あらすじ
「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射(たいしゃ)」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒(ひしょ)は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか――表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。(解説・辻真先)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
読み始めてから暫く、登場人物(と役職)の多さに心折られて半年ほど積読しておりました。
新刊発売までに既刊を読みたいと思いましたが全然間に合わず。
短編集ではありますが、4篇ともあまりにも重厚で、ため息が出ました。小野不由美先生の頭の中本当にどうなっているんだろう…
丕緒の鳥
陶鵲って実際にある儀式なの?と思わされるほどの練りに練られた設定にまず感服。
それから、丕緒のくたびれたというか、技術を凝らして人をドーパミン中毒にしていくWEBサイトを作らされている技術者の諦観を感じるような佇まいがあまりにも不憫で。
技術を極めた結果、それが果たして人間のためになっているのか分からなくなっている職人の哀愁に胸を打たれ続けるお話。
最後は「よかったねぇ」としか言えなくなりました。幸せになってくれ…
落照の獄
テーマ重すぎてメンタル地獄。
死刑制度をはじめ、刑罰や司法のあり方を問う、現代に於いても白黒つかないきっつい話でした。
そして最後まで全くすっきりしない。
柳国、これまでも「なんか荒れてるって話だけちょこちょこ出てくる」という印象しか無く、現時点で救いがあるのかどうかもわからない状態でそのまま終わってしまった。
いつかすっきりする話は出てくるのか…
青条の蘭
こういう後がない系の追い詰められる話本当にしんどい!
標仲よくやったよ!
最後のリレーのところ、めちゃくちゃ涙ぐみながら頑張れ、頑張れって呟きながら読みました。
そんでこの国どこだよ!王は誰なんだよ!信頼できるのかお前よぉ!?って思ってたら、最後にそれがわかって、ああもうそれなら大丈夫だ、ってボロボロ涙でました。
ただ、記憶力弱いので流石に最後に出てくる地名だけでは全然ピンと来なくて、調べたのは秘密。
風信
大人だからこそ、自分の役目を一心不乱に全うしようとするのかもしれない。けれど、その姿は周囲から見れば、時に歯がゆく、腹立たしくも映るのかもしれない。
自分にできること、自分がやらなきゃならないこと、それを知っている大人こそがどれだけ居るというのだろう。
研究者へのリスペクトが爆発しそうになる話でした。
Posted by ブクログ
これまでは国を司る「王」や「麒麟」が主人公の物語だったけれど、今回はその国に暮らす官吏や民達の物語。ひとつひとつのお話が「名もなき民たち」の生き様を見せてくれる短編集でした。
「丕緒の鳥」
読み終わった感想、>>良…!!!!!<<って感じでした(雑)。
どんな言葉に表しても野暮にならないか、これは…と思ってしまい……。
移り変わる王と時代に望みを失い、かつては心から楽しさとやりがいを感じて打ち込めた陶鵲を作る仕事に無気力になってしまった丕緒。現実を拒んでいたように見えた、いなくなったかつての同僚が、陶鵲を作ることを通して世界と対峙していたのではないかと気付く。そして、かつての王には向き合われなかった陶鵲を通しての思いが、新たな王に「伝わった」と感じられた瞬間の報われた思い。
最後の景王陽子の「……できれば一人で見てみたかったな。鬱陶しい御簾など上げて。もっと小規模でいいから、私と────あなただけで」のセリフに、ああ、この王は丕緒を名もなき人として見ているのではない、「名を持つひとりの存在」として眼差しているんだと思えて、そういう所陽子様大好き〜〜〜!!!♡♡♡になりました。
そして丕緒も陽子を「王」としてだけじゃなく、一人の人間として見れた瞬間でもあるんじゃないかなあと。
陶鵲を作ることへの希望とともに新たな王朝への希望を感じさせてくれて、総括して言うと>>良!!!!!<<になりました(雑)。
「落照の獄」
つれぇ〜〜〜〜〜〜!!!!
