あさのあつこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『弥勒の月』シリーズとともに見逃せない、『闇医者おゑん秘録帖』シリーズ。
『弥勒』が、男の心の闇を描いているのに対し、『おゑん』は女の心の深淵が対象となっている。
治療のためだけではなく、人の心自分の心を見つめるために、その稼業を営むおゑん。
シリーズ第二弾は、「竹が鳴く」と「花冷えて」の二作。
「竹が鳴く」では、難産の末産まれてくる赤ん坊に、おゑんは呼びかける。
「この世が極楽だなんて口が裂けても言えやしないさ。楽しさよりも辛さの方がはるかに勝っている。信じるより憎しみ合うことの方が多いだろうね。でも、生きてみる値打ちはあるんだよ。あるからこそ、産まれてくるんだからね」
かつては赤ん坊だった -
Posted by ブクログ
この世に思いを残した人の姿が見えるという、不思議な能力を持つおいちが主人公の時代劇ミステリー第3弾。
今回は、連続する夜鷹殺しの犯人を捜すため、岡っ引きの仙五朗とともに行動を起こす。
異能を発揮して事件を解決するおいちの活躍と合わせて、見逃せないのが、おいちの父親松庵と、おいちの伯母おうの、この二人の存在。
飄々としているが、情に厚く、包み込むような温かさを持った松庵。
口が達者で、少々やかましいが、おいちを実の娘のように可愛がるおうの。
そんな彼らの、度々交わされる丁々発止の会話が、このシリーズの欠かせない魅力。人間の闇が繰り広げる事件に対局して、一服の清涼剤ともなっている。