あらすじ
ふるさと西伊豆の小さな町は、海も山も人も寂れてしまっていた。実家に帰った私は、ささやかな夢と故郷への想いを胸に、大好きなかき氷の店を始めることにした。大切な人を亡くしたばかりのはじめちゃんと一緒に……。自分らしく生きる道を探す女の子たちの夏。版画家・名嘉睦稔の挿画26点を収録。
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Posted by ブクログ
夏に読めて良かった!
好きなものを貫いて、人の大切なものを大切だと認識できるふたりは、芯があって美しかった。
"お互い様ということなのだ。人といるということは、いつだって。"
この感覚が同じだけ感じられる人って、出会ってからの時間問わず、一緒にいて本当に心地いいよね。
誰も完璧じゃないから、間違えてもいいから、素直で、寛容でありたいと思った。
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またよしもとばななのすごい作品見つけちゃったー。
さらさら読めて勿体無かったから2回続けて読んだ。
最近転職して、給料は下がったけど本当に幸せになった。お金は大事、だけどお金を稼ぐことが目的になってはいけないと思う。稼いだお金でどんな時間を過ごすか。そういう人生の大事なことをばななさんから教えてもらったし、私は私で良いって認めてもらえた感覚
相変わらず描写が美しい。それに夏も海も好きだから、読んでて幸せな気持ちになった。
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親、友達、親しんだ自然。
そういうものを、私たちは「ずっとあるもの」だと思ってしまうことがあると思う。
変わらずにずっとあるものだと。
しかし、ずっと変わらずに存在するというのは難しい。
人も自然も、いつかは変わってしまう。
命には必ず終わりが来て、消えていく。
それでも、信じたことを少しずつ続けていけば、「変わらないもの」を作れるかもしれない。
そういう希望が心に灯るような小説だった。
この作品を読んで、壮大な自然と向き合ったときのような気持ちになった。
変わるものと変わらないもの。
私の中に渦巻いているもの。
そういうもの全てをどっしりと包み込んでくれるような、懐の大きさを感じた。
自然と身体が親密に繋がっていて、大きな時間の中で生きている。
そういう感覚を、よしもとばななさんの作品は思い出させてくれる。
目の前のことで精一杯な私に、穏やかな気持ちを与えてくれた。
名嘉睦稔さんの版画もとても美しく、鮮やかなエネルギーを感じた。
夏直前のこの時期に読めて良かったと思う。
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すーーーーごく好きだった。
見たことも行ったこともない海沿いの町が目の前に現れたような感覚。あとがきにあった作者が訪れつづけている町がモデルなのかな、いつかこんなふうに好きな場所についての話を書けるようになりたいと思った。
それから、読みながらずっと穂村弘と東直子の本にあった文章が浮かんでいた。〈好きな人ができると一緒に海へ行きたくなってしまうのは、なぜなんだろう。お互いの身体の中に眠っている遠い記憶を、一緒に確かめたくなるからではないかと思ったりします。〉
海にも行きたいし、この本も読んでもらいたい。
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とても尊敬している、平野紗季子さんのラジオで夏の読書といえば、、で出てきたもの。
ばななさん、久しぶりですが、やっぱり、やっぱり、いい。
優しい気持ちになれる、というより、優しい気持ちを思い出す、そんなイメージ。
ばななさんが描く夏の風景、それは、木や海や動物が寄り添いあって人と自然と混じり合っている風景なのですが、その夏の風景以上のものにまだ出会ったことない。
今回は挿絵の版画がより一層美しく物語を彩ってくれる。版画なのが、島のイメージで、とても、いい。
景色の描写がとても美しく、わたしもかき氷やさんをやっているし、福の木の周りを散歩したり、はじめちゃんと海で話したり、そういうことが、どんな場所で読書しててもできる本。
開けばすぐ自分だけのその世界にゆける。たとえ東京の地下鉄の喧騒にいても。
_φ(・_・