収録されている他の3編が「希望の物語」ならこれは「絶望の物語」だな……。
傾きゆく政治、荒廃しつつある国で起こった凄惨な連続殺人の罪人の刑罰を決めることになった官吏の瑛庚。暴動が危惧されるほどの国民たちの死刑を望む声があるが、かつて王は死刑を禁じており死刑が用いられたことはなく、今の王は「司法に任せる」と言ったきり興味も持たない様子で、それどころか国を治めようとする意欲さえ失ったかに見える。
世が荒み、凶悪犯罪者が増えれば些細な罪にも重い刑罰が蔓延し更に国は傾くかもしれない。箍を外す訳には行かない。その間で揺れる司法の葛藤は、現実の死刑制度の問題にも繋がっている。
瑛庚の妻は極刑を望み、犠牲者の家族を瑛庚に会わせるが、司法が信頼性を保持するためには独立した機関でなければならないことを理解してはくれない。
「我々は自覚している以上に臆病だな。理解できないものは切り離してしまわなければ安らかでいられない……」この言葉が心に残っている。
そうして切り離して世界を調整したようで生まれてくる綻びは、世界を揺るがしやがて崩れていく。死刑を言い渡された罪人の勝ち誇った笑い声で物語は終わる。
重苦しい話だったけど、終わりゆく国の絶望の始まりに過ぎないんだろうなと思ってつら……、でした。
理解できないものを切り離すのって自分を守る行動であり、自分を守りながら、じゃあどうすればいいんだろう……と答えのない迷宮に迷い込みました(?)
「青条の蘭」
このお話大好きすぎる!!!
ずっと荒廃した国がどこの国が明かされることなく物語が進んでいくけどラスト直前で「関弓」って首都が出てきた瞬間全てを理解してぶわーって鳥肌立つの気持ちよすぎる!!
民による青条ハラハラリレーも熱すぎる!!
やることも無くたむろしてた若者たちが遊び半分に手伝ってくれたことが希望に繋がってるのありがとうすぎる!!
荒れ果てた国で腐った役人が蔓延ってるけどそれでも捨てる神あれば拾う神ありというか人々の小さく細い望みが大きな運命を覆していくの涙無しには見られないすぎる!!
映画化してくれ!!!!と望まずにはいられない。
環境問題の深刻さ、そしてその理解の得られなさってこの話も現実に繋がってるなあと思いました。現実と地続きの物語大好き。
「風信」
虐殺から逃れた蓮花が新しく仕えた場所で他の人たちが浮世のことを気にせずに過ごしてると思って怒りを抱くけど、実際はその人達は民のために暦を作る仕事をしていて、「辛い時代を生きる民を助けようと一生懸命なんだ」と気付くの(まあそれは大前提としてその人達は興味のあるやりたいことやってるだけではあったんだけど)、自分もプロテストとかしたり社会問題に声をあげる中でSNSとか見て無関心に見える人達にどうしてって思っちゃいがちだけど自分の見えてないところってあるもんな、と省みるなどしました。
「民は災害や妖魔や戦乱など、苦難をもたらす多くの敵と戦わねばならない。だが、苦難と対峙して戦うことだけが道なのだろうか?」「戦うことが道なら、日々を支えるのも道ではないだろうか」、また現実の話になるけど、滅茶苦茶な時代を生きて日々生活していること、これが何よりも政治や社会に対しての抵抗になってるんじゃないかなって思わせてくれる。素晴らしいせりふだ……。
この短編集 メインキャラクターがほとんど出てこないんだけど、国を司る王とか麒麟だけじゃなく、名もなき民一人一人の人生がこの世界にあるんだって見せてくれて、なんて贅沢なファンタジー小説なんだろうって感動してしまいました。
十二国記を子供の頃読んだ時は陽子とか尚隆とか泰麒とか出てくると盛り上がったけど(今でもそうだけど)、今読んだらそれぞれの人生を生き抜く「民」に視点を当ててくれるのがしみじみ嬉しい。
「王」とか「麒麟」って民にとって眩い希望なんだけど、国があるのって「民」がいてこそなんだよな…!と思わせてくれるの胸熱!!
