池井戸潤の長篇小説。
2010年刊行。
吉川英治文学新人賞受賞作。
中堅ゼネコン・一松組の若手社員である平太は、ある日現場の施工管理から、常務直下の「業務課」に異動を命じられる。
現場志向の平太としては不満のある異動だったが、サラリーマンの宿命として受け入れる。
「業務課」は、気の弱い課長と、脂ぎったお調子者の中年社員、ミステリアスな美人庶務の3人しかメンバーがいない、社内でも謎とされている部署だった。
平太は「業務課」で、コストダウン交渉や役所への営業など、慣れないながらも仕事をこなしていく。
しかし、ある公共工事をきっかけに、平太は「業務課」が談合を取り扱う裏の顔を持っていることを知る。
平太は世間に背く不正行為である談合を初めは嫌悪するが、業界と会社を生かすための手段でもあることを知り、葛藤しながらも手を染めていく。
そして、日本の大きな談合を取り仕切る「天皇」三橋と出会い、地下鉄工事という巨額の「案件」に向かっていく。
以上が本作のあらすじ。
舞台の時代は明記されていないが、情景描写から推察するにバブル崩壊後かつリーマンショック前の1990年代後半。
当時の社会問題であった建設・土木の公共工事に関する「談合」をメインテーマに据えている。
池井戸潤の作品をちゃんと読んだのは初めてだったが、エンタメ性が高い作品だと思った。
ストーリーは長いが、それなりにテンポが良く、登場人物のキャラが分かりやすく立っているので読みやすい。
一方、ストーリーが単線的で、それ故に物足りなさを感じた。
意味ありげな設定が伏線になるわけでもなく、キャラの掘り下げも甘いので、ストーリーのためにすべてが存在するような、そんな感じが好みではなかった。
(トキワ土建が談合破りをした理由が後に繋がっていなかったり、色々雑)
本作は幾つかの対比が明確に描かれる。
生き残りのために談合をする建設会社とその正義を疑わずに強行する検察。
現実を直視して汚い仕事に手を染める平太と理想論に固執して平太を蔑む萌。
この分かりやすさが読みやすさに繋がっており、これが人気作家のテクニックなのだと思った。
ただ、萌の掘り下げがなかすぎて、単なる思考の薄っぺらいクソ女としてしか見れなかった。気になる読者は多いだろう。
(銀行員がリアリスティックなだけの無能だと言いたいなら、成功しているが)
現実の仕事とは、本書のようにドラマティックで分かりやすいものではない。
もっと単調で、退屈で、複雑で、煩雑で、難解なものだ。
しかし、現実の仕事にも本作における平太たちのようにえも言えぬ達成感を感じることがある。
池井戸潤はそれを理解して、エンタメに落とし込んでいる。
故に彼の作品はよく売れるのだと感じた。