実はいろんなことってそんなに確かなものじゃないっていうことに気づくと苦しすぎるから、あんまり考えないでいられるように神様はわたしたちをぼうっとさせる程度の年月は持つように作られている
お掃除はその人がその空間をうんと愛しているという気持ちで清めることなんだなぁ
大事にされているものは、すぐわかる
はじめちゃんがいっしょにいると、一人でも感じていたことがもっと大きくおおらかに感じられるようになる。
人は人といることでもっと大きくなることがある
大したことができると思ってはいけない
ただ生まれて死んでゆくまでの間を、気持ちよくおてんとうさまに恥ずかしくなく、、この世が作った美しいものをまっすぐな目で見つめたまま、目を逸らすようなことに手を染めず、死ぬことができるよう暮らすのみ
体が涙でいっぱいになったように重かった
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まりちゃんは活気あったころの子供の頃の土肥の町を追い求めていた。夏の町は観光客でごった返し、海の中には鮮やかな世界が広がっていた。しかし、その色鮮やかな世界は時代の流れとともに失われてしまった。土肥の町はしなびてしまい、海の生き物は死に絶え、色彩を失ってしまった。
そんな色を失いつつある土肥で、まりちゃんは色彩を取り戻そうと町のみんなの心のよりどころになるかき氷屋さんを始めた。子供や老人が集まって、かき氷を食べながらひと夏の思い出を紡ぐような景色を提供するために。
きっと伊豆半島をめぐってみれば、その町の景色を守ったり、新たな景色を彩ったりしている町の事業者がたくさんいるんだと思う。
そんな伊豆半島の魅力的な事業者さんを取材し、紹介できる日々が戻ってくるのを心待ちにしている。
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故郷のさびれた海辺の街でかき氷屋を営む主人公まりはこの夏だけその母の親友の娘であるはじめちゃんの面倒を見るようになる。まりははじめちゃんの面倒を見るうちに彼女の心の美しさに惹かれて次第に心を通わせていく。
まずよしもとばななの圧倒的表現力に脱帽した。作家として面白いプロットを書けるのは1つの才能だが本作のように淡々としたシンプルなストーリーを優しく心地よいテンポで描けるのも作家としてたぐいまれな才能だと実感した。彼女の他の著書も読んでみたいと思った。
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大好きです。
身近な色々なものを大切にしたくなるそんなお話でした。
海も山もある寂れた観光地の人間としては、淋しさも嬉しさも共感できることばかりでした。
「この町に来た観光客が、言い知れない懐かしさや温かさを感じて、そして「また来よう」とここを大切に思う気持ちを、住んでいる人たちの糧になるような輝きを、置いていってくれるようになりますように。」
この言葉を胸に日々暮らしていきたいです。
Posted by ブクログ
むかし読んだのを再読。小説世界の美しさは変わらず、すごいと思った。登場人物やそれに関する描写には、何故だかすこし息苦しさを覚えた。自分自身が大人になったのがわかって感慨深かった。若かった頃に好きだった本を読むのも良いと思った。
Posted by ブクログ
大事なものは目に見えるとは限らない。人との繋がりこそ財産、雄大な自然も。きらきらしている夏の思い出はとても美しい。
同じ瞬間、同じ季節はないからこそ廃れていくものもあれば新しく生まれるものもある。
まりちゃんはじめちゃんの紡ぐ言葉たちが綺麗。
Posted by ブクログ
ほんとうに大切なこと、大切にしないといけないものを思い出させてくれた。忘れてしまっていた感覚がじんわりと私の中に戻ってきた。
夏の始まりの一冊に選んで良かったなぁ。
私の夏もきらきらさせてやる。楽しいだけじゃなく、何かを見つけられる夏に。
●ただ、いつのまにかあせっていた自分の状態には気づいた。
毎日のことに追い立てられて、生涯に一回だけしかないこの夏を、予想がつくものであってほしいと思って、自分で自分を狭くしようとしていた。ほんとうは時間はみんな自分だけのためにあるのに、自分で型にはめようとしていた。
●それはなんということのない光景だったけれど、そういうのがいちばん心に残るものだ。
あの夏を思い出すとき、いつもその感じを最初に思い出した。
気だるい体と、寝ぼけた頭と、陽にさらされるはじめちゃんのやけどと、コーヒーの匂いと、ぎらぎらした光の中で乾いていく洗濯物と。