ありがとう十二国記!!ラブ!!
Posted by ブクログ
今までは王やその周りの人達がメインだったけれど、今回は官吏や民達の短編集。官吏は官吏としての葛藤が描かれ、民達は苦難に立ち向かう姿が描かれてより十二国記を深く楽しめるようになる。
Posted by ブクログ
発売日に買って読んだ初読時はまだ大学生だったし、(シリーズの流れ的に)ヒロイックな感触のストーリーが欲しいっちゃ欲しかったから、今ひとつハマれない感がなきにしも…という感じだったが、再読するたびに忘れられない作品に成長していっている。
現実への訴求がシリーズ中最も強いように思う。自分が働き始めたからか。
とにかく、自身の生業に向かうことがこのファンタジー世界でも最も尊くしかし苦しいというのは、王を主人公にし政争を描いたシリーズの他作品と何ら変わらないわけである。
「刑」に関する意識や、専門知や学問知への敬意がどんどん欠けてきている2026年の日本で。
Posted by ブクログ
王や麒麟が出てこない、民が主役の言わばスピンオフ。
シリーズの途中でちょっと休憩、くらいのつもりで読んでみたら、予想以上に面白くて。
主要人物不在でここまで読ませる小野さんの文章力に脱帽です。
「落照の獄」の死刑の是非については、私たちが生きている現実世界にも通ずる問題。
ニュースで惨い事件を起こした犯人が死刑ではなく無期懲役になったりしたときに、どう考えても死刑が妥当なのにって思ってしまいがちなのですが、それがいかに素人の感情任せの発想なのかということを痛感しました。
「青条の蘭」では国を守るために奔走する国管である標仲の報われなさ、民衆に理解してもらえないもどかしさで苦しくなり、そんな標仲の思いを受け継いでくれる人たちが現れたことで胸が熱くなり、終盤になってどこの国の話か判明するわけですが、国がわかった途端、あーもう絶対大丈夫だ!王にちゃんと伝わるからね!という安堵感で涙がこみ上げてきました。
それと同時にやっぱり王は王というだけで期待されて、背負うものが多いんだなーとも。
引き続き十二国記を読むにあたって、より深く各国を知ることができたので、読んでよかった。
Posted by ブクログ
シリーズ再読中(30年ぶりに)
おもしろかったけど、このタイトルだけ印象がほぼなかった…のは、市井の話やからかな?
読み込み不足のわたしにはどの王の話かはわからんけど(陽子なのか、その前なのか…)どちらにしろ
現実!!!!
て、感じが、ややお疲れの今はしんどい。笑
特に裁判(平たく言い過ぎか)の話がしんどかったな
このしんどさは30年前にはわからんかったかもしれへんし、そもそもこの話をホワイトハートで…?
(禁句)
しかも後半の二つは新潮版書き下ろしなの?
まじすか!!
書き下ろしのひとつ、山の話が一番おもしろかった
こうして読むと先の二章より読みやすい気がしたのは気のせいか。笑
筺がどうなったのか、最後まで書ききってないところがまたたまらん…
関弓って楽俊がいるところやっけ?
あれ?違う?
