河合隼雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ河合先生の本は、進んで読ませて頂いており、何冊か読ませていただいたが、今回の本は少々難しかった。
「あとがき」で、「本書ではやはり、はじめの部分はどうしても入門的なことを書かねばならないが、後の方にはすこし深い、思い切ったことも述べることにして、筆をとった」と書かれており、理解不足もやむをえないかと、少し救われた気分だ(笑)。
作家・随筆家としての河合先生ではなく、日本を代表するユング派の心理療法家としての本気が、なるべく初心者にも理解できるように書き下ろされたものであり、内容的には一般人読者にはハードルの高いものだと思う。
しかしながら、ユング派の心理療法(見る夢を解釈して、無意識の状態を知り、治療に生かしていく)について、少しでも覗いてみたいと思い手に取ってみた。
フロイトもユングもともに「無意識の世界」の研究を進めたが、簡単に言えば無意識のとらえ方の違いから袂を分かつことになったようだ。本書の著者・河合隼雄先生は、そのユングの考え方を支持されている。
本書は、ユングの理論の中で、コンプレックスとはどのようなものか、自我とは何か、無意識から現れるイメージやシンボルとは何か、無意識の深層に潜む、グレート・マザー、元型、影について、ペルソナとアニマ(アニムス)の関係について説明されている。
「夢は、無意識層から意識へと送られてくるメッセージ」と言うことで、本書の中でも数多くの夢の解釈事例が掲載されており、その解釈を通じて上記の概念について説明されている。
正直のところ、夢の解釈については、プロの心理療法家の領域であり、素人が分かろうはずはない。
夢の解釈を理解することより、人の心が病んだり、回復したりすることにちゃんとした理屈があるのだということや、それを知らずに間違った行動をとることがいかに危険であるかを知ることに、本書を読む意味があると思った。
我々が普通にわかる「意識」層。
その「意識」層に影響を与える「無意識」の構造を知ることが大事。そこには我々が知らない重要なメカニズムがあるということを知るだけでも大きな意味があると思う。
最終部分に、ユングが自身の体を使って自身の理論の実証実験を行うような場面が書かれている。凄まじい格闘の末に成果が得られたようだが、それはユングの自伝などに記載されているとのことだ。
ユングが最終的に至ったのは、自身の考える「無意識」の構造との共通点が、古代の東洋哲学に見られるということであったようだ。
「ユング心理学と仏教」という河合先生の別の著書もあるようでそちらの本も非常に興味深い。
ふだん我々が何気に見てる夢・・・これには、自分自身の心の状態が確実に反映されている。夢は大事なメッセージだ。
本書によれば人は一夜に5本立てくらいの夢をみているという。なのに朝思い出せない(涙)。そして、思い出せたとしても、その夢の解釈は素人ではやらないほうがよさそうである。 -
Posted by ブクログ
ユング心理学の大家である河合隼雄先生の本です。人間の精神構造についてユング心理学の概念を用いて説明しています。男性の女性性を表すアニマ、逆に女性の男性性を表すアニムスといった概念で個人内の葛藤を分析する方法論は自然科学好きな僕にとって異文化で面白いと思いました。他にもユング心理学は神話と結びつきが強く、シナリオライティングの本で見た元型(アーキタイプ)という概念がユング心理学由来であることを知ったのも収穫でした。もうひとつ実に面白いと思ったのが共時性という考え方です。自然科学では事象発生を因果律という規則の下で分析しますが、共時性は個々の事象の連鎖という線形な見方をやめて世界の全体性、統合性を軸に分析します。これは新しい世界解釈のフレームワークだと思いました。天才的な物理学者パウリがこれについてユングと共著で本を書いたのも興味深いです。
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Posted by ブクログ
たまたま古本屋で手に取った本だが、やはり河合隼雄さんは外れが少ない。
親子関係において、独立と依存は反対語ではない。適度な依存を得てこそ、子はある日すっくと立ち上がり歩きだすことができるという話。
「天使のまねをしようとするものは、悪魔のまねをするに至る」子供に良い子であれと求めすぎると、内側で悪魔的あるいは陰的な因子が育っていくことは避けられないという話。
いまの若者は、場の倫理を前提として個の倫理を加えたものに従っているという話。
読み終わって2日経ち、断片的にしか思い出せないが、これらは全て家族のある中年の、つまりは働きざかりの、おじさんの直面する問題として繋がる。
会社で奮闘する一方で、家族のセンシティブな問題にも向き合わないといけない。
そんなおじさん達の切迫感が伝わってきた。
河合さんのいうように、今まさに「中年学」なるものが必要かもしれない。 -
Posted by ブクログ
(P86)
「突撃!」と号令がかかったときに、真っ先に突撃して死ぬのがもっとも強い父性だと思われていた。
(P87)
・昔の父親は強かったと言われるけれど、本質的に昔から強くはなかった。
・そこを勘違いして、「昔の強かった日本の父権を復活させよ」と言われるけれど、そうした考えは疑問。
・日本でこれから父親が強くなろうとしたら、全く新しい父親像をつくりだす覚悟が必要。
・明治の父親は強かったからと、あれを真似しようと思ったら、大きな間違いを起こすことになる。
・あれは、父親がいばるための制度。
・人間としては鍛えられていなかった。
(P89)
・羊の群れ。オスの羊が1歳になると殺す。
オスが何頭もいると統率がきかなくなる。
・羊の群れをコントロールして人間が生きていく放牧のパターンと、
「聖書」の1歳の男の子を殺す話はほとんど一致する。
(P90)
・父親の存在感 殺すか生かすかの生殺与奪の権力と、それを行使する判断力や勇気
(P166)
・人間というのは、怒ったり怒鳴ったりするから価値があるというのに。
(P167)
・いい子になんか育たない
(P169)
・そういう子どもの一面を、おもしろいと思うか、不具合と思うかの差
・人間というのは、こんなにおもしろいものなんだと思いはじめたら、いろいろなものが見えてきて、どんどんおもしろくなってきます。そこに気づかないまま、あくせく働いているのは、やはり大きな損をしている
(P170)
・いまは電車がちょっと遅れただけでも、みんな怒りまくっています。ちょっと予想外のことが起こると、なかなかそれに対応できないでイライラをつのらせます。機械にそういうことを求めるならいいけれど、それを人間にまで求めるから、おかしなことになるのです。
(P227)
・家族の文化、家族の無意識、とひとことで言うのは簡単ですが、そこにある重さ、深さ、広がりにとてつもない存在感があり、まるで自律した動きを持つべつの生き物が、家族の世代を超えて生き続けているかのように感じられるような事例に出会うことがあります。人知をはるかに超えたところで、予測もしなかったような出来事が起こり、あとはするすると糸が解けていくように物事が展開していくのを体験することがあります。家族に宿る魂という言葉がふさわしいのかどうかはわかりませんが、まるで家族の中心に知恵者としてのなにかが存在し、家族の成熟を促したり、家族全体としての絶妙なバランスを保ってくれているようにも感じます。しかし、家族の大きな変化には、死と再生ということがつきものですし、それが象徴的に起こることばかりとはかぎりません。正直いって、事例を担当することに怖さを感じたりすることもあります。(酒井律子さん 京都市教育相談総合センター カウンセリングセンター)
(P229)
・三代ぐらいたつと、家族のパターンに合わせられない子どもが出てくることがある
厄介者
じつはその子が改革へのきっかけを与えてくれる -
Posted by ブクログ
河合隼雄と谷川俊太郎かー。
読みたい!と思って、さささっと読んだはずなのに、レビューを残していなかったので今更に。
「読む」「聴く」という、人の意識的な受容について、なかなか興味がある。
「見る」ではなく「聞く」でもない。
そこには、何かを受け取ろうとする人の姿勢のようなものが感じられる。でも、私は一体何を「読み」、何を「聴け」ばいいんだろう?
時々、その当たり前が当たり前でなくなるときがある。
『人類に共通な巨大な頭脳みたいなイメージがインターネットにあり、その頭脳を共有できる時代だということはよくわかるんですが、そのとき、頭脳を入れている体はどこに行ったのという疑問がどうしても拭い去れないんです。……もう一つ、そのインターネットの世界は本当に意味というものに貫かれている。人間にとってイノセンスというもの、無意味というのも結構大事だと思うのですが、そういうものがインターネットにはどうも欠けているのではないかというところが一種不安としてありますね。』
『文字ができるということは便利な代わりに心の働きを限定するところがあるのです。たとえば山という字ができると、山がわかったように思ってしまう。……一つひとつの山を見て感じることができなくなってきます。ケルトはそちらのほうを発展させたのではないか。だから文字がないのではないかという考え方は面白いと思いました。』
私の持つ目や耳が確かにこころと繋がっているという、感じ。その感じを忘れてはならないのだと思う。
谷川俊太郎さんの詩が素敵。