●昔はもっともっと不思議に思ったはずなのに、いつのまにか首をかしげることをやめていたな、と私は思った。はじめちゃんの新鮮なまなざしは私を子供にかえらせた。
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ボクが幼いころに失ってしまった抽象的な感覚が、この本にはぎっしり詰まっているように感じた。輪郭は朧げだけれど、あたたかく大切なモノ。そんなモノをボクは、成長の過程でおっことしてきたんだろうって。
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文章が過去形なのが印象的だったし、すごく新鮮だった。
この本を読んでいると、大好きな友達に会ってお喋りしたくなるし、海に行きたくなる。
だからこそはじめちゃんなんだよ的な文章がステキ〜!!って思った。自分のことも誰かのこともそう思えるようになろう!って心に沁みた。
もう一回読みたい^_^
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よしもとばななさんの作品は4冊目くらいだけど、気負わず読めるのがいい。あまりカロリーを消費しないから疲れてるときとか頭が回らないかもみたいなときでも読める。
この作品は挿絵で版画がちょこちょこ入っていてそれがまたいい風合いで良い。悲しいことやどうにもならないことはあるけど、いつまでも悲観してないで、受け止めて、前を向いていくことがテーマかな。自然に触れたくなった。
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いつか変わってしまうからこそ、今変わらないものがあることの尊さに気付いて、小さいなことにも感謝して、生きていきたい。
心の中にずっと置いておきたい作品。
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好きなフレーズがいくつもあり、とても心に残る本になりました。夏が終わる前に読めてよかった。また夏が来たら読みたくなるような作品。挿絵の版画もじんわりと心に響いて、泣きそうになりました。
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感覚的なものの表現が上手でどの場面も情景が鮮明に浮かんできた 何か忘れていたものを取り戻したような気持ちになった 丁寧に自分を大切にするということを書かれていてそのように生きたいと思った
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土肥っぽい〜
西伊豆に行きたすぎるのよ。景色がすてき。
原付でも持って行って、西伊豆でぼーっと数週間くらい過ごそうかしら。好きなときに泳いで、好きなときに本を読んで。ときどきは勉強や仕事もして。
いつもダイビングいくところに住まわせてもらってさ。すごく素敵なアイデアな気がしてきた。トップシーズンなる前か後がいいね。
かき氷やさん。エスプレッソがあるかき氷やさんというのがいい。あと、こだわったシロップを用意しているのもいい。舞台芸術をやった主人公が手作りでお店を作るというのもなんかいい。
あとは、主人公が元彼とかき氷を食べて、それをきれいというはじめちゃんもいい。わたしもその人と話してるときが一番自然で、きれいになれるような、そんな人と出会えたらいいな。
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まりは廃れ失われゆく故郷を嘆きつつも、かき氷屋を新しく生み出した。人間はそういう力がある。そして、一人一人のそれの積み重ねで、世界はこれからも豊かに続いていく。
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とてもよかった。
久しぶりの吉本ばなな。
静かな文章の中に、思わずメモしたくなる、人生において大事なメッセージが書かれているところが好き。
地味で苦しいくり返しの日々でも、やっぱり生きていることって一瞬だし、大切だよねというような。
西伊豆という設定も好きでした。
行ってみたいところが増えた。
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とっても好きな本。何度もよんでしまう。