もしかするとこの先の話に今回のエピソードも関係してくるかもしれない
引き続き再読していこう
新作(いうて何年前よ)はまだ未読
Posted by ブクログ
2本目、落照の獄 とても面白かった。
これまで読んできたシリーズの中でも群を抜いてファンタジー要素が薄い。
これまでのストーリーで紡がれててきた、現実世界ではあり得ないファンタジーの世界観を確実に引き継ぎ、前の巻でチラついていた伏線を綺麗に拾い上げながら、それと同時に現在の現実世界で見られるのと全く同じ問題、つまり司法の意義や矛盾に苛まれるリアリティのバランスが素晴らしく、まだ次の章を読んでいないのに興奮して感想を書いている。
私はこれを読んで、死刑は国家が罪人を理解し、更生させる努力を放棄した結果である、という主張を作者から受け取った。森鴎外の高瀬舟を彷彿とさせる。死刑を宣告した後の主人公らの敗北感、このような罪人を生み出した国家の怠慢を、国家自身が蓋を覆って見なかったことにしてしまうことへの違和感、それを自覚していてもなお、そうせざるを得ない無力感が最後のページに克明に刻まれていて、後味の悪い読後感がさすが残穢を書いた人だなというだけある。小野不由美はやっぱり不気味なストーリーを作るのがうまい。
国家統治の話を個人の日常生活に落とし込むのは的外れかもしれないと思うが、最近私がぼんやり考えることにも繋がっていると思う。誰かを憎んだり、嫌いになったりするのは、自分がその相手を理解しようとする努力が足りていないからだと思う。きれいごとに聞こえると思うけれど、理解しようとする努力をやめることがないように、心身ともに余裕を持つように生活環境を整え、軽率に人を判断して自分と他者に壁を作ることがないように生きていきたいと思う。
Posted by ブクログ
今回は市井に視点が当てられた短編集
王宮も大変だけど、民もとても苦しい生活を強いられてて生きることの大変さがひしひしと伝わってきた
今でさえも異常気象や地球温暖化で農業が苦しいけれど当時は人の命が関わるくらいに農業の生活における重要性の比重が大きかったんだなと感じた。
だけど、長い目で見たら今の地球も将来自分たちの生活を賄っていけるくらいの農作物が取れるかは怪しくて、これからどうなっていくんだろうと不安感を覚えた。
どれも面白かったけど、青条の蘭が好きだった
Posted by ブクログ
全部面白かった。
今回の舞台は、王視点ではなく、民視点。
特に、青条の欄の終わり方が好き。
主人公が役立たずではないことが証明されて本当に良かった。
また、改めて、細部まで作り込まれたファンタジー作品であることに感動した。
作者はもしかして12国記の世界に住んでいるんじゃないのか?と勘違いする笑
Posted by ブクログ
十二国記のエピソード5。
今作は名もなき男たちの生き様を描く短編集となっています。どの作品も考えさせられる内容でした。
特に『落照の獄』は、死刑の是非を問うもので、司法官たちの問答が描かれています。憎しみや悲しみという感情を優先して死刑にできるものではないし、かと言って拘禁や戒心に意味があるのかという葛藤が繰り返されます。そして、死刑判決を下す司法官や刑を執行する役人の責任の重み。私情を切り離して考えることの難しさが読んでいてとても苦しかったです。
現代の死刑について、重罪を犯した犯罪者は早く裁かれるべきだと思っていましたが、そんな単純な感情が恥ずかしくなりました。
違った視点で十二国記の物語が読めて、更に深みが増しました。
Posted by ブクログ
この短編集に描かれているような人々の切実な想いをみると、十二国記の世界において王が玉座にいることの大切さ、新王が立つことの希望が感じられる。『青条の蘭』に特に心を打たれた。
Posted by ブクログ
前作で物語も一区切りってなことなのか、この5作目は短編集。いくつかの国の官吏たちをメインに描いたものが4本収録されている。
それではそれぞれの物語を振り返ってみよう!
