小野不由美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めて感じたのは「80〜90年代(の少女漫画?)を感じる軽妙なやり取り」だった。最初の刊行から30年以上が経ち、リライトされているとしてもやり取りや機材にも時代を感じる部分がある。
ただ、書き方については最初の出版元を考えると意図的に当時のフォーマットに合わせたものかもしれない。
最初はやりとりが気になっていたが、読んでいくうちに慣れてしまった。
物語は終始、主人公 谷山麻衣の目線で進んでいく。読者は主人公に憑依(寄生?)して彼女の思考、感覚を通して共に怪異を体験するような形で物語が進んでいく。
麻衣は言い回しの中に(設定よりも)少々教養がありすぎる言葉が出てくるような気もするが、違和感を覚えるものではなかった。
作中には口も悪く癖も強いキャラクターがそろっているが、「バカな人物は一人もおらず、それぞれが専門性とそれに基づく解釈を持っていて、それでいながら流派が違えども論理が通じて議論になる」という私の好きな内容の物語であった。
読みながら描写が上手いなと感じることが多かった。
心霊的な描写をせずとも人間の目(と心理)を通した廃墟の光景が克明に描かれているので、廃校舎内で麻衣と同じ薄気味の悪さを感じられる。作中の随所で「何も異常がないのになんだか怖い、気味が悪い」という心理を共感することができた。物語後半の錯覚による恐怖や「分かっていても怖い」という表現も共感でき、これも「上手い!」と思った。
最序盤でのナルの登場時は物語の方向性が分からないことと麻衣がやたらに訝しむこともあり「コイツ本当に人間か?」とミスリードされた。ナルの正体については、オカルト、錯覚どちらとも取れる終盤の描写もあり、本書では明かされないあやふやな部分も残されている。
登場キャラクター達はただの名前ではなく特徴を捉えたあだ名で表記がされているのが良い。このおかげで複数人の発言や行動が入り交じるような場面でもそれぞれの見分けが容易である。その分、『巫女さん』や『ぼーさん』の本名がたまに出てくると「誰だ?」となってしまうが。
本作は純粋なホラーのみの作品ではないため物語が長くても最後まで面白さがすり減らない。
ホラー作品は怪異の意図や正体が不明である事が怖さ(=面白さ)の肝なので短編と相性が良く、話が長くなると間延びして退屈になるか怪異としてのベールを剥がされてパニックものになってしまいがちで、面白さを持続させるには工夫が必要になる。
その点本書は、廃校舎のなにげない雰囲気だけでも怖がらせることができるので怪異の頻繁な登場を要せず、その怪異についても自然現象か怪異かが議論され続けることで読者の気持ちを科学とオカルトの間で揺さぶることができている。一つの現象に2つの解釈ができるという二重構造のおかげでマイルドな怖さと気味の悪さが最後まで維持されている。
ただ、どちらにも解釈できる現象ゆえに明瞭な”化け物”は登場せず、そのため背筋がゾクゾクするような「今、本から目を上げれば部屋の隅や背後にナニカがいるのではないか」というような強烈な恐怖感はない。ジメッとしたつかみ所のない気味の悪さが続くので、強い恐怖演出を期待して読んだ人には物足りなさがあるかもしれない。
『解説』はイマイチだと感じた。書き方がハイテンションで空回りしているように見え苦手に感じるのもあるが、内容にもズレを感じる。感性が合わなかった。
本書の目玉はミステリーの手法よりもSF(科学的捜査と論理)とオカルト(超能力や心霊、怪異)の融合、あるいはオカルトを科学で解くことだと思う。論理の面はナルが筋を組み立て、他の登場人物はそれぞれの場面で議論(;仮説への反論や推論を推し進める)の相手になっている形なので、探偵役がほぼ一人で解明していくことが王道展開のミステリーとは少し違うし、トリックやオチも「おおっ」と思わされはすれども素直なものなのでミステリーらしさはあまり感じなかった。ミステリーの手法をモロに感じるホラーといえば綾辻行人の『Another』のほうがよほど印象的だ。
解説中にある『わたしはSFの人なので、わからないものが気持ち悪い』にも同意しかねる。SFもオカルトも、ファンタジーも現実の科学技術も好きな身としては、それらはどれも”わからない事”に蓋をする位置が違うだけだと感じる。SFも現代科学との乖離があるので突き詰めれば小道具はわからないものだらけだし、現実世界の現代科学にしてもどこかのレベルで理解を留める事がほとんどである。解説者はSF作品の手法でなら分からない事に気持ちよく蓋をすることができているだけなのだろう。と、反発する気持ちになってしまった。 -
Posted by ブクログ
相変わらず、お化け!って出るんやなくて、えっ?あれが?みたいな…
そこが、また、気色悪い(−_−;)
母親が亡くなって、父親が再建、上手く溶け込めず、転勤が多いのを理由に一人暮らしを始める。高校生で。
しかし、引越し先に着いた時から、嫌な感じ。
無言電話…
変な手紙…
夜に落書きする子供…
まぁ、親との関係が上手くいってないから、再度引越しは言い難いかもしれんけど、言え!
