河合隼雄のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
河合先生の対談本は何冊か読んでますけど、だいたい対談の相手がカウンセリングを受けてるみたいになってるんですよね(笑)。
ついつい話が弾んでいく様子がよくわかります。
で、今回のお相手の鷲田先生の提唱されている臨床哲学の考え方は日々臨床に携わる上での参考になります。
エビデンスの重要性が盛んに言われますが、実際のところは諸問題を未然に防ぐための方便の要素の方が強いのが実情ではないですかね。
現代人は因果律で考えることが大好きなので、原因と結果で説明された方が納得しやすい。
しかし現実は偶然の積み重ねや、様々なめぐり合わせで事態が好転することが多いのは臨床家なら経験していることでしょう。
外面的には論理的に考えてるようで、実際のところは場の論理やら縁やらシンクロニシティを重視しながらなんとなく仕事をこなしていく、というのが今後の目標になりました。
(ええのか?これで。) -
Posted by ブクログ
表題どおりの「母性社会日本」をめぐる第一章は現在でも通用する議論でなかなかおもしろくあったのだが、その後がいかんせん。方々に書いたエッセイを集めたというから繰り返しも多く統一性に欠ける。文字数の制限を理由に論が深まらぬところもあって、「ココんとこもっと」とおねだりしたい箇所も多く痒いところに手が届かない。
父性原理の特徴は「切断」にある。極端ではあるが良い子は我が子で悪い子はよその子という風に。キリスト教というのはまさにこういう考え。
母性原理としてユングは三つあげている。すなわち「慈しみ育てる」「狂宴的な情動性」「暗黒の深さ」。
日本では母性の「慈しみ育てる」面だけを称揚し、「暗黒の深さ」という一面にフォーカスをあてることが少なかったのではないか筆者は考える。「暗黒の深さ」というのは「呑みこみ、しがみつきして、死に到らしめる」という言葉で表されている。
母性原理が顕著にあらわれているのが日本の学校だ。
誰もが平等に扱われるため、欧米のような飛び級や留年は存在しない。
この本が書かれた90年代から、さらにその傾向は増しているようにも思える。(学芸会の演劇で女の子はみんなお姫様役とか)
ただし留年したからといってそれが即コンプレックスになるわけではないという。むしろ欧米のような個人主義では、勉強ができないなら諦めて他の道を探すというように、「人それぞれ能力の差異があるのは当たり前」を前提に考える国々では能力が劣ることも個性のひとつとして考えることができる。
しかし平等という考えを前提にすると、「平等であるはずなのに自分は何故皆と同じようにできないのか」と考え悩むという。
――ひとつの文化がひとつの原理のみで成立するはずがなく、何らかの方法で対立原理をそのなかに取り入れ補償をはかっている。わが国の場合は、母性原理に基づく文化を、父権の確立という社会的構造によって補償し、その平衡性を保ってきたと思われる。
父権制度や総理大臣が今もって男であるのは、女性の代理としての機能を果たすのであって実際に権力を握っているのは女性であった。GHQはそれを男尊女卑と見てこの解体を急いだことで今の家庭の混乱がある、と。
――西洋における個の倫理が言語による契約によって行われるのに対して、場の倫理は非言語的な羞恥の感情機能に支えられているのである。われわれ日本人は子供のときから、この羞恥の感情に基づく自己規制の方法を学習させられている。
欧米は「個の倫理」、日本は「場の倫理」と言われる。
「場の倫理」ではとにかく何を置いても場の内側にいることが求められる。内側にいさえすれば、その人の人柄や人格など多少の問題は看過され、場を共有する人間は彼の人に対して責任を負う。
しかし場の外にいる人間に対しては何ら責任を負わなくていい、極端にいえば何をしたってかまわない……そういった酷薄な面を持つ。
しかし……読めば読むほど、自分は本当に日本人なのかと考えざるを得ないのであった。 -
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これは、明恵の夢に対する著者の考察をまとめた論文のようだ。鎌倉時代に生きた僧、明恵の夢記を紐解き、夢とともに(ユング派でいうところの)個性化を成し遂げて行ったであろう論を展開している。転機においては判断のヒントを、完成に至っては華厳の世界の実現を夢と現実とにみたであろうと。深層心理の幕開けが、20世紀初頭であることを考えると、この時代にこれだけ夢に真摯に取り組む人がいたということに、著者がいだく驚きと尊敬の思いとが随所に感じられる。ただ、時代を追ってはいるものの、個別の夢ごとの説明と、夢は現代語訳されておらずすぐにイメージがわかないために、明恵という人物像を読者が全体的に捉えることには失敗している。明恵の人物伝といったストーリー性を求める人にとっては、期待外れの本といえよう。
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「こころの処方箋」の著者である河合隼雄さんのユング心理学をベースとした評論本.連載モノを文庫化したもの.