・表題作『丕緒の鳥』
舞台は慶国、時代は陽子が即位した直後くらいだろうか。
新王即位の際の「大射」という儀式を取り仕切る官吏:丕緒を主人公に据えたお話。
これでもかというくらいに丕緒の悲哀を感じさせる。徒労感というかなんというか、もうなにやっても無駄だからどうにでもなっちゃえ、みたいな。そうなっちゃったのは前王の予王のせいでもあるんだけど、というか大体こいつのせい。
独自の文化を前面に押し出していることもあって短編集の最初にこの話を持ってくるのはわりと初見バイバイな気もするけど、最初から十二国記シリーズを追ってないと世界観よくわからないし、ここから読み始める人という稀有な人もいないか。
・落照の獄
舞台は柳国、時代はたぶん陽子がこの世界に来たのとだいたい同じくらいかと。罪人に判決を下す役割の司法官:瑛庚が主人公。
個人的には収録作の中で一番好きな作品。
とてつもない数の殺人を犯している殺人犯を死刑に処すか否かについて3人の司法官がめちゃくちゃ悩むという話。
世論は圧倒的に死刑を支持しているんだけど、ややこしいことにこの柳国では暗黙の了解で死刑はほぼ廃止されていると来たもんだ。しかもこの時点で柳国の王は国政への関心を失っており「どうでもいいからお前たちに任すわ」とかなり投げやり。過去作で匂わされていた柳国が傾き始めているということの裏付けにもなる話だった。
この死刑についての熟考は現代にも通ずるものだと思うので結構興味深かったよね。
・青条の蘭
舞台は雁国、時代は尚隆即位の前後くらいだろうか。
この作品だけかなり異質というか、言われないと十二国記の世界だと気づかない人も結構いると思う。私自身、この短編集の中に入っているからそうなんだろうなと感じる程度。一応、物語の最後の最後にそうだとわかるようなことが言及されているので、そうと知らずに読んで「そうだったの?!」となることを狙ったサプライズ的な作品なのかもしれない。
おもしろいかどうかというよりも、わかるかわからないかで評価が分かれる作品のように思う。
・風信
またも舞台は慶国、時代は予王崩御直前から偽王が現れた頃。予王の悪法により天涯孤独となってしまった少女:蓮花が主人公。
傾き始めた国から逃げ出す途中、予王崩御をきっかけに暦を作っている官吏の家に世話になることになって……、というお話。
荒れる国の中で、国を守るためにできることは戦場で文字どおり戦うことだけなのか、それぞれが自分にしか出来ない役割を全うすることだって十二分に国を、ひいては世界を守ることにつながるんじゃないか、そんなふうに無力を感じる自分を優しく包み込むような、そんな気持ちにさせてくれた物語だった。
何にせよやっぱり予王が悪いよ予王が。こいつ余計なことしかしないな。
Posted by ブクログ
十二国記シリーズep5の位置付けですが、
表題作に景王が少し登場するだけで
あくまでも本編に描かれない「民」が主役の短編集。
十二国記の繊細で計り知れない程作り込まれた世界観と、その世界に振り回されながら凛と生きていこうとする民の生き様が美しく紡がれていました。
十二国記は読み進める毎に、既読の物語の深みが増していく本当に稀有な物語だなと感慨深い気持ちにさせられます。
Posted by ブクログ
重い。しんどい。読後感は混沌。でも良かった。
王や麒麟だけでなく、国内の人々の営みや葛藤が描かれる短編集。
綺麗事だけでは救われない現実、悪役のいない大きな理不尽。
働き、生き続ける人々の物語。
十二国記の世界の厚みを改めて感じた一冊。
Posted by ブクログ
丕緒の鳥 は、王や麒麟の視点ではなく、その国で生きる“名もなき人々”を描いたことで、十二国記という世界の奥行きをさらに広げた一冊だった。これまでのシリーズでは、どうしても王の資質や国の命運といった大きな物語に目を奪われがちだったが、本作では官吏や職人、罪人など、それぞれの立場で懸命に生きる人々に焦点が当たる。そのことで、「国」というものが特別な誰かだけで成り立っているわけではないのだと実感できた。