怖いやん!言え!
親に引っ越したいって!
それで、全部解決やん!
行くとこないからって、幽霊出るとこ帰るか…
帰らんと話にならんとは言え。
自身の過去を振り返ると、小さい時に酷いことしたことが思いが…
それが、今、住んでいる場所に関係してそう。
ミステリー要素もあって、犯人は誰(まぁ、幽霊か人間かになるんやけど)か!
スイスイ読めて楽しめました!
でも、小さい時って、人を傷付ける事してるかもって思うと、自分もないか、自省しないと! -
Posted by ブクログ
友人に勧められて読み始めました。
上巻だけの感想は、とにかく読み進めるのが辛かった。
カタカナで示されるよくわからない単語が洪水のように押し寄せ、何が何やらわからないまま、ひたすら陰鬱な展開が続く。
何の説明も与えられないままだし、主人公はいつまでも何ひとつ受け入れようとしないし、とにかくずっとイライラさせられる。
他人の悪意、暴力、絶望的な話ばかりで、何度も読むのを諦めようとしました。
しかし、それこそが読み手と主人公の感情をリンクさせる、あまりにも巧みな手法だったのだと、読み終えてから気づきました。
30年以上前の作品ということもあり、こちらの世界を描くエピソードやセリフには多少の古さを感じますが、人の心の動きそのものは今も大きく変わらないので、それほど違和感はありませんでした。
いまは異世界転生ものが大流行し、読み手にも主人公にもある種の「テンプレ」が共有されていますが、この作品では、突然異世界に放り込まれて「そんなものがあってたまるか」と拒絶する葛藤が本当に丁寧に描かれています。
また、途中であまりにも辛くなり、読むのを諦めそうになった時、ここに書かれていた「ネズミが出るまで諦めないで」という皆様の言葉のおかげでなんとか踏みとどまり、下巻を手にすることができました。ありがとうございました。 -
Posted by ブクログ
知っている作家さん、知らない作家さん含め色々な作家さんの文章にお試しで触れることができるのがアンソロジーの魅力の1つですよね。
澤村伊智先生、原浩先生、小野不由美先生の安定感は流石で、まさかの鈴木光司先生ご本人が登場する鈴木光司先生のお話も面白かったです。
そんななか今回の顔ぶれのなかでは一穂ミチ先生と阿泉来堂先生の著書はこれまで拝読したことが無かったのですが、今回はこのお2人の作品が個人的にはトップ2かなというくらい特に気に入りました。
阿泉来堂先生の読みやすい文章と個性的なキャラクター、一穂ミチ先生の「にえたかどうだか」の恐さ、他の著書も是非買ってみようと思えるもので、良い出逢いでした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ子供の時の純粋な気持ちは怖い。
オサルへのいじめは、同調圧力で、一対一なら子供達は決していじめないだろう。
「皆」やってるからいい。
自分の子供のときの記憶もそうだけど、その圧力から逃れるのは厳しい。
だから主人公のやったことを責められる気はしない。
主人公はきっと、ずっと苦しくて、その思いでグリーンホームに来てしまったように思う。
そしてホラーな世界と現実世界での壮絶な体験を経て、その苦しみが消えていく。
全て終わった彼の目に写った現実は、とても柔らかく温かい。
主人公が一対一で向き合ったオサルとの思い出が、彼を救ってくれて良かった。 -
Posted by ブクログ
再婚した親を嫌って一人暮らしを
始めた高校生がアパートで出遭う
亡霊たち
落書き、悪戯(いたずら)、お世辞にも感じが良いとはいえない住人たち、変な手紙、無言電話、予告電話‥‥
90年代、小野不由美は何度も何度も「此処ではない何処か」を描いた。何故か攻撃される人たちを描いてきた。「魔性の子」「東亰異聞」然りである。
簡単に殺される人間も
何故か生き残る人間も
「あの」世から不可解な
「この」世へ怪しき来り
「この」世は嫌いだ
「あの」世はこわい
その路地にさしかかったとたん
ぼくはひどく嫌な気分がした。
考える始めると
最後には必ず至る堂々巡り
(恨んでるよ)
(絶対に許さないからね)
「もっと強く、
生きたいと思わなきゃだめだよ
そうでなきゃ、取り込まれてしまう」
少年は、
緑の家の呪いから生還できるだろうか?
90年パンプキン文庫「グリーンホームの亡霊たち」を改題、加筆修正 講談社X文庫「新装版 緑の我が家」(2015)を加筆修正 角川文庫 2022年10月発行