝統を、今の時代に合わせながら伝承していくことの大切さが伝わってきた、今を生きる私達にとても必要な、そして温かいお話でした。
私にはこどもがいませんので思いつきませんでしたが、この小説に出会い、姪が二人いるので、新しい雛人形を買って、姪の成長を願い自分の部屋に飾るのもいいなと思いました。できれば森岡人形の雛人形のように1つ1つ職人さんの手によって作られた雛人形がほしいです。
日本独特の文化を、やっぱり大切に受け継いでいきたいなっ、日本の文化って素敵だなって思う作品でした。 -
Posted by ブクログ
久しぶりに読む山本さんの作品。
毎回、よくこういう題材を見つけてくるなぁと感心する。
今回取り上げるのは、雛人形を製造・販売している創業百八十年の老舗。
だがその<森岡人形>の八代目社長・恭平は37歳の若手。それも十年前に七代目社長だった父の急逝により何の準備もなく社長として職人としてやっていかなければならなくなったのだ。
職人たちの平均年齢は七十三歳、いまだに先代や先々代を引き合いに出したり、酔っぱらっては喧嘩を始める彼らと上手くやっていくのは難しい。
ほかにも同業者の<櫻田人形>の社長や会長にあれこれ頼まれごとをされたり、人形共同組合の仕事を押し付けられたり。
さらには出身校の<鐘撞高校>ボート部のコーチをボランティアで引き受けたり。
もう大忙しだ。
だが一方で職人の技を継ぐ者がいないという継承問題もあるのだが、その光明となりそうなのがフィリピン人のクリシア。やる気も才能もある彼女が<森岡人形>に新たな風を吹き込むのか。
そして、離婚して出戻ってきた同級生と恭平を周囲がやたらとくっつけようとしていたり。
伝統工芸やその会社の継承問題、商売としての生き残り、高校ボート部の練習とその成果、職人たちそれぞれの生き方や家族関係、そして恭平の恋の行方(というほど大げさなものではないけれど)。
様々な要素をギュッと詰め込んで、一見忙しなく思えるのだがそこは山本さん、テンポよく楽しく読める。
クセの強い職人たちや、やたらと恭平に身内問題を頼み込む<櫻田人形>親子も憎めないし、<鐘撞高校>ボート部のライバル<大凡高校>ボート部コーチのキツネ男も分かりやすくて面白いし、クリシアの懸命さも良いし。
ちょっと掘り下げが足りないかなとは思うものの、ページ数やテンポの良さを考えれば、このくらいがちょうどいいのかも知れないとも思える。
だがこういう、技術の継承問題や老舗の継承者問題はどこにでもある。せっかく商売としてなりたっていても継承者がいないために店や会社を畳まざるを得ないという話も時折聞く。
<森岡人形>も最後にミラクルが起こるが、それで何もかも解決ではないし、今後も恭平たちは様々な困難にぶつかるだろう。職人たちに残された時間は少ないし、その間に新しい職人を育てなければ<森岡人形>は人形製作自体出来なくなる。
それでもとりあえずは一歩前進というところだろうか。
出来ればそのうちに他の作品でも良いので<森岡人形>のその後に触れてくれれば嬉しい。
山本さんはそういう遊び心を作品内で見せてくれたので、きっとあるとは思っているけれど。 -
Posted by ブクログ
人形の町・鐘撞市で創業180年を誇る森岡人形の八代目を若くして継ぐことになった森岡恭平の奮闘記。恭平は雛人形の頭を創る頭師として、また母校の高校でボート部のコーチも務めていて多忙な日々を送っている。とにかく人が好くて周りに振り回されてばかりだが、面倒見もよく人望も厚い。
魅力的な主人公と周りを固める騒がしく憎めない面々の織り成す人情劇に、雛人形の製作過程やボート部の活動などが描かれ、とても楽しい作品だった。『血煙荒骨城』にまた会えるとは思わなかったが(笑)。
舞台となる鐘撞市は埼玉県岩槻市(現さいたま市岩槻区)と思われる。ぼくは隣町で育ち、自転車で遠征したことを思い出して懐かしかった。 -
Posted by ブクログ
老舗人形店の8代目社長・森岡恭平。職人としても働いているが、後継者問題や売上低迷、自身の婚活など頭を悩ませる日々だった。
そんな時、会社にフィリピンパブに勤める女性が訪ねてきた。「弟子にするよ」という酔った勢いで言ってしまった職人の言葉を本気で信じてしまったため、恭平は最初断ったが、女性の熱意や人形の豊富な知識に圧倒され、雇うことになった。世代で違う価値観、伝統を守っていくことへの葛藤などあらゆる問題を浮き彫りしながら、会社はどう生き残っていくのか?