特に印象的だったのは、誰もが理不尽さや迷いを抱えながら、それでも自分の役目を果たそうとしている点。英雄譚のような派手さはないのに、一人ひとりの生き様に強い重みがあり、読後には静かな感動が残る。十二国記の世界が好きだからこそ、“普通の人々”の視点を通して見える日常や制度、価値観がとても新鮮だった。
世界観を補完するというより、「十二国記という世界そのものを、より深く立体的に感じさせてくれる作品」。シリーズを読み続けてきた人ほど、その豊かさに唸らされる短編集だった。
Posted by ブクログ
とても良かった
市井の人々目線で見ると、この世界がどういう場所なのかよりわかることができる
青条の蘭は、どこの国だろうと思っていたら雁!何百年も前の話だとは。標仲が倒れても、その想いがみんなを繋いで王の元まで。まだ荒れた国だけど、あの王の国だな、と思わせる国民ばかりじゃない
よく考えれば役人以外みんないい人だったな
1番好きだった話は風信
なぜかわからないけど、最後の燕とお母さんのシーンで泣きそうになった
こちらもまだ荒れた国。それでも希望を失わず、これから来るはずの平和を信じて自分のすべきことをする人々。
私は恵まれた時代と場所に生まれて、その小さな幸せを祈る生活がもしかしたらすぐそばに存在するということに気づく機会がなかなかないけど、だからこそこの短編を読めて良かったと思う。
Posted by ブクログ
国の民がそれぞれ葛藤するお話のように思えた。陶鵲を作る、罪を裁く、苗を運ぶ、傀園で務めるそれぞれが国に対して色々なことを考えながら日々を過ごしたり自分のやるべきことを務めているような気がした。
どれも話としては重かったが、個人的には二つ目のお話の自分の殻に閉じこもって自分を見つめ直さない狩瀬と重なる部分を感じてしまい身をつまされる気持ちになった。
Posted by ブクログ
ファンタジー要素薄めで、私たちの暮らしにたくさんの問いを投げかけてくれ、当たり前が当たり前じゃないことを教えてくれる。
十二国記の世界ではあるけど、王や麒麟ではない人たちの視点で描かれているから、「国をどうする」みたいな悩みではない点で、共感は得やすいかな。
どの話もいい方向に行くであろう終わり方で、希望を持てる。
ブナ林を救うために奔走する話が1番好きだったかなぁ。
ただちょっと全体的に暗い。
Posted by ブクログ
十二国記の世界の厚さを感じられる1冊。
本当にあるんじゃなかろうか。
言葉を選ばずに言うと「おじさん達の話(風信は少女もいるが)」なので、本編と比べると地味だけれど、世界には王と麒麟じゃない側の人が大半なんだ。
『落照の獄』は試験や教科書に出てもおかしくない。むしろ子どもがもう少し大きくなったら読ませたい。
Posted by ブクログ
今回は短編集でした。
人それぞれ、立場からの考え方の違い。
道徳的観念。
国が良くなるようにと思う民の人々の善意…。
悪政の下で苦しむ人々の思いがわかるお話しでした。
Posted by ブクログ
黄昏→白銀→幽冥→華胥→丕諸
落照の獄
柳の病み方が怖い
劉王の放り出し方はどことなくあせんの在り方と通じるものがある
急に無能になられた、は恐ろしい
風信
この話はしみじみ好き
折に触れて読んでしまう
予王治世末期の過酷さ、そこから少しずつ気が整って好転していく有様が燕の雛の数で知れる遠大さがとても良い
丕諸の鳥
声に出して言いたくなる
あちらからひとくさり、こちらからひとくさり
映像で見たい話ナンバーワンかも
陶鵲から鳥が生まれるさまを見たい
青条の蘭
玄英宮だし物のわかる地官長だし、尚隆即位時の話でいいんだよね
尚隆がえんを焦土化した後の話ではないと思いたい
猟木師や朱旌について初読時より理解が深まってるみたいで読んだ印象が結構変わった
丕諸以降の作品読むと、王・麒麟の大の話よりも下級官吏・民の小の話に比重が移っていると思う
次に刊行されるならば、下級官吏・民を中心とした話だけど、陽子治世や驍宗治世が恙なく時を重ねていることが分かる、みたいな短編集だろうか
それも楽しみ
Posted by ブクログ
名も無き者たちの誇りに胸が熱くなる!
