よしもとばななのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
買い漁つた吉本ばななさんの本の中の一冊。
最初前書きを読んだとき、もともとこれが『とかげ』として発売されてゐたものの書き直しだとは知らなかつた。さういふ点で、書き直したものと、書き直す以前のものを同時に載せるといふことは、吉本さん自身、再びかつての自分に出あふといふ過程を読者にも見せるといふ勇気のゐることではなかつたのではないかと思ふ。
とかげとひとかげを読んでみると、吉本さんが時間を経て濃縮したことばが蓄積されてゐつたのが感じられる。より人物に対する思考がひとかげでは色濃く出てゐる。とかげを書いたころは、おそらく、ひとが仕事をするといふことはどういふことか知らずに書いてゐたのだと思ふ。だから -
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なんくるないずされた。
よしもとばななさんの書く文章に比喩はない。
いや、ばななさんの目には比喩のような景色が実際に見えているんじゃないかということだ。ばななさんが実際に見た事を言葉に起こすと、実際にはそうは見えない人達には比喩表現に見える。
「コウモリであるということはどういう事か」
コウモリの部分をばななに置き換えたようなものだ。ばななさんの錐体細胞はきっと3種類以上あって、いろんな色が見えているのだと思う。ウニヒピリが見えている。と、そう考えなければ辻褄が合わない。比喩とは読者との共通項を探して、その人がわかる事柄に例えることだ。ところがばななさんの文章はトランスレーションなしに直接分か -
Posted by ブクログ
乾いてひび割れた地面に、しとしと落ちてしみていく水みたいな。そんな小説だなと思った。
彼女の目線が怖いくらい素直で、目に映る情景が哀しいくらい綺麗で、透明なんだけど、どこか優しくて。話自体はすごく重たい話しなんだけど、重苦しさはなくて。なんだろう…当たり前のようでふだん目にもとめてないような、忘れてしまっていた何かほんとうに大切なものを取り戻していくような、そんな感じがして、「彼女」にとっても読み手のわたしにとっても、これはある部分で癒しの物語なんだなと感じた。
吉本ばななの本は、取り立てて何かあったわけではないけれど、なんとなく気持ちが落ち込んだり不安になった時、気持ちがぐらぐらして心も -
Posted by ブクログ
死の匂いがしみこんだ人にしかできない、ほんとうの思いやりを私はかぎわけていたのかもしれない。
買ったものの、表紙の絵がなんとなく怖くて読めてなかった。この人がとかげさんかな?
一瞬で読めてしもた、久しぶりに本読んだのに…
とかげもひとかげの後ろに載ってて、だいぶここ変わったなってとことかあってひとかげの表現の方が好きだなあってとこが結構あった。
最初によしもとばななさんのコメント?みたいなので書いてよかったって本人も言ってるけどうんうん!って思う
自分の中の子どもに気づいてる人が読むとちょっと泣きそうになる部分があるかもしれない、私はそうだった… -
Posted by ブクログ
よしもとばななさんの小説を読むの結構久しぶりかも。読みやすいし染みるなぁと改めて思いました。
この本はとくに短めだしわりと平坦というか、大きな事件はあまり起きない内容で、だけど大切な人の死と多少のオカルト的な要素というばななワールドは確かに存在していて、人が死ぬ小説とかオカルト的なものは嫌いという人も多いから好き嫌いは分かれると思うけれど、それだからこそ唯一無二の世界観なのだろうか、と考えたりした。
痛いからこそ傷ついている人に優しいし、登場人物たちも当然完璧ではないから作中でもがいたり苦しんだりしていて、それを読みながら読み手も再生していける感覚があるのだと思う。
幼い頃に両親をなくした姉 -
Posted by ブクログ
よしもとばななは甘くて明るい。上質な砂糖菓子みたいに、甘いんだけど、くどくない。
既読作品でも感じましたが、今作は特にそんなばななカラーを強く感じました。
薄明るいピンク色の世界に、キラキラ輝く金色の粒子が舞ってるような世界でした…。
のっけから不穏なセンテンスで物語は始まって、これは…重いやつや……と覚悟を持って読み進めたら、なんのなんの。失ったある人との記憶や温もりを糧に、軽やかに日々を過ごす主人公の姿が、ただただ眩しい。
大切な人を失った人間は、失うことの悲しみを知る人間は、その分優しく、強くなれる。
そうでありたい。
そうであってほしい。
そんな祈りのようなメッセージを優しく伝え