作品での「人形」は雛人形を指していて、そこではあらゆる知らないことが溢れていました。
それぞれのパーツは分業制で、それぞれがプロフェッショナルに活躍されていて勉強になりました。
そういった状況の中で起きるフィリピン人女性の出現。
面白い状況でしたが、女性の熱意や異国から見た「日本」に対する印象が、日本人とは違った価値観があって、意表をつかれました。
「人形」だけでなく、恭平が経験した「ボート」(競技)についても描かれています。こちらも知らなかったことだらけでした。
ただ単に紹介しているのではなく、人に教えるような形で感情を乗っけて紹介している印象なので、奥深さと愛を感じました。
昔からある会社。長年いるからこそ、様々な考えがあります。生き残っていくには、柔軟に対応していかなくてはいけないと思います。昔、成功したからといって、同じ方法で成功するとは限りません。
〇〇だからこうという古くからの固定概念を崩し、時代時代に寄り添っていくことが、「受け継ぐ」ことなのかなと思いました。
時代が移るごとに人も入れ替わっていきます。その中で、どう受け継いでいくのか。
笑いを交えつつ、「受け継ぐ」ことの難しさが描かれていましたが、登場人物のそれぞれの葛藤に自分も頑張らなきゃと思いました。
主人公の若社長は、後継者だけでなく、恋愛や社長業と色々苦労されています。今後に幸あれとエールを送りたくなりました。 -
Posted by ブクログ
凪海(ナミ)が働くデザイン事務所、「凹組(ボコぐみ)」をめぐる物語。
お仕事小説でもあり、『遅く訪れた青春』小説のようでもあり。
何だか楽しい読み心地。トラブルやハプニングも起こるのだけれど、あまり心を乱されずに読めた。
凪海(ナミ)視点の時にも大滝視点の時にも、語り口がちょっと呑気だからかも。
この作品だけで完結なのかな。シリーズで読みたいような気持ちもある。ゴッサム・シティやQQQのこともあまりわからないままだったし、それぞれの恋愛模様もほぼ見えてこなかったし。
短編の「凸凹ホリデー」は、ちょっと不完全燃焼。なんか、切ない気持ちになったなあ。もう少し報われる感じが欲しいと思ってしまった。
274ページ 4行目
どんとん→どんどん -
Posted by ブクログ
連作長編。9つのお話が入っている。
ひとつの話ごとに、時間が過去に戻る。前に読んだこれとは関係ない2冊も時間が遡っていくところがあったので、あれ?また?と思ってしまった。
でもこの手法自体は割と好き。前のあれはここからこうなったんだーと知るのが楽しい。
毎回、床屋さんがちらりと出てくる。ちょっと無理にでも床屋さんを絡めてきているのかな、なんて思う部分もあった。
勇が年齢に対して大人すぎるのと、登場人物たちの会話がたまに不自然なのとが気になった。こんな話し方はしないだろうなとか、こんなやり取りはしないよね、とか。
どの章も最後はちょっといい風に終わるので悪い感じはしないのだけれど、腹立たしいイヤなひとが出てきたり、登場人物がイヤな思いをしたりするので、読んでいる最中の気分はあまり晴れやかではなかった。タイトルから、何となく終始ほのぼのなストーリーをイメージしていたので意外だった。
途中、少し退屈しながら読み進めてしまったものの、後半の「床屋さんへちょっと」は良かった。集大成って感じで。まあ、ここでもイヤなひとが出てくるのであまり穏やかには読めなかったんだけど。
通して読むと、ひとりの男の生き様や家族の絆が見えてきて、あたたかい気持ちになった。もっと全体的に穏やかでもいいのになとも思ってしまうけれど、いろいろなことがあったからこその最後の展開なんだろうなとも思う。