最高峰の短編集_
慶国の新王即位に伴う儀式で
国の理想を象徴する陶製の鳥を作る陶工・丕緒
重責と葛藤のなかで彼が見出した「希望」の形が
とにかく美しくて…
誰もいない夜に
私も儚く大空に羽ばたく鳥を
見てみたくなりました!
王や麒麟といった華やかな表舞台の裏で
己の役割を全うすべく愚直に
生きる男たちを描いた短編集
職人や官吏たちの苦悩
そして内に秘めた誇りと
誠実な生き様が丁寧に描かれていて
じんわりと深く胸に響きました
主役級の登場人物たちが出てくる巻も好きだけど
『十二国記』という世界の奥行きと魅力を
実感できる短編集も傑作だと感じました
Posted by ブクログ
十二国記の、国難に苦しむ民達の短編集。
陽子たち王は出てこないれども、常に王の存在がある。王の背負うものの重さが積み重なって伝わってくる。
国が安定するということが、王がいるということが、どれほどその地に住む人々の生活に安寧を与えるのか。異世界の話なはずなのに、今ここで生きているこの世界の国の話のようにも感じられた。
特に死刑の話が心に残った。死刑とは、死刑と判断する人、死刑を執行する人を人殺しにすることなのだと。今までの自分の考え方に風穴をあけてくれた。
どんな時にでも自分のやるべきことを淡々とこなすことが、人の希望を生み出すという最後の話もじんときた。
「だから自分は本を読みたいんだ」と思わせてくれる一冊だった
Posted by ブクログ
十二国記のスピンオフ的な短編集。
audibleにて。
主な登場人物は出てこないけど、陽子が日本から連れてこられて、放浪したり、妖魔に襲われたりしている間に、下界の人々もいろいろあったんだなぁ。
皆さんが感想に書いてあるように、十二国記の世界観がよくわかるお話です。
Posted by ブクログ
メインキャラは出てこないスピンオフ
だけど、この世界観は素晴らしい!
日々の苦しい生活が奪われること、それでも営みは続き、王への期待が一般の市民が抱いている。
今の生活のなんとありがたいことか。
食べ物があり、寝床があり、平和って大事
Posted by ブクログ
主要キャストが出てこない短編集だけど、十二国記の世界観を凄く感じた。
普通に前を向いて正しく生きることがこんなにも困難で辛い。
希望は見えるけど先が遠いから、心が疲れちゃう。
あと、毎回の事だけど、地名とか人名とか職業・職分の漢字の読みが難しくて参った。
でも読み終えれば面白かった。
Posted by ブクログ
他の本編シリーズに比べると、やはりスピンオフでしかも官吏や一般人の短編集なので、派手さはなく、評価は落ちやすいと思うが、それでも最後まで読ませてくるところはさすがだ。
物語の世界の厚みが出るし、王がいないことによる荒廃具合がより迫ってくるから、陽子はじめ各王と麒麟頑張って!と思える。
死刑にするしないの話はちょっとしつこかったかな〜テーマが重いだけに悩んでいるところを演出したのだろうけど、くどかった。
Posted by ブクログ
王と麒麟を中心とした話が多い十二国記の中で、珍しく始終民の目線でその生活に焦点が当てられた短編集。
当然ながら国は人によって成り立ち、大多数がその生涯を王が作る国の有り様に流されるがまま営む。
それは国の状況が芳しくない時もそう。
だからこそ、限られた自分たちにできることの中で懸命にもがきながら命を繋ぐ人々の姿に胸を打たれるし、彼らにとっての希望である王には何としても良い国を作って欲しいと願わずにはいられない。
民の姿がありありと想像できたから、延王・尚隆や景王・陽子がこの後登極するんだ…に繋がった瞬間に、言葉にならない安心と喜びが体中を駆け巡った。