注意として,本書は新書ではよくあるような「どうすべき」ということを明確に示すようなものではない.しかし "対人恐怖" でなくとも,日本人が日本社会で少なからず感じていそうなことを指摘し,どのようなことが心のなかで起こっているかについて分析しているという意味で意義深いと考える.
第一章「日本人の精神病理」では,日本社会の母性原理について主に述べられており,日本独特の「場の倫理」という観点が興味深い.また,ユング心理学で重要な「グレートマザー」が守るだけでなく飲み込んでしまうような母性を反映したある種無意識下の普遍的な存在として紹介されている.
第二章ではユング心理学や夢分析について紹介されており,夢における自身の「無意識」との関連性について述べられている.
確かに日本人の自我が西洋におけるそれとは異質,ないしは西洋から見ると"無い"ように見えるのだが,必ずしも欧米と同じような自我の獲得が良いということを表明しているのではない.第三章ではこのような日本的(東洋的)な"意識"とはどのようなものかを説明しており,心の中心としての"自己"の概念について述べていた.
全体にわたって様々な症例における"相関性"や"グレートマザーの存在",またはグレートマザーから抜け出し自我を獲得するといった内容が様々な形で述べられているので,若干食傷の感はあるが,日本および西洋における意識・無意識,父性・母性,自我・自己などについて統一的な見解を得られる点は「こころの処方箋」を読んだ感じとやはり似通っていると感じた. -
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中堅の心理療法家・カウンセラーたちから寄せられた質問に著者が答えるかたちで、心理療法のあり方について論じた本です。
本書を読むと、心理療法家の人たちが心の病を非常に広い文脈でとらえていることがよくわかります。たとえば著者は、長年の妄想が治った患者から、「年来の友人を失った心境」だという感想を聞かされたというエピソードを紹介しています。ここには、ただ妄想を治してしまえばよいというような単純な考え方ではなく、患者を取り巻く社会や患者自身の生き方といった広い文脈のなかで患者の症状を考えようとする姿勢がよく示されているように思います。
心理療法家やカウンセラーと呼ばれる人たちも、そうした患者を取り巻く広い文脈のなかでみずからのなすべきことを見つけ出していかなければならないことはよくわかりましたが、そうした心理療法家の役割が世間から十分に理解されていないことに対する葛藤もあることを教えられました。 -
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物足りない。軽く読めてしまう新聞の連載。執筆時、河合さんは何歳だったのかな。ちっと「老い」との距離を感じる。的外れの文が多いが、なるほど豆知識もある。
・「いい年をして」
・視野を広げて心配事を増やす。
・おとなはみんなおなじことをいう。
・「ちっと」心配りを
・アイヌの「神用語」
・-してあげる。
・桑原武夫「文学でもすごいのを読むと、脇の下に汗が流れるンでっせ」
・苦しい死に顔は誰かの苦しみを背負った顔
・性の問題はあからさまに論じることによって、その本質を歪まされるようなところがある。
・秘密を抱えて頑張ることが支えとなるときもあるし、それを誰かに打ち明けることによって支えを得ることもある。
・能の入舞 -
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96年から03年にかけての連載
10年前の話だけれど、
取れ挙げられている事件や話題は、
今も通用する話ばかり
●ある事件を取りあげて、
その対策を論じているが、
事件の原因を個人に結びつけるのでなく、個人がそんな風に生きざるを得なかった環境を、どう改善すればよいのかが述べられているところに、前向きな印象を受けた
●科学や事実だけでは、
人は時に救われない、
という話が印象的だった
確かに、人生をどんな風に生きるかや、大切な人の死をどう乗り越えるかは、科学的事実だけでは答えは出ない
自分の価値観を育むためにも、
「歴史の流れ」を知ったり、
「事実に対する自分の考え」を形成して、流れるストーリーの中でどう考え、どう動くのかが大切だと感じる