海のちかくでかき氷やさんを営み始めた女の人と、その夏を一緒にすごすことになった、とても賢くて魅力的な女の子のお話。二人の会話や、景色、海、かき氷の味(まで感じる)
なにもかも好き。こういう雰囲気の夏が、とても好きだ。
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よしもとばなな作品を初めて読んだのは二年前の六月。「キッチン」を読んだ。それまでばなな作品に触れたことがなくて今さら読んでもなあと思うところもあったけれど、それでも手に取った。王道すぎるものには一度乗り遅れるとなかなか手が出しづらい。でもそれでも手を取らせてくれたのは友人のひとりのSが面白いと言っていたからだったような気がする。
そんなSがふと、この本を「読みませんか」と言ってくれた。今ではよしもとばななが大好きな僕はありがたく貸してもらうことにした。
主人公のまりちゃんがとても好きになった。まりちゃんの一人称で書かれた物語だから彼女の素敵さを表立って素敵だと言っていないところがとくに好きだ。はじめちゃんがまりちゃんにかける言葉でどきっとするほど印象的なものがある。
「なんだか、まりちゃんにそう言ってもらったら、突然、全てがなんでもないことに思えてきたよ」
社会の理不尽さに面して傷つくことになったはじめちゃんと接していき、まりちゃんは怒りそして疑問を感じる。彼女は生まれ育った寂れている町でかき氷屋を開きながら考える。
ほんとうは折り合いなんてつけなくてもいいはずのものに、折り合いをつけることが当然とされている。正直者が馬鹿を見るなんて言うけれどこんなひどい話はないはずなのに。
まりちゃんが一つ一つに向き合ってくれることによって、ああやっぱおかしかったんだと、知らずのうちに諦めようとしていたことをもう一度素直に受け止められた。ありがとうまりちゃん。
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【読み終わって感じたこと】
よしもとばななさんの綴る言葉は、とっても優しくて温もりがある。生きることは素晴らしいことで、だけど苦しいこともある。それでも私たちはやっぱり、自分の大好きな人やものをめいっぱい愛することをやめられないんだと思う。それこそが人の本質であってほしいなと思った。
【印象に残ったシーン】
「人を傷つけて得たものって、きっと小さなしみみたいに人生につきまとうよ。(中略)誇り高い人生にはならないから。」
とまりちゃんが、家のことで傷ついているはじめちゃんに伝えるシーン。私の胸に刺さる言葉だった。
【好きなセリフ】
「毎日のように会えることって、ものすごいことなのだ。お互いがちゃんと生きていること。約束もしていないのに同じ場所にいること。誰も決めてくれたわけじゃない。」
人も自然も、全ての存在は当たり前じゃない。こういう気持ちを持って生きることができたら、きっと世界はもっと輝いて見えるだろうなと思った。
Posted by ブクログ
6年ぶりの再読。人間関係に悩んでいた今の私にちょうどいいタイミングで読めた。自分が真面目で損な性格で、周りのごうつくばりでいやらしい人が得をしているのに気持ちの整理がつかないでいた。でも、お金や評価といったわかりやすい即物的なものより、心の平穏や清浄な感じの方が好きだから、いいんだと思うようになった。気持ちが楽になった。
Posted by ブクログ
かつて栄えていた場所が、年月を経てどんどん衰退していく。その様子に心を痛める主人公が印象的でした。私の地元も似たような状況で、このまま終わっていくんだろうな…と見ていることしかできないので。切ないけれど、ほわほわあったかい気持ちになるお話で、ばななワールドが強い作品です!
Posted by ブクログ
かき氷屋を営むマリと人形作りを志すはじめちゃん。辛いことがあっても、自然に癒されて、前を向いて歩いていけるのは素晴らしいことだと思う。西伊豆の自然の描写と挿し絵がアートな感じで、よしもとばななワールドだった。
Posted by ブクログ
綺麗で素敵だった。よしもとばななさんの小説は、何年も前に読んだキッチン以降読んだことがなかったことを思い出して タイトルに惹かれたことも相まって直感で手に取った。
抱いた印象としては、文章が端的でわかりやすいのでスッと心に入ってくる。言葉選びが上手で何度も引き込まれた。自然や海の生き物の描写を通して人間が忘れてしまっているものに気づかせようとしているのかなあ、と感じた。
地元をこよなく愛する主人公も良い