乾くるみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
自分の読書歴では初のアンソロジー。
トリック満載のミステリとコロナ禍で起きた世の中の異変に触れた作品もあり。
六者六様のお話が展開されているので、合う合わないは結構大きく分かれたかも。
やはりトップで読み応えあったのは、
辻村深月『2020年のロマンス詐欺』だった。
"闇バイト"に関する話は年月の経った今でも、
というか更に横行しているからこの作品は教科書に載せて恐ろしさを知ってもらいたいくらい。
孤立無援の環境で追い込まれていく緊張感がとにかく怖い。しんどい時期でも不逞な輩を近付けないように日頃から対策していけますように。
芦沢央『投了図』もコロナ禍が招いた事件。あの頃はみんな辛い我慢が多かったなと思い出させる作品。こんな悲しいことがまた起きてしまわないように。将棋の知識は皆無だけど読みやすかった。
のちの新作『おまえレベルの話はしてない』でも
将棋を通した人間模様が描かれているようなので
文庫化の暁にはそちらも読んでみようかなと思った。
個人的に新しく見つけた「好き」だったのは
大山誠一郎『孤独な容疑者』だった。
死角から現れたトリック!シンプルに読み物として面白かった。ネタバレは避けて読んで欲しい。 -
Posted by ブクログ
ファンタジー的な設定でありながら、ミステリーとしての論理がしっかり成立していて、とても楽しめた。
展開もほとんど予想できず、意外性が強かったのも面白かったポイント。
一方で、実際に“リピート”するまでの過程はやや長く、序盤は少しページをめくる手が止まりがちだった。
読んでいて特に考えさせられたのは、「もし自分が過去に戻れたらどうするか」ということ。
お金を稼いだり、過去の失敗をなかったことにしたり、一見すると人生をやり直せる夢のような話に思える。
しかし作中では、主人公が過去で一度勝った麻雀に、リピート後は負けてしまう場面がある。ほんの少し歯車が狂うだけで、その先の未来は大きく変わってしまうのだと感じた。
今当たり前に存在している幸せも、偶然の積み重ねや、未来を知らなかったからこそ積み上げられた努力の結果なのかもしれない。
それを忘れてしまうことこそ、“人生をやり直す”ことの最大のリスクなのだと思う。
私には今、生後2ヶ月の子どもがいる。
もし妊娠前の過去に戻ってしまったら、この子にはもう二度と会えないかもしれない。生活リズムやストレスの違いだけでも排卵周期は変わるだろうし、たとえ妊娠中に戻れたとしても、同じように無事生まれてきてくれる保証はない。
そうした「失う怖さ」を忘れ、欲望のままに暴走していく登場人物たちの描写が、とてもリアルで印象に残った。 -
Posted by ブクログ
物件の気持ちが分かるという、謎の女性《不動尊子(ふどうたかこ)》が様々な物件の謎を家主に教える短編集。
思っていたようなミステリではなく、ほんわかした日常系ミステリでしたね(^_^;)
著者の乾くるみさんと言えば、『イニシエーション・ラブ』や『リピート』が有名作であり、ちゃぶ台返し並みのどんでん返しが印象的であったが故、本作もハードルあげて身構えていましたが、どの短編も最後はほっこりする感じで、不動産のことに少し勉強できた良作でした。
登場する不動尊子は、あまり存在感を押し出すタイプではなく、謎に悩む家主の前にひょっこり現れて、ちょっとだけ解決して涙を流すと、やはり謎の女性で終わる展開。
でも、なんとなくシリーズ化できそうな作品だなと感じるので、ちょっとだけ続編を期待したくなります。
乾くるみさんのこういう作品もあるんだと、私にとっても新しい発見にほっこりしました。 -
Posted by ブクログ
イニシエーション・ラブが鮮烈だった乾くるみによる、
あのタイムリープの元祖ケン・グリムウッドの『リプレイ』と
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』に挑んだ作品との触れ込み。
ある日、大学生の毛利圭介の元に謎の電話がかかって来る。
電話の主は今から一時間後に地震が起こる旨を伝え、
実際に地震が起きたらまた電話するとだけ告げ電話を切る。
そして一時間後、本当に地震が起こる。
電話の主はこう告げる、もし現在の記憶を持ったまま
十ヶ月前の自分に戻れるとしたら?
リピートと呼ばれる夢のような体験に誘われ
集められた九人の男女とその首謀者と思われる風間という謎の男。
こうして計十人の男女は、疑いつつも人生のやり直しに臨む。
ところが十ヶ月前にリピートした彼らは
一人、また一人と不審な死を遂げていく。
イニシエーション・ラブの時と同様に、
その謎の仕組みが解けた時、なるほどと唸らされた。
とは言え、前談部分が長すぎた。
最初読んでて、結局彼らはこのまま過去にリピートせずに
現実時間の中でゴタゴタに巻き込まれるのかと思ったくらい。
それぐらい、前談部分が冗長過ぎたのは正直な感想。
それと題材が題材だけに、やけに理屈ばったセリフの多さも
その冗長過ぎる印象に拍車をかけたかもしれない。
仕掛けとしてはお見事ではあったが、
その全貌を掴むにはそれなりの発想力と理解力が求められる気もした。
うーん、面白かったは面白かったのだが、何とも勿体ない